過去はトランプの支持を過小評価してきた世論調査〜今回の大統領選ではどう?〜

過去はトランプの支持を過小評価してきた世論調査〜今回の大統領選ではどう?〜

過去の大統領選における世論調査は、ドナルド・トランプ前大統領が当選した2016年だけでなく、ジョウ・バイデン大統領が当選した2020年でもトランプの支持を過小評価していた。ここでは、2016年と2020年の世論調査がどれほどずれていたのか、そして今年の大統領選では「二度あることは三度ある」になるのか、それとも「三度目の正直」になるのかを解説して行く。

過去の大統領選では、世論調査はどれほどトランプの支持を過小評価してたの?

世論調査のずれを検証するため、2020年と2016年の大統領選で決め手となり、今年の選挙でも激戦州となっているウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州での世論調査と実際の結果を、以下の比較表に纏めてみた。加えて、全国的な世論調査も比較している。

なお、個々の世論調査には許容誤差の範囲があることを踏まえ、以下の表では投票日時点における直近4〜6個の世論調査の平均を示している。出典はどれもリアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics)である。

また、特記されていない限り、%はどれも民主党候補のリードを示している。

世論調査の
最終平均
実際の結果誤差
全国
2020年7.2%4.5%2.7%
2016年3.2%2.1%1.1%
ウィスコンシン州
2020年6.7%0.7%6.0%
2016年6.5%0.7%
(トランプ勝利)
7.2%
ミシガン州
2020年4.2%2.8%1.4%
2016年3.6%0.3%
(トランプ勝利)
3.9%
ペンシルベニア州
2020年1.2%1.2%0%
2016年2.1%0.7%
(トランプ勝利)
2.8%

で、この比較のどこに注目すればいいの?

1つ目はウィスコンシン州だ。結果と世論調査の間の誤差が特に著しく、2020年には6.0%、2016年には7.2%ものずれがあり、同州における世論調査の信頼性が疑われる。

2つ目は、2016年から2020年にかけて、必ずしも世論調査の質が改善してない点だ。ミシガン州とペンシルベニア州では誤差が縮まったが、より多くの有権者を対象としているため精度が高いはずの全国調査では誤差が広がっている。

トランプが過小評価される理由として、どのようなことが考えられるの?

1つ目は、調査会社がトランプの支持者にリーチできてない可能性だ。2016年の大統領選では、通常投票に行かない白人労働者層が記録的な投票率で投票に行ったことがトランプ当選の要因となったが、当時の世論調査ではこれら投票者が十分反映されてなかった可能性が高い。

2つ目は、サンプリングが適切でない可能性だ。2016年の世論調査ではトランプに忌避感を感じていた大卒がサンプリングに多すぎて、トランプの支持が過小評価されていたと言われている。

3つ目は、世論調査に回答している有権者が正直に回答してない可能性だ。アメリカではこの現象を「ブラッドリー効果(Bradley effect)」と呼ぶ。その由来は、1982年のカリフォルニア州知事選挙において、事前の世論調査で圧倒的に有利だった民主党のトム・ブラッドリーが僅差で負けてしまったことに遡る。

ブラッドリーは黒人で相手の共和党候補は白人だったことから、世論調査と結果が大きく違った理由は、白人の一部が人種差別者だと思われるのを嫌って、ブラッドリーに投票する気がないのに調査会社に対してブラッドリーに投票すると答えたためだと言われている。

同様にトランプ支持者も、トランプへの投票意思を示すことで人種差別者だと思われることを嫌がり、調査会社に対して民主党候補に投票すると嘘の回答をしている可能性がある。

今回の大統領選でも世論調査はトランプの支持を過小評価してるの?

こればかりは箱を開けてみないと分からない。

もし調査会社がトランプ支持者にリーチする方法やトランプ支持者から本音を教えてもらう術を学んでいないと、二度あることは三度あるだろう。特にウィスコンシン州では調査方法に根本的な問題がありそうだ。この場合、世論調査におけるハリスのリードは差し引いて解釈する必要があることになる。

一方、三度目の正直になる理由として、今回の大統領選においては、世論調査でのトランプの支持が2016年と2020年の世論調査より高く出ていることが挙げられる。

これはトランプの支持が実際に高くなっているからではなく、世論調査の精度が上がっているからの可能性がある。ペンシルベニア州やミシガン州では2016年から2020年にかけて世論調査の質が改善している節があり、もし全体的に世論調査の確度が向上しているのであれば、ハリスの数%のリードも信じられることになる。

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