大統領の概要

大統領の概要

アメリカの行政のトップは大統領。ここでは、大統領の基本について、歴史や背景も補足しながら解説していく。なお、連邦政府における立法手続きの中での大統領の位置付けはこちらを参照。

まずは、基本から

任期は4年。任期回数は2期まで。

被選挙権の要件はアメリカ連邦憲法において主に三つ規定されており、下院議員、上院議員になるための要件より厳しい。

  1. 35歳以上
  2. ネイティブな(帰化していない)アメリカ人
  3. 14年間アメリカの住民であること

大統領はどうやって選ばれるの?

有権者が「選挙人」(Electors)を選んで、「選挙人」が大統領を選ぶ間接選挙の仕組み。

大統領選の仕組みは複雑なので、詳細はこちらを参照

憲法上、大統領にはどのような役割や権限が与えられているの?

アメリカ連邦憲法においては、大統領の役割や権限について主に以下が明文化されている。

  1. 連邦法(合衆国の法律)の忠実な執行(初期の頃は「小さな政府」時代だったので、これは強力な権限ではなかった)
  2. 陸軍および海軍の最高司令官(憲法批准された1788年には空軍はなかった)
  3. 議会への法案の提案(立法化には議会の承認も必要)
  4. 議会を通過した法案に対する拒否権(議会は2/3の採決により大統領の拒否を覆すことが可能)
  5. 内閣、使節、領事、連邦裁判官などを任命(上院の過半数の承認も必要)
  6. 条約を締結(上院の2/3の採決による承認も必要)

憲法では、大統領の役割や権限について詳しく規定されていない。これは、憲法が批准された当時、民主的に選ばれた国家首脳のモデルが世界になく、抑制されるべき権力は議会だと思われていたから。結果、憲法の草案が議論されていた頃から、大統領の役割の定義については、絶対的な信頼を得ており初代大統領になることが確実視されていたジョージ・ワシントンに丸投げされた。

現在の大統領の実質的な権限は?

大統領の権限は、アメリカ連邦憲法が批准されてから200年以上もの間、じわじわと拡大していった。

たとえば、19世紀に国土が広がり産業革命も起こると、「行政」が確立され「大きな政府」の時代が到来した。それに伴い、行政のトップにいる大統領の権限も強化された。

20世紀に入るとアメリカは軍事大国となり、軍の最高司令官としての大統領の権力も必然と増加。

また、20世紀の後半以降は、議会を通して立法化されてないものの、法的拘束力がある大統領命令(executive order)が頻繁に発されるようになる。

大統領が欠員になるとどうなるの?

副大統領が大統領に就任し、前大統領の任期満了まで務める。

副大統領も欠員である場合は、下院議長が大統領に就任する。

任期中に死去した大統領は何人いるの?

以下8人いる。

  1. ウィリアム・ヘンリー・ハリソン(1841年)
  2. ザカリー・テイラー(1850年)
  3. エイブラハム・リンカーン(1865年)(暗殺)
  4. ジェームズ・A・ガーフィールド(1881年)(暗殺)
  5. ウィリアム・マッキンリー(1901年)(暗殺)
  6. ウォレン・G・ハーディング(1923年)
  7. フランクリン・D・ルーズベルト(1945年)
  8. ジョン・F・ケネディ(1963年)(暗殺)

任期中に辞任した大統領は何人いるの?

リチャード・ニクソンだけ。

彼は、ウォーターゲート事件における隠滅行為が発覚し、連邦議会による弾劾と罷免が避けられないこととなったため、自主的に辞任した。

議会により弾劾された大統領は何人いるの?

3名の大統領が計4回連邦下院に弾劾訴追されている。

  1. アンドリュー・ジョンソン(1868年)
  2. ビル・クリントン(1998年)
  3. ドナルド・トランプ(2019年、2021年)

いずれも上院の裁判で有罪とならず、罷免を免れている(ジョンソンの場合は1票の差で)。

なお、ニクソンも弾劾されたと良く誤解されるが、彼は弾劾される前に辞任している。

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