アメリカ政府の債務不履行を起こしかねない”債務上限”

アメリカ政府の債務不履行を起こしかねない”債務上限”

アメリカの政治で数年に一度争点となる「債務上限」(debt ceiling)。債務上限とは何で、なぜこれが政治的な問題となるのかを解説していく。

そもそも、債務上限ってなに?

法律上、アメリカ政府が発行できる債務の総額の上限である。アメリカ連邦憲法は政府が債務を負担するには法律が必要であると規定していることから、このような法律が必要となる。

債務上限は予算とは異なる概念であることに注意が必要だ。日本と同様にアメリカも赤字財政なので、国債を発行しなければ予算を賄うことができない。したがって、予算通りの支出を行うためには、定期的に債務上限を上げる法律を成立させる必要が出てくる。

債務上限を超えるとどうなるの?

アメリカ政府は国債を発行することができなくなることから、いずれは手元資金が底をつき、国債の利子等が支払えなくなり、債務不履行となってデフォルトを起こす。

なお、財務長官は「非常手段(extraordinary measures)」を導入することで債務不履行(デフォルト)を遅らせることができる。「非常手段」には、連邦政府職員年金基金への拠出を一次的に停止することなどが含まれる。

過去に債務不履行の恐れはあったの?

債務不履行の危機が最も顕在化したのは、2011年に「非常手段」も尽きると言われていた期日の2日前まで債務上限を上げる法律が成立しなかった時だ。

結果、アメリカ国債の格付けが引き下げられた。

なんで債務上限を上げることが度々政治的な問題となるの?

「小さな政府」を目指す共和党は思想的に政府の支出を減らしたい傾向にあることから、同党は債務上限を上げることの引き換えに予算の縮小を求めることが多い。

アメリカでは原則として、連邦下院、連邦上院、大統領の間の「ねじれ」や上院議員1人の反対があると法案は成立しない。したがって、下院で共和党が過半数を維持していたり、上院で共和党議員の1人でも反対すると、債務上限を上げる法案の審議が行き詰まる。

債務上限を予算に紐づければ問題は解決するのでは?

確かにそうなので、1980年代から2022年までは、予算を成立させれば別の法律なしに債務の上限が自動的に上がる立法プロセスのルールが下院で導入されていた。ただ、このルールは上院には適用されず、下院自体もルールを適用させないことが度々あったので、効果は限定的だった。

いずれにせよ、このルールは共和党が下院で過半数を得る都度撤廃されている。

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