バイデンが正式に撤退〜なぜ起こったの?誰が代わりの候補になるの?〜

バイデンが正式に撤退〜なぜ起こったの?誰が代わりの候補になるの?〜

現地時間の7月21日(日)、ジョウ・バイデン大統領が撤退を表明した。バイデンが撤退した背景と誰が代わりの候補になるのか、そしてこの先何が注目されるのかを解説していく。

簡潔に言うと、何が起こったの?

現地時間の21日の16時頃、バイデン大統領は声明を発表し、大統領選から撤退することを表明した。その後、カマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領を次期大統領に推薦するとも発表した。いずれも、この数日間の出来事を踏まえると想定されていたことだ。

ハリス自身も声明を出し、バイデンの推薦を受けて光栄で、民主党の大統領候補の指名を受ける意図であると発表した。

なんでバイデンは撤退したの?

直接的な理由は、民主党の重鎮が彼を見捨て、民主党所属の連邦議員が表立って彼に撤退するよう求めていたからだ。撤退表明した時点で、合計34人の下院議員と4人の上院議員がバイデンに撤退を求めていた

もちろん、間接的な理由としては、6月27日に実施された討論会でバイデンの惨めな姿が晒され健康や認知能力への懸念が頂点に達したからである。また、裕福な支援者からの献金が急減したことも理由に挙げられる。

特に民主党重鎮の3人である連邦上院議会のトップ、チャック・シューマー(Chuck Schumer)院内総務、連邦下院議会のトップ、ハキーム・ジェフリーズ(Hakeem Jeffries)連邦下院議長、民主党内で影響力が高いナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)前連邦下院議長がそれぞれバイデンに引導を渡したことが大きかった。まさに、1974年にウォーターゲート事件でスキャンダルまみれだったリチャード・ニクソン大統領に対して、当時の共和党の連邦上院議会のトップ、連邦下院議会のトップ、元共和党大統領指名候補だった重鎮3人が引導を渡して辞任させたことを思い出させる。

で、誰が民主党の指名候補になるの?

理論上は、8月19日(月)から開催される民主党の党大会まで大統領候補の指名争いが再開する。だが、党内はハリスの下で結集する空気になっており、現実的にはハリスで決まりだろう。

ハリスはバイデンの推薦を受けているだけでなく、法律上、バイデンの選挙資金を引き継ぐことができることが大きい。実際、21日中に「バイデン陣営」が「ハリス陣営」に改名され、銀行口座も引き継がれた。

ハリス以外の候補は現れないの?

以前解説した通り、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)、ミシガン州知事のグレッチェン・ウィットマー(Gretchen Whitmer)、ペンシルベニア州知事のジョシュ・シャピロ(Josh Shapiro)、オバマ元大統領の妻であるミシェル・オバマ(Michelle Obama)などが代わりの候補として以前から噂されていた。

ニューサムはアメリカの最大の州であるカリフォルニア州の知事として全国的な知名度があるが、彼は白人の男性である。現在の民主党内の事情を鑑みると、女性か人種的マイノリティ以外が党の指名候補として認められる可能性は極めて低い。(ハリスは黒人とインド人を両親に持つ)

ミシェル・オバマは知名度が高く黒人の女性であるが、政治未経験者なので、彼女では党内がまとまらない。

そしてウィットマーやシャピロは知名度に欠ける。

また、これら候補は全員、ほぼゼロから選挙資金集めを行わなければならないという大きなハンデを抱えている。

手続き的には、どのように大統領候補が指名されるの?

党の大統領指名候補は、党大会代表者による投票で決まる。党大会代表者は各州で実施された予備選で選ばれており、原則として、彼らの投票先は予備選の結果に拘束されているが、バイデンが撤退したことで彼らはバイデンに投票する義務から解放され、誰にでも自由に投票できるようになった。

民主党内では一部、簡素化された予備選を実施して候補同士を競わせることを求める声もある。だが、党大会が来月に控えている現在、予備選を企画する時間も実行していく時間もなく、実際問題として、既に選ばれている党大会代表者が新たな大統領候補を指名せざるを得ないだろうと思われる。

当面は、党大会までの1ヶ月弱で予備選を実施するような動きが起こるかが注目される。

このタイミングで大統領候補が不在になった事例はあるの?

以前解説した通り、予備選が終了した後かつ党大会が開催される前のこのタイミングで最有力候補が撤退したことはない。1952年と1968年にも現職大統領が大統領選から撤退したが、彼らは予備選に撤退したので、バイデンとは状況が大きく異なる。

共和党指名候補のドナルド・トランプの反応は?

CNNのインタビューに対して、トランプはバイデンを「史上最悪の大統領」と貶し、ハリスはバイデンより弱い候補になるだろうと語っている

ただ、今までのトランプはバイデン相手に批判を繰り広げており、最近の世論調査によるとバイデンに対してだいぶ優位に立っていた。勝利の可能性がだいぶ高まった時点で候補を差し替えられたトランプ陣営としては、必ずしも喜ばしい出来事とは言えないだろう。

今後、何が注目されるの?

当面は、大統領候補になったハリスが誰を副大統領候補に任命するのかが最も注目される。ハリスの対抗馬として噂されているミシガン州知事のウィットマーやペンシルベニア州知事のシャピロは激戦州の出身なので、有力候補だ。特にウィットマーだと正・副大統領候補共に女性となり、相当注目度が上がりそうだ。なお、ハリスは自分の大統領候補指名を確実にするため、副大統領候補を早期に発表すると思われている。

より長期的には、今後、未知数の「ハリス大統領候補」がどう世間から受け止められるかが注目される。低迷していたバイデンが撤退したとは言え、現職副大統領であるハリスは新鮮な顔とは言えず、実際問題として、直近の世論調査によると彼女の支持率は決して高くない。民主党内の世論調査ではより健闘しているようだが、「ハリス大統領候補」が浸透するまで、なんとも言えない。

で、大統領選を撤退したバイデンは大統領職を辞任するの?

トランプに副大統領候補に指名されたJ・D・バンスを筆頭に共和党はバイデンの辞任を求めているが、バイデン本人は大統領選からの撤退を表明した声明の中で任期満了まで職務を全うすることを明言している。

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2件のコメント

  1. 初めてこのブログを知りました。今は日本人の多くも、合衆国大統領選に関心を持っているのでは?そういう私は、女性初のハリス大統領誕生に期待していますが、トランプ氏相手に勝利するのは厳しいかもしれませんね。

    yukowelisabeth

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