バイデン交代論〜実現性はどれくらい?代わりの有力候補は誰?〜

バイデン交代論〜実現性はどれくらい?代わりの有力候補は誰?〜

6月27日(現地時間)の討論会でジョウ・バイデン大統領が苦戦して以降、「バイデン交代論」が本格的に議論されるようになった。ここでは、どのようなシナリオならバイデン以外の候補が民主党の大統領指名候補になれるのか、バイデンが交代した場合に誰が有力候補になるのか、バイデン以外が指名候補になる確率はどれくらいなのかを解説する。なお、トランプの死去などにより共和党の指名候補を交代させるシナリオはこちらで解説している。

バイデンが交代する前提条件は?

バイデン本人が撤退を表明しない限り、民主党の指名候補が交代することはあり得ない。

党の大統領指名候補は、党大会代表者による投票で決まる。党大会代表者は各州で実施された予備選で選ばれており、原則として、彼らの投票先は予備選の結果に拘束されている。今年実施された民主党の予備選ではバイデンが圧勝していることから、党大会代表者がバイデン以外の候補に投票するためには、バイデン本人が大統領選から撤退する必要がある。

ここにきてバイデンが自ら身を引くとは考えにくい。よって、民主党がバイデンを交代させたいのであれば、党の重鎮の誰かが彼に引導を渡すしかない。

それができる人として最初に思い浮かぶのが、バイデンの上司であったバラク・オバマ(Barack Obama)元大統領である。だが彼とバイデンの関係は決して良好ではなく、いずれにせよ、オバマはバイデンを支持するとの表明を出した。

他にバイデンに引導を渡せるとしたら、ナンシー・ペロシ(Nancy Palosi)前連邦下院議長かもしれない。8年間議長を務めた彼女は、議長を退任した今でも党内で抜群の影響力を持っている。

評論家や大手新聞がバイデンの撤退を訴えているが、今のところ、民主党内の政治家誰1人としてバイデンの撤退を求めていない。民主党所属の現職政治家の間でバイデン交代論が広がらない限り、バイデンが民主党の大統領指名候補になることは確実だ。

もしバイデンが撤退表明したら、その後どうなるの?

バイデンによる撤退表明直後、複数の候補が手を挙げるであろう。具体的には、現職副大統領のカマラ・ハリス(Kamala Harris)に加えて、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)、ミシガン州知事のグレッチェン・ウィットマー(Gretchen Whitmer)、ペンシルベニア州知事のジョシュ・シャピロ(Josh Shapiro)、オバマ元大統領の妻であるミシェル・オバマ(Michelle Obama)などが噂されている。

上述したとおり、党の大統領指名候補は党大会代表者による投票で決まる。民主党としては新しい候補者の間で一斉に予備選を実施したいところだが、改めて予備選を実施する時間など残っていないので、既に選ばれている党大会代表者が新たな大統領候補を指名せざるを得ない。

党大会代表者による投票はどのように進むの?

バイデンが撤退すると党大会代表者はバイデンに投票する義務から解放されるため、彼らは誰にでも自由に投票できるようになる。

自然と、ハリス副大統領がバイデンの後継者と見られるだろう。バイデン本人も後継指名をするかもしれない。よって、まずはハリスを軸に党大会代表者の投票が進むことが確実だ。彼女が最初の投票で過半数を獲得できれば、民主党の大統領指名候補はすぐにハリスに決まる。

もしハリスが1回目の投票で過半数に達しないようなことが起これば、党大会はBrokered Convention(”割れた党大会”)となり、指名争いはカオス状態に陥る。ハリスに脈がないと見た他の候補は各党大会代表者への働きかけを始め、策略や政治の駆け引きによってなんとか2回目以降の投票で過半数を獲得しようとするだろう。

で、誰がバイデンの代わりになるの?

ほぼハリスで間違いない。

彼女自身支持率が低いという懸念材料が残るが、11月の本選挙まで時間が限られているため、知名度が高い候補でなければ選挙を戦えない。支持率はどうであれ、現職副大統領であるハリスの知名度は突出している。

ニューサムもアメリカの最大の州であるカリフォルニア州の知事として全国的な知名度があるが、彼は白人の男性である。現在の民主党内の事情を鑑みると、女性か人種的マイノリティ以外が党の指名候補として認められる可能性は極めて低い。(ハリスは黒人とインド人を両親に持つ)

ミシェル・オバマは知名度が高く黒人の女性であるが、政治未経験者なので、彼女では党内がまとまらない。

以上、ハリスは①知名度が高い、②女性および人種的マイノリティである、③党がまとまる、の3つの要件をすべて満たしているが、彼女にはもう一つ、他の候補にはない強みがある。それは、資金関係だ。

大統領選における献金は候補者の陣営に対して行われるが、バイデン陣営は厳密には「大統領候補バイデン・副大統領候補ハリス」陣営である。バイデン陣営はハリス陣営でもあるので、ハリスはバイデンの政治資金を引き継ぐことができるのだ。他の候補はほぼゼロから資金集めを行わなければならないので、ハリスにとってこれは大きな強みとなる。

バイデンはいつまでに撤退を判断する必要があるの?

あまり時間がない。本選挙は11月だが、オハイオ州では候補者の名前を投票紙に載せるための届出の期限が8月7日なので、民主党はそれまでに大統領指名候補を決める必要がある。

となると、バイデンは7月の下旬までに撤退を表明する必要がある。このタイミングを逃すとバイデンを交代させるのは相当複雑になり、健康的な理由等の緊急事態でもない限り、バイデン交代はほぼ不可能となる。

で、バイデンが交代する可能性はどれくらいあるの?

すべてがバイデンを撤退させられるかにかかっている。

バイデンの高齢は昨年から懸念されていたにも関わらず、党内有力候補の誰1人としてバイデンの対抗馬として大統領予備選に出馬しなかった。大統領候補としての正式な指名を控えた今バイデンに撤退を求めることには相当な今更感がある。

結局は今後の世論調査の結果によるが、たとえバイデンの支持率が急落しても、バイデンが撤退する可能性は10%未満だろう。

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