連邦下院の仕組み

連邦下院の仕組み

アメリカの連邦議会は上院と下院から構成される。ここでは、下院の仕組みについて、歴史や背景を補足しながら解説していく。なお、連邦政府における立法手続きの中での下院の位置付けはこちらを参照。上院の仕組みの解説はこちら

まずは、下院の基本から

定数は435人。各州の定数は人口に比例。

任期は2年。偶数の年(大統領選と中間選挙の年)に全議員が改選を迎える。任期回数に制限はない。

被選挙権の要件はアメリカ連邦憲法において主に三つ規定されており、上院議員や大統領になるための要件より緩い。

  1. 25歳以上
  2. 7年間市民権を保有していること
  3. 選出される州の住民であること

下院の選挙制度はどうなってるの?

アメリカ連邦憲法で定められている事項、連邦法(合衆国の法律)で定められている事項、州の法律で定められている事項の区別が重要。

① アメリカ連邦憲法により定まる事項

  • 下院選は州の住民が選ぶ直接選挙型
  • 任期は2年
  • 各州の定数は人口に比例(ただし、どの州も最低定数1)
  • 人口調査に基づき10年ごとに定数を調整
  • 選挙権の要件は州の下院議会の選挙権と同等以上

② 連邦法により定まる事項

  • 本選の投票日は11月の第1火曜日
  • 選挙区は小選挙区制度
  • 定数は435人

③ 州の法律により定まる事項

  • 州内の区割り
  • 党の予備選の投票日
  • 投票時間(本選も含む)
  • 選挙権の要件
  • 投票の仕方(郵便による投票の期限等)
  • 選挙方法(単純小選挙区制、多数決制、優先順位付投票制等)

なお、 1964年の連邦最高裁の判決により、州内の選挙区の区割りは人口に比例する必要がある。

以上から分かるように、連邦制のアメリカでは選挙制度が州によって異なる。州の様々な選挙方法については、こちらを参照

各州の下院議員の定数は?

2020年の人口調査に基づいて2022年の中間選挙から適用されている定数は以下の通りである。

(該当する州をクリックして定数を表示)

各州の下院議員の定数は人口比例なので、「1人1票」だと考えていいの?

そうともいえない。下院はあくまで「州内の選挙区の区割り」が人口に比例している必要があるだけで、州間の選挙区では人口に比例していない。

これはアメリカ連邦憲法が求めている「どの州も最低定数1」という要件と、連邦法が定めている「下院定数435人」という基準の組み合わせによる問題。人口増加にもかかわらず100年以上も下院の定数が増加していないため、定数が極端に小さく、各州に1議席割り当てた後、厳格に人口に比例した形で議席を割り当てられなくなる。

この問題は、各都道府県も定数が最低1である日本の衆議院選挙制度に似ている。アメリカの下院の「一票の格差」は1.97倍で、偶然にも日本の衆院の一票の格差に近い。

下院はどういう位置付けだと考えればいいの?

下院は「国民の府」 と言えるだろう。2年ごとに改選されるため、民意の変化に敏感で、振り子のように揺れる。

これは仕組み上意図されていることで、1787年にアメリカ連邦憲法の草案が議論されていた際、民意を誠実に反映するために下院は毎年選挙を実施すべきだという意見もあったが、馬車で移動していた当時は非現実的であったため却下。

下院特有の権限とは?

アメリカ連邦憲法上、主に三つある

  1. 連邦予算に関する法案の先議権(憲法上は歳入に関する法案に限定されるが、事実上、歳出に関する法案にも適用。ただし、日本の衆議院と違って上院議院に対する優越権ではない
  2. 大統領、副大統領、連邦裁判官などを過半数の採決で弾劾訴追する権限
  3. 大統領選で選挙人による投票において過半数を獲得する候補がいなかった場合、上位3人から大統領を選出する権限(ただし、投票権は各議員1票ではなく各州1票)

上院より権限が弱いと言える。

下院では法案はどのように審議されるの?

法案の進行については、下院議長が大きな権限を持つ。議長は、下院議員の表決により選任され、会員議員である必要はない(もっとも、歴代議長は全員下院議員)。下院議長の選出の流れは、2023年に下院議長が解任されたときの解説を参照

各法案における審議・討論時間は厳しく制限されており、強力な議事規則委員会(Committee on Rules)が、各法案の討論の条件(時間制限を含む)や修正の可否などを決定する。

下院議員の欠員が生じるとどうなるの?

アメリカ連邦憲法上、補選の実施が求められている。上院議員の欠員と違って、知事が代理を任命することはない。

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