投票者の属性で見る共和党と民主党

投票者の属性で見る共和党と民主党

二大政党制であるアメリカでは、共和党と民主党の違いを対極的に理解しやすい。ここでは、投票者の属性を軸にして、共和党と民主党の違いを、2020年と2016年の大統領選および2022年と2018年の中間選挙(下院の全議席と上院の1/3の議席が改選)の出口調査のデータを元に解説して行く。なお、政治的思想に基づく両党の違いについては、こちらを参照

ざっくりまとめると?

支持する政党で見ると?

当然のことだが、共和党支持者は圧倒的に共和党に、民主党支持者は圧倒的に民主党に投票し、どの選挙も概ね無党派層の奪い合いになる。

投票者の構成としては、共和党支持者が1/3、民主党支持者がそれより若干多く、無党派が残りを構成する。また、一般的論として、中間選挙の年は民主党支持者の投票率が低くなると言われている。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。2018年の中間選挙では民主党支持者の投票率が珍しく高く、2016年は両党が支持層を固め切れてないことが注目に値する。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

両党がお互いの支持層をがっちり固め、無党派層では共和党がリードしたので、支持率が低迷していたバイデン政権の下の民主党が敗北したように見えるが、民主党が多くの選挙で接戦を制した。

共和党支持者
(36%)
民主党支持者
(33%)
無党派
(31%)
共和党96%3%49%
民主党3%96%47%

2020年(大統領選、民主党勝利)

無党派層の構成率は異常に低かったが、共和党のトランプ大統領が無党派層で13ポイントの差をつけられたことがバイデンの勝利に貢献した。

共和党支持者
(36%)
民主党支持者
(37%)
無党派
(26%)
共和党94%5%41%
民主党6%94%54%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

中間選挙にしては異常に高い民主党支持者の構成比が、支持率が低迷していたトランプ政権の下の共和党の敗北に繋がった。

共和党支持者
(33%)
民主党支持者
(37%)
無党派
(30%)
共和党94%4%42%
民主党6%95%54%

2016年(大統領選、共和党勝利)

共和党支持者が民主党に、民主党支持者が共和党に多く入れているだけでなく、無党派層の「その他/回答拒否」が異常に高い12%ということが、両党の候補の不人気さを語っている。結局は共和党のトランプが無党派層で民主党のクリントンをリードできたのが勝利の鍵。

共和党支持者
(33%)
民主党支持者
(36%)
無党派
(31%)
共和党88%8%46%
民主党8%89%42%

思想で見ると?

保守層の大半は保守的な思想の共和党に、リベラル層の大半はリベラルな思想の民主党に、中道派は民主党に投票する。

投票者の構成としては、保守層が1/3超、リベラル層が1/4前後、中道派が残りを構成しているが、投票行動を踏まえると、リベラル寄りの投票者が少なからず「中道派」と宣言していると思われる。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。最も多い中道派が選挙の結果の行方を握っているのが分かる。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

共和党は保守層を、民主党はリベラル層をがっちり固め、民主党は中道派の間で15ポイントリードしたことで、支持率が低迷していたバイデン政権の下でも踏みとどまることができた。

保守
(36%)
中道
(40%)
リベラル
(24%)
共和党91%41%7%
民主党8%56%92%

2020年(大統領選、民主党勝利)

共和党のトランプ大統領が保守票を固めきれず、民主党のバイデンが中道派の間で30ポイントと大きくリードしたことで、バイデンが勝利できた。

保守
(38%)
中道
(38%)
リベラル
(24%)
共和党85%34%10%
民主党14%64%89%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷していたトランプ政権の下の共和党が保守票を固めきれず、民主党は中道派の間で26ポイントと大きくリードしたことで勝利。

保守
(36%)
中道
(37%)
リベラル
(27%)
共和党83%36%8%
民主党16%62%91%

2016年(大統領選、共和党勝利)

共和党のトランプは保守層を固めきれなかったものの、民主党のクリントンは中道派の間で12ポイントしかリードできなかったので、トランプの勝利を許してしまった。

保守
(35%)
中道
(39%)
リベラル
(26%)
共和党81%40%10%
民主党16%52%84%

性別で見ると?

男性は過半数超が共和党に、女性はより高い比率で民主党に投票する。

投票者の構成としては、概ね4ポイントの差で女性の投票者の方が男性より多い。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。民主党は共和党に女性の間でのリードを1桁台に抑えられると危うくなる。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷していたバイデン政権の下の民主党は女性の間で8ポイントの差しかつけられなかったものの、多くの選挙で接戦を制し、踏みとどまることができた。

男性
(48%)
女性
(52%)
共和党56%45%
民主党42%53%

2020年(大統領選、民主党勝利)

共和党のトランプ大統領が男性の間で8ポイントしかリードできず、民主党のバイデンは女性の間で15ポイントの差をつけて勝利。

男性
(48%)
女性
(52%)
共和党53%42%
民主党45%57%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷していたトランプ政権の下の共和党が男性の間のリードで4ポイントと追い上げられ、民主党は女性の間で20ポイントもの大差をつけて勝利。

男性
(48%)
女性
(52%)
共和党51%40%
民主党47%59%

2016年(大統領選、共和党勝利)

共和党のトランプは男性の間で11ポイントリードし、初の女性候補だった民主党のクリントンは女性投票者の間で13ポイントリード。クリントンの得票率の方が高かったものの接戦となり、肝心の選挙人の戦いで敗北。

男性
(47%)
女性
(53%)
共和党52%41%
民主党41%54%

年齢で見ると?

年齢が高ければ高いほど共和党に投票する傾向にある。

投票者の構成としては、45〜64歳が4割弱で最も多く、65歳以上と30〜44歳が続く。18〜29歳が最も少なく、特に中間選挙での投票率が低い。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。共和党は、特に若者の投票率が上がる大統領選において、45〜64歳の層で10ポイント以上の差をつけないと勝てないと言える。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷していたバイデン政権の下の民主党は、最も多い45〜64歳の層で10ポイントのリードを許し、65歳以上でも2桁のリードを許したものの、(少数ではある)18〜29歳の層における30ポイントの大差が踏みとどまれる鍵となったか。

18〜29歳
(12%)
30〜44歳
(21%)
45〜64歳
(39%)
65歳以上
(28%)
共和党35%47%54%55%
民主党63%51%44%43%

2020年(大統領選、民主党勝利)

共和党のトランプ大統領は45歳以上で大きくリードできず、大統領選なので構成比が高かった18〜29歳の層で惨敗し、民主党のバイデンに敗北。

18〜29歳
(17%)
30〜44歳
(23%)
45〜64歳
(38%)
65歳以上
(22%)
共和党36%46%50%52%
民主党60%52%49%47%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷していたトランプ政権の下の共和党が45歳以上で大きくリードできず、中間選挙なので構成比が低かった18〜29歳の層で35ポイントの差を、30〜44歳の層でも20ポイント近くの差をつけられ、民主党に敗北。

18〜29歳
(13%)
30〜44歳
(22%)
45〜64歳
(39%)
65歳以上
(26%)
共和党32%39%50%50%
民主党67%58%49%48%

2016年(大統領選、共和党勝利)

民主党のクリントンは45歳以上で大きなリードを許さなかったものの、通常より構成比が高かった18〜29歳の層でのリードが20ポイント弱に留まったことが、共和党のトランプに勝利を許すことにつながったか。

18〜29歳
(19%)
30〜44歳
(25%)
45〜64歳
(40%)
65歳以上
(16%)
共和党36%41%52%52%
民主党55%51%44%45%

人種で見ると?

白人は過半数超が共和党に、白人以外は民主党に投票するが、人種によって投票行動が大きく異なる。黒人は90%超が民主党に投票し、ヒスパニック(ラテン)系は2/3前後が民主党に投票する。なお、激戦州であるフロリダ州では、共産主義であるキューバから亡命してきたヒスパニックの投票者が多いので、一般よりも自由主義・反独裁主義の思想であると言われている共和党寄りの傾向がある。

投票者の構成としては、白人が7割、黒人とヒスパニック系が1割ずつを占める。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。共和党は、白人の投票率と得票率を上げるのが勝利への鍵と言えるものの、白人以外のマイノリティーの人口が増えてきている中、それだけでは勝てない構図になりつつある。今後は、労働者寄りのポピュリズムに傾き始めている共和党に、労働者が多いヒスパニックの票が流れてくるかが鍵になりそうだ。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

共和党は白人の構成比・得票率が高く、ヒスパニックからも40%も票を取れたにも関わらず、支持率が低迷していたバイデン政権の下の民主党が踏みとどまれた。強硬な不法移民政策を打ち出すトランプに支配される共和党は、ポピュリズムの魅力によって今後もヒスパニックの間での票が伸びるのだろうか。

白人
(73%)
黒人
(11%)
ヒスパニック
(11%)
共和党58%13%39%
民主党40%86%60%

2020年(大統領選、民主党勝利)

共和党のトランプ大統領は、白人の構成比が下がり、白人の間の得票率も上がらなかったので、民主党のバイデンに勝利を許した。

白人
(67%)
黒人
(13%)
ヒスパニック
(13%)
共和党58%12%32%
民主党41%87%65%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷するトランプ政権の下の共和党は、白人の間で10ポイントしかリードできず、ヒスパニックの間で40ポイントもの差をつけられ敗北。

白人
(72%)
黒人
(11%)
ヒスパニック
(11%)
共和党54%9%29%
民主党44%90%69%

2016年(大統領選、共和党勝利)

共和党のトランプは、白人の間における高い投票率・得票率をバネに、白人以外の間で大きくリードした民主党のクリントン相手に接戦に持ち込み、肝心の選挙人の戦いで勝利。

白人
(71%)
黒人
(12%)
ヒスパニック
(11%)
共和党57%8%28%
民主党37%89%66%

教育で見ると?

大卒は民主党に、大卒でない投票者は共和党に投票する傾向がある。

投票者の構成としては、4割強が大卒。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。2016年の選挙では、大卒の投票者が5割も占めており、異常に大卒の構成比が高かった。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

共和党は大卒ではない投票者の間で12ポイントリード、支持率が低迷するバイデン政権の下の民主党は大卒で10ポイントリード。大卒の構成比が割と高かったことが民主党をなんとか救ったか。

大卒
(43%)
大卒ではない
(57%)
共和党44%55%
民主党54%43%

2020年(大統領選、民主党勝利)

共和党のトランプ大統領は、大卒ではない投票者の間で2ポイントしかリードできず、大卒の間で12ポイントものリードを許して敗北。

大卒
(41%)
大卒ではない
(59%)
共和党43%50%
民主党55%48%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷するトランプ政権の下の共和党は、大卒ではない投票者の間で互角の戦いに追い込まれて敗北。

大卒
(41%)
大卒ではない
(59%)
共和党39%49%
民主党59%49%

2016年(大統領選、共和党勝利)

民主党のクリントンは大卒の構成比が異常に高かったにも関わらず大卒の間で8ポイントしかリードできず、共和党のトランプに接戦に持ち込まれて肝心の選挙人の戦いで敗北。

大卒
(50%)
大卒ではない
(50%)
共和党44%51%
民主党52%42%

所得で見ると?

所得が高いと減税を主張する共和党に投票する傾向があるが、最近は所得が中間層(年収$50,000〜$100,000)の投票者の間で投票行動に大きなブレが生じている。この層の有権者は大抵大卒であることから、経済的な面を重視するか、トランプ・共和党のポピュリズムを懸念するかで選挙ごとに投票行動が変わっていると考えられる。

投票者の構成は選挙ごとに大きく変動することが興味深いが、$100,000超の富裕層の比率が結構多いことに注目。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。中間層は共和党に入れたり(2016年、2022年)、民主党に入れたり(2018年、2020年)とばらつきが見られる。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

共和党は高所得、中間層で7ポイントリードしたものの、支持率が低迷していたバイデン政権の下の民主党が踏みとどまれた。

$50,000未満
(30%)
$50,000〜$100,000
(33%)
$100,000超
(37%)
共和党45%52%53%
民主党52%45%46%

2020年(大統領選、民主党勝利)

共和党のトランプ大統領は支持率が低かった富裕層でしかリードできず、民主党のバイデンに敗北。

$50,000未満
(35%)
$50,000〜$100,000
(39%)
$100,000超
(26%)
共和党44%42%54%
民主党55%57%42%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷するトランプ政権の下の共和党は、低所得の層で20ポイント弱ものリードを許し民主党に敗北。

$50,000未満
(38%)
$50,000〜$100,000
(29%)
$100,000超
(33%)
共和党38%47%52%
民主党59%52%47%

2016年(大統領選、共和党勝利)

民主党のクリントンは富裕層の票で互角の戦いに持ち込み、最も多かった低所得の間で12ポイントリードできたものの、中間層でリードした共和党のトランプに接戦に持ち込まれて肝心の選挙人の戦いで敗北。

$50,000未満
(36%)
$50,000〜$100,000
(30%)
$100,000超
(34%)
共和党41%49%47%
民主党53%46%47%

地域で見ると?

地域ほど現在のアメリカの政治で共和党と民主党の違いを端的に語れる属性はない。

人口密度が高い地域に住んでいる投票者ほど、民主党に投票する。農村部(rural area)の投票者は近年6割前後で共和党に投票しており、90年代と比較して激増している。

最も投票者が多い都市郊外(suburban area)の投票者の投票動向は共和党に入れたり(2022年、2016年)、民主党に入れたり(2020年)、両党同等に入れたり(2018年)と変動しており、毎回選挙の行方の鍵を握っていると言える。

投票者の構成としては、都市郊外が約半数、都市部が約3割を占める。なお、特に上院選大統領選では、一票の格差の影響で都市部の票が「死票」になりやすく、農村部の1票が重くなる。

直近の選挙のCNNの出口調査の結果は以下の通り。共和党は、農村部で圧勝し、都市郊外で少なくとも互角の戦いに持ち込むことが勝利への道。

2022年(中間選挙、民主党勝利)

低迷するバイデン政権の下の民主党は、都市郊外でリードを許し、農村部で惨敗したのにも関わらず、都市郊外の下院の選挙で多くの接戦を制して踏みとどまれた。

農村部
(17%)
都市郊外
(52%)
都市部
(31%)
共和党63%52%41%
民主党34%46%58%

2020年(大統領選、民主党勝利)

共和党のトランプ大統領は、構成比が高かった農村部で15ポイントしかリードできず、都市郊外でリードを許したため、民主党のバイデンに敗北。

農村部
(19%)
都市郊外
(51%)
都市部
(29%)
共和党57%48%38%
民主党42%50%60%

2018年(中間選挙、民主党勝利)

支持率が低迷するトランプ政権の下の共和党は、農村部で15ポイントしかリードできず、都市郊外で互角の戦いに持ち込まれて民主党に敗北。

農村部
(17%)
都市郊外
(51%)
都市部
(32%)
共和党56%49%32%
民主党42%49%65%

2016年(大統領選、共和党勝利)

共和党のトランプは農村部で民主党のクリントンを圧倒したことで勝利。

農村部
(17%)
都市郊外
(49%)
都市部
(34%)
共和党61%49%34%
民主党34%45%60%
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