大統領への信任投票となる中間選挙

大統領への信任投票となる中間選挙

アメリカでは中間選挙は大統領選の次に重要な選挙である。ここでは、中間選挙とはなんなんなのか、なぜ重要なのか、そして大統領の政権運営にどのような影響を及ぼすのかを解説していく。

中間選挙とはなに?

アメリカの連邦下院議員は2年ごとに全員改選され、連邦上院議員は2年ごとに1/3の議員が改選を迎える。大統領選がない偶数の年に行われる連邦議員の選挙が「中間選挙(midterm elections)」と呼ばれる選挙である。50州あるうち36州で知事選が実施されることから、中間選挙は大統領選の次に大型な選挙となる。

なぜ中間選挙は重要なの?

大統領の任期は4年であり、中間選挙はその折り返し点で行われることから、有権者の大統領への評価が示される重要な選挙であるとされている。

また、法案を立法化するためには連邦議会の協力が欠かせないが、大統領の政党が中間選挙で敗北すると議会運営が厳しくなり、大統領が思い通りの政策を実現できなくなる。したがって、中間選挙は信任投票の意味合いだけでなく、政権運営にも影響を及ぼす。

中間選挙はどのような結果になるのが通常なの?

基本、中間選挙では大統領の政党が敗北する。理由は、就任当初高かった大統領支持率が、時間が経つにつれ下落していくからである。

中間選挙で敗北し選挙後は大統領の政権運営が厳しくなるのが通常なので、大統領が自由に政権運営ができるのは長くて2年、場合によっては中間選挙モードに突入するまでの1年半しかないと言われている。

中間選挙で大統領の政党はどれくらい下院での議席を失うの?

435議席全部が改選を迎える連邦下院では、中間選挙で大統領の政党が平均30議席弱を失う。

大統領が大敗した最近の例として、1994年にビル・クリントン大統領(Bill Clinton)の民主党が52議席、2010年にバラク・オバマ大統領(Barack Obama)の民主党が63議席、2018年にドナルド・トランプ大統領(Donald Trump)の共和党が40議席を失った時が挙げられる。いずれの場合も、大統領は下院で過半数を失い、中間選挙後の政権運営が厳しくなった。

他方、大統領が健闘した例として、2022年にジョウ・バイデン大統領(Joe Biden)の民主党が9議席、2014年にオバマ大統領の民主党が13議席しか失わなかった時が挙げられる。バイデンは下院で過半数を失ったが、議席の減少を一桁に留めたことで健闘したと見なされた。

稀に大統領の政党が議席を増やす年があり、1998年はクリントン大統領の民主党が5議席、ジョージ・W・ブッシュ大統領(George W. Bush)の共和党が8議席増やした。いずれの場合も、選挙後、相手の党の連邦下院執行部が交代している。

中間選挙で大統領の政党はどれくらい上院での議席を失うの?

定数が100議席である連邦上院では1/3の議席(33〜34議席)ずつしか改選を迎えないため、中間選挙での議席数の振れ幅が連邦下院ほど大きくならない。1998年にクリントンの民主党が8議席、2014年にオバマ大統領の民主党が9議席失ったのは大敗とみなされている。

また、上院議員は州単位で選出されるため、改選を迎える議員の地元が大統領の政党が強い州なのか弱い州なのかという一種の運が、上院選の結果に影響を及ぼすことがある。たとえば、2014年のオバマ大統領は下院選で健闘したものの上院選で大敗し、2018年のトランプ大統領は下院で大敗したものの上院選で2議席増やした。いずれの場合も、共和党が強い州で多くの上院議員が改選を迎えたため、共和党は下院選と比べると上院選でより健闘できた。

中間選挙はどのように予測できるの?

全員が改選を迎える下院選では、選挙結果は大統領の支持率に直結していると考えられる。大統領支持率が40%台前半まで落ち込んでいると、大統領の政党は少なくとも平均並みの30議席弱を失うと考えられるだろう。

上院選では、改選を迎える議席の州がどちらの党の牙城なのか、それとも激戦州の議席なのかに注目する必要がある。民主党の牙城である西部共和党の牙城である南部では、選挙の結果は大統領の支持率に左右されにくい。激戦州の選挙でのみ、大統領の支持率が選挙に影響を及ぼすと考えられる。

中間選挙の結果はどれほど次の大統領選に影響を及ぼすの?

中間選挙の2年後に大統領選が行われるが、中間選挙で勝利した政党が大統領選で勝利できるとは限らない。

たとえば、大統領が1期目の中間選挙で大敗した後に再選できることはよくある。1982年のロナルド・レーガン大統領(Ronald Reagan)、1994年のクリントン大統領、2010年のオバマ大統領はいずれも中間選挙で敗北したが、2年後の大統領選で快勝している。

逆も然りで、大統領の政党が中間選挙で健闘したものの次の大統領選で負ける例も珍しくない。1998年の中間選挙ではクリントン大統領の民主党が勝利したが、2000年の大統領選では共和党のブッシュ大統領が勝利し、2022年の中間選挙ではバイデン大統領の民主党が健闘したが、2024年の大統領選では共和党のトランプ大統領が勝利した。

よって、中間選挙は大統領選の予兆とは捉えにくい。

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