アメリカに50ある州の行政のトップは知事。ここでは”一般的な知事”(および副知事)の基本について、注目に値する例外を補足しながら解説していく。知事の役割は連邦政府の行政トップである大統領の役割に類似している。
まずは基本から
ほとんどの知事の任期は4年。ニューハンプシャー州とバーモント州のみ任期2年。知事選の年は州によって異なるが、概ね連邦議会の中間選挙がある年(すなわち偶数の年)に実施される。
大半の州が2期までの制限を設けている。バージニア州は連続して2期務めることを禁止しているが、これは一旦退任した後に復帰することを妨げるものではない。一定数の州(ニューハンプシャー州およびバーモント州を含む)では任期回数に制限がない。
被選挙権の要件は州が独自に定めるが、通常は、一定の期間、州の住民であるが要件となっている。
知事はどうやって選ばれるの?
州が独自に定めるが、基本的に州の住民が直接選挙で選ぶ。
だが、変わった仕組みを採用している州もある。
- バーモント州では、過半数を獲得した候補がいない場合、州の上院と下院が一体となって上位3位の候補から知事を選定する
- ミシシッピ州では、州全体で過半数を獲得するだけでなく、州下院選の選挙区の過半数でも勝利する必要があり、該当する候補がいない場合、州下院が州全体の得票数で上位2位になった候補から知事を選定する
知事にはどのような役割や権限が与えられているの?
知事の役割や権限は州が独自に定めるが、大統領に類似するところが多い。
- 州法の執行(連邦制であるアメリカでは、州法が婚姻・教育・遺産相続・地権等の生活に身近な事項の多くや、自動車免許・酒類販売許可・弁護士・医師等の許認可制度を規定する)
- 州軍の最高司令官(連邦制であるアメリカでは、各州がNational Guardと呼ばれる軍勢を維持している)
- 州議会を通過した法案に対する拒否権
- 州内閣メンバー(司法長官等)の任命(ただし、内閣が直接選挙で選ばれる州が多い)
- 州裁判官の任命(ただし、裁判官が直接選挙で選ばれる州が多い)
任期中に知事が辞任または死去するとどうなるの?
大半の州では副知事が直ちに就任する。通常、新知事は前知事の残りの任期満了まで務めるが、州によっては一定期間内に補選が実施される。
少数ながらも副知事がいない州があり、その場合は、州上院議長か州務長官が新知事に就任する。州上院議長が副知事を兼任している州もある。
副知事はどのように選ばれるの?
州上院議長が兼任しているポストでなければ、州の住民が直接選挙で選ぶ。
ただ、州によって選挙方法が大きく異なるので、副知事にも以下のようなバリエーションが見られる。
- 知事候補が自ら副知事候補を指名し、共同で知事選を戦う
- 副知事は知事とは別の党予備選を通して候補指名がなされるが、予備選を勝ち抜いた知事指名候補と副知事指名候補は共同で本選を戦う
- 知事と副知事は本選でも個別に選挙を戦う
1、2の場合は知事と副知事は同じ政党に所属していることが保証されるが、3の場合は知事と副知事の間で”ねじれ”が発生する可能性がある。
約半数の州が1か2を採用しているが、3を採用している州も多い。