マスコミから逃げ回ってると批判されていたカマラ・ハリスが、この1週間、急にマスコミ巡りを行った。ここでは、マスコミ出演の際にハリスが行なった発言の中で特に標的の的になっている回答内容や”ワードサラダ”を解説していく。
このマスコミ巡りにはどのような背景があるの?
7月21日にジョウ・バイデン大統領が大統領選から撤退し、副大統領のハリスが民主党の大統領指名候補になって以降、ハリスは”新鮮さ”のイメージをバネに勢いを維持してきた。
だが、即興なやりとりが求められるインタビューを避ける姿勢は、ハリスが雰囲気ばかりで中身がないという批判を増長させた。実際、現政権の副大統領が自分を「変化をもたらす候補」と位置付けることへの矛盾について、ハリスはこれまで厳しい追及を受けずに来れてきた。
そんな中、世論調査で勢いが頭打ちになってきているせいか、ここにきてハリスは急にマスコミ巡りを展開した。
ハリスはどのようなマスコミに出演したの?
この1週間半、ハリスは次の番組に出演した。
- ケーブルテレビチャンネルCNNのニュースキャスターであるアンダーソン・クーパー(Anderson Cooper)のポッドキャスト
- ラジオ番組「ハワード・スターン・ショー(The Howard Stern Show)」
- ドキュメンタリーテレビ番組「60ミニッツ(60 Minutes)」
- 昼間トーク番組「ザ・ビュー(The View)」
- 深夜トーク番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア(The Late Show with Stephen Colbert)」
- 人気ポッドキャスト「コール・ハー・ダディ(Call Her Daddy)」
- スペイン語テレビネットワーク「ユニビジョン(Univision)」
これらは基本的にすべて”自陣”である。例えば、コメディ番組である「ザ・レイト・ショー」の司会者スティーヴン・コルベアはトランプを番組に招待しないどころか”go f*** yourself”と伝えたし、進行役が全員女性の「ザ・ビュー」はリベラルな番組として知られている。
ハリスに手厳しい質問をしたのは「60ミニッツ」くらいだが、このインタビューでさえ、ハリスをよく見せるために回答内容を改竄したのではないかと疑われている。
ハリスのどのような発言が標的の的になってるの?
「ザ・ビュー」に出演した際、進行役の1人から「この4年間で、自分だったらバイデン大統領と異なる判断をしていたことはありますか」と聞かれると、ハリスは一瞬躊躇した後、「頭に思い浮かぶことはない(There is not a thing that comes to mind)」と回答した。
支持率が低迷しているバイデン政権の一員でありながら「変化をもたらす」と主張していれば当然受けるはずのこの質問に対してましな回答がなかったことは、批判を通り越して呆れられている。
ハリスはその後「バイデンと違って私は内閣に共和党の人も入れる」と発言したが、数年前にアメリカ軍がアフガンから撤退した時に兵士13名の命が失われたことを覚えている人からすると、「え、それだけ?」と思っただろう。
話題になっているハリスの”ワードサラダ”はどのような内容だったの?
「ザ・レイト・ショー」に出演していた時、司会者のコルベアから「あなたは現政権の一員ですが、ハリス政権では何が大きく変わり、何が継続されるのでしょうか」と聞かれると、ハリスは次のように回答し始めた。
当然のことながら、私はジョウ・バイデンではありません。それが1つの変化となりますが...残り28日という時点で、私はドナルド・トランプではないと言うことも重要だと思います。そして、この次世代のリーダーシップがどのようなものになるのかを考えるとき、もし私が大統領に選ばれたとしたら... 率直に言って、私はアメリカ国民を愛しており、私たちの国を信じています。私たちには大望があることが私たちの性格であり性質であることが大好きです。ご存知のとおり、私たちには願望や夢があります。私たちは信じられないほどの勤労意欲を持っています。そして、私たちが達成した成功をさらに発展させ、機会を増やし続け、それによって国力を成長させることができると信じています。
(Sure, well I’m obviously not Joe Biden, and so that would be one change in terms of – but also I think it’s important to say with 28 days to go, I’m not Donald Trump. And so when we think about the significance of what this next generation of leadership looks like, were I to be elected president, it is about – frankly, I love the American people, and I believe in our country. I love that it is our character and nature to be an ambitious people. You know, we have aspirations, we have dreams. We have incredible work ethic. And I just believe that we can create and build upon the success we’ve achieved in a way that we continue to grow opportunity and in that way, grow the strength of our nation.)
これはまさに、4年前、ハリスが大統領選に出馬していた時に有名になったワードサラダである。
ハリスの取りまとめのない回答は、1980年の大統領選に出馬することが噂されていた(ジョン・F・ケネディの弟である)テッド・ケネディ(Ted Kennedy)が、「なぜ大統領になりたいのですか」という基本的な質問に対して2分間迷走したことを思い出させた。
60ミニッツのインタビューはなぜ物議を醸しているの?
インタビューの中でハリスは、イスラエルの首相であるベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)がハマス戦争に関するアメリカの意見に耳を貸さなくなっているのではないかと指摘された。
それに対するハリスの回答が、事前に流れた予告と実際に放送された番組とで異なっていたのだ。
予告版での回答は次の通りで、ワードサラダに聞こえる。
私たちが行った活動はあの地域でのイスラエルによる複数の動きをもたらし、これらの活動は、あの地域で起こる必要があることへの私たちの支援活動を含む多くの事によって促されるか、それらの事による結果でした。
(the work that we have done has resulted in a number of movements in that region by Israel that were very much prompted by, or a result of, many things, including our advocacy for what needs to happen in the region)
ところが、実際に流れた回答は次の通り趣旨が伝わる内容だった。
私たちは、この戦争を終わらせる必要性についての米国の立場を明確にするために必要なことの追求をやめません。
(We are not gonna stop pursuing what is necessary for the United States to be clear about where we stand on the need for this war to end.)
60ミニッツはこれを単なる編集の問題として片付けようとしているが、本当はワードサラダっぽい発言でハリスのイメージが悪くなることを避けるために、別の質問に対する回答をつなぎ合わせたのではないかと疑われている。
これらハリスの発言は大統領選に影響を及ぼすの?
この1週間で行なったインタビューや(観客から質問を受ける形式の)タウンホールすべてでハリスのワードサラダがあったわけではない。だが、これまでインタビューを行ってこなかった分、今回の一連のインタビューにおける”失言”は注目を浴びている。
まだ投票先を決めてない数少ない有権者にとって、トランプは知り尽くしている存在だがハリスはまだ未知数のところが多い。そういった人たちはこれら”失言”に関する報道を見ているだろうし、この先討論会がない中、インタビューを投票先に関する判断材料の1つとする可能性がある。