来年の中間選挙の前哨戦である2つの知事選とニューヨーク市長選〜現在の情勢とトランプ政権への影響〜

来年の中間選挙の前哨戦である2つの知事選とニューヨーク市長選〜現在の情勢とトランプ政権への影響〜

2025年の選挙日である11月5日(現地時間)まで1ヶ月を切った。ここでは、当日投開票されるニュージャージー州知事選、バージニア州知事選、ニューヨーク市長選の3つの選挙に焦点を当て、これら選挙がなぜ重視されるのか、これら選挙はどのような情勢なのか、そしてこれら選挙のトランプ政権への影響について解説していく。

この3つの選挙はなぜ重要なの?

今年は大統領選と中間選挙の合間で大型選挙がない年だが、それでもニュージャージー州とバージニア州の知事選が注目されるのは、これらが来年の中間選挙の「前哨戦」と位置づけられるためである。

例えば、共和党のドナルド・トランプ大統領が初当選した翌年に行われた2017年のバージニア州とニュージャージー州の知事選では、民主党候補が両選挙において快勝し、2018年の中間選挙で共和党が連邦下院での過半数を失った。

また、民主党のジョウ・バイデン大統領が当選した翌年に行われた2021年の知事選では、バージニア州で共和党候補が勝利し、民主党寄りのニュージャージー州で共和党候補が民主党の現職を約3ポイント差まで追い上げ、2022年の中間選挙で民主党が連邦下院での過半数を失った。

なお、ニューヨーク市は民主党の牙城なので民主党系の候補が当選することが確実だが、今年は左派の民主党候補に対してより中道的な元知事が無所属として出馬していることが注目されている。

ニュージャージー州知事選の情勢と注目点は?

2期務めた民主党現職が再選に出馬できないため、民主党のミキー・シェリル(Mikie Sherrill)と共和党のジャック・チャタレリ(Jack Ciattarelli)の新人同士の戦いとなっている。シェリルは現職連邦下院議員で元海軍パイロット。チャタレリは前回の知事選で現職を追い上げた元州下院議員。

ニュージャージー州は民主党牙城なのでシェリルが有利と考えられているが、2009年と2013年には共和党が勝利しており、再挑戦のチャタレリは知名度が高いので、接戦になるとの予測もある。

両党ともこの選挙に選挙資金を注ぎ込んでおり、両陣営合わせて既に過去最高である7200万ドル(約106億円)を支出している世論調査では、シェリルがチャタレリに対して1桁台前半から後半のリードを維持している

選挙戦では、シェリルが海軍士官学校時代にカンニングした学生仲間を告発しなかったことで卒業式に参加できなかったことが争点に挙がっている。シェリルがカンニングに関与したとの疑惑はないが、チャタレリ陣営は透明性を求めている。また、チャタレリの支持者が政府に対してシェリルの軍歴記録の開示を請求したところ、政府側が誤って個人情報を黒塗りしないまま当該記録を開示してしまい、それをそのまま公開したチャタレリ陣営が批判に晒されることとなり、この争点は泥沼化している。

最終的にはシェリルの勝利が想定されるが、もしチャタレリが勝利するようなことがあれば、支持率が低迷しつつあるトランプ政権にとって大きな追い風となる。

バージニア州知事選の情勢と注目点は?

1期務めた共和党現職のグレン・ヤンキン(Glenn Youngkin)が再選に出馬できないため(バージニア州は2期続けて知事を務めることができない唯一の州)、民主党のアビゲイル・スパンバーガー(Abigail Spanberger)と共和党のウィンソム・アール=シアーズ(Winsome Earle-Sears)の新人同士の戦いとなっている。スパンバーガーは前連邦下院議員で、アール=シアーズは現職副知事。

州内ではヤンキン知事とトランプ政権への支持率が低下しており、アール=シアーズ本人への期待も高まっていないことから、資金集めに苦労しているアール=シアーズが資金潤沢なスパンバーガーに十分と対抗できずにいる。近年のバージニア州は民主党寄りで、世論調査もスパンバーガーの10ポイント弱のリードを示しているので、民主党が勝利する可能性が高い。

選挙戦の終盤になって、知事選と同時に行われる司法長官(Attorney General)の選挙に出馬している民主党候補の過去の暴力発言が注目されているが、たとえこの問題によって民主党のイメージが低下しても、スパンバーガーの優勢は揺るがないと思われる。

ニューヨーク市長選の情勢と注目点は?

民主党所属のエリック・アダムズ市長(Eric Adams)は、民主党のバイデン政権に起訴され、共和党のトランプ政権に起訴を取り下げてもらえたことで、民主党牙城のニューヨーク市で支持率が急落し、無所属として再選を目指すことを強いられた。

よって、6月に実施された民主党の予備選は現職不在の戦いとなり、社会主義派であることを明言するゾフラン・マムダニ(Zohran Mamdani)が、セクハラ問題で2021年にニューヨーク州知事を辞任したアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)を破って民主党候補となった。

より中道的なクオモは予備選で負けたにも関わらず無所属候補として出馬し続けることを表明し、共和党もカーティス・スリワ(Curtis Sliwa)を立てているため、市長選はマムダニ(民主党)、アダムズ市長(民主党系無所属)、クオモ(民主党系無所属)、そしてスリワ(共和党)が乱立する戦いとなった。

ただ、9月28日(現地時間)、アダムズ市長は選挙資金が集まらないことを理由に出馬を断念したことから、マムダニとクオモの対決構図が明確化しつつある。

もっとも、アダムズ撤退前の世論調査ではマムダニがクオモを15ポイントから20ポイントの差でリードしていたので、1桁台だったアダムズの支持がクオモに流れてもマムダニの優勢は変わらない。

トランプ政権への影響の観点では、これら選挙のどこに注目すればいいの?

最も注目すべきは、ニュージャージー州とバージニア州の知事選の双方で民主党が勝利するかである。

1989年以降、ニュージャージー州とバージニア州の知事選で同じ政党が勝利したことは7回あり、そのうち1回を除いて、翌年の中間選挙では同じ党が連邦下院で過半数を獲得した。したがって、今年のニュージャージー州とバージニア州の知事選で民主党が勝利すると、来年の中間選挙で共和党が連邦下院での過半数を失う可能性が高くなり、トランプ政権2期目の運営が厳しくなる。

ニューヨーク市長選では、共和党候補が実質泡沫候補なので、トランプ大統領は民主党系の候補の中でもより中道的なクオモを支持していると考えられている。マムダニが圧勝すれば、昨年の大統領選でニューヨークでも支持を広げたトランプの評価が下落していることが裏付けられる。

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