大統領選の開票が日本時間の明日(11月6日(水))に迫ったので、ここでは、トランプ前大統領の勝利を予測し、その理由を解説する。なお、明日はこちらでライブブログにて開票の進捗と情勢を解説する予定である。また、開票における注目点はこちらで時系列で解説している。
簡潔にまとめると
カマラ・ハリスとドナルド・トランプの対決は接戦のまま投票日に突入する。今回の選挙のように、僅差状態が選挙期間を通して最初から最後まで続いた大統領選は過去に例がない。
どちらが勝っても不思議ではないので、勝者について確信を持って予測することは不可能である。
だが、トランプとハリスのどちらかを選べと言われたら、政治的な環境とハリスの候補者としての資質、そして4年・8年前の世論調査との比較を踏まえ、トランプを選ぶのが妥当だ。
その理由は下記の通りだが、多くは彼女がバイデンの代わりになった時から課題だったことだ。
そもそも今回の大統領選は民主党にとって厳しい環境での戦いだった
大統領選の結果を予測するのに最も参考になるのは現職大統領の支持率である。40%後半台でないと、現職大統領の再選や後継者の当選は難しいと言われる。
バイデン大統領の支持率は40%。民主党の大統領候補であるハリスにとって、敗北水準だ。
この状況は実はまだバイデンが再選を目指していた時からハリスに交代した今まで変わっていない。ある意味、ハリスは最初から逆風の中での戦いを強いられていたと言える。
さらに、今回の大統領選では、前大統領が復帰を目指しているという特殊な事情がある。妥当であるかは別として、多くの投票者の間では、トランプ政権の時の方が生活がもっと豊かで不法移民対策もより強化されていたという印象がある。
バイデンの不人気に加えてトランプ政権へのノスタルジーがハリスにとって一番の足枷だった。
ハリスはやはり二流の候補者だった
ハリスがバラク・オバマ(Barack Obama)のような才能がある政治家であれば厳しい環境も乗り越えられたかもしれないが、生憎、ハリスにはそのような能力がない。
たとえば、ハリスは自分を「変化をもたらす候補者」と位置付けようとしたにもかかわらず、自分が大統領になったら何がどう変わるのかという基本的な質問に対して説得力ある回答がなかった。
さらには、ハリス陣営は一時期、前向きな「喜び(joy)」をテーマに選挙活動を展開するのではないかと期待されたが、最後はトランプをヒトラーに例えるなどネガティブ・キャンペーンに徹した。トランプが初めて大統領選に出馬してからもう9年も経っており、今更彼の人格の欠陥を指摘してもあまり効果はない。彼を支援する投票者は彼の人間性を百も承知で応援しているのだから、ハリスには別のメッセージが求められたものの、結局それを見つけられないままだった。
過去2回の大統領選を踏まえると、世論調査はトランプの勝利を示唆している
直近の世論調査ではトランプとハリスが拮抗しているが、トランプが優勢だと思わせる要素が2つある。
1つは、前回、前々回の大統領選では世論調査がトランプの支持を過小評価していたことだ。「2度あることは3度ある」と考えるのであれば、トランプがハリスと拮抗してる世論調査は実際にはトランプがリードしていることを意味する。
この現象を説明するために、ハリスにとって最も有力な勝利の道であるラストベルトの3州(ウィスコンシン州、ペンシルベニア州、ミシガン州)と全国的な世論調査を見てみる。
今回、2020年、2016年の投票日前日時点のリアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics)の平均を比較すると次のようになる。
2024年 | 2020年 | 2016年 | |
全国 | 同点 | 6.9%のバイデンのリード (結果〜4.46%のバイデンの勝利) | 3.2%のクリントンのリード (結果〜2.09%のクリントンの勝利) |
ウィスコンシン州 | 0.4%のハリスのリード | 6.7%のバイデンのリード (結果〜0.63%のバイデンの勝利) | 6.5%のクリントンのリード (結果〜0.77%のトランプの勝利) |
ペンシルベニア州 | 0.3%のトランプのリード | 2.6%のバイデンのリード (結果〜1.16%のバイデンの勝利) | 2.1%のクリントンのリード (結果〜0.72%のトランプの勝利) |
ミシガン州 | 0.6%のハリスのリード | 5.1%のバイデンのリード (結果〜2.78%のバイデンの勝利) | 3.6%のクリントンのリード (結果〜0.23%のトランプの勝利) |
2016年と2020年の最終結果と世論調査を比較すると、世論調査が1%〜7%もトランプの支持を低く評価していたことが分かる。今回もまた同じことが起こっているとなると、トランプは3つの激戦州と全国的に数%リードしていることになる。
もちろん、今年の大統領選でもトランプの支持が過小評価されているという保証はない。前回、前々回の大統領選での教訓を踏まえた調査会社が補正しすぎ、今回は反対にトランプの支持を過大評価している可能性さえある。
だが、世論調査が概ね正確だったとした場合、全国的な世論調査はトランプの勝利を示唆している。こちらで解説した通り、アメリカの大統領選の仕組み上、ハリスは全国的に2%以上リードしないと負ける可能性が高く、世論調査でトランプが僅かにリードしているのはハリスの敗北を示唆している。