連邦上院の仕組み

連邦上院の仕組み

アメリカの連邦議会は上院と下院から構成される。ここでは、上院の仕組みについて、歴史や背景を補足しながら解説していく。なお、連邦政府における立法手続きの中での上院の位置付けはこちらを参照。また、下院の仕組みの解説はこちら

まずは、上院の基本から

どの州も定数は2議席で、これはアメリカ連邦憲法に規定されているだけでなく、改正できない条項である。アメリカには50州あるので、定数は100人。

任期は6年。偶数の年(大統領選と中間選挙の年)に1/3の議員が改選を迎える。任期回数に制限はない。

被選挙権の要件はアメリカ連邦憲法において主に三つ規定されており、大統領になるための要件より緩いが、下院議員になるための要件より厳しい。

  1. 30歳以上
  2. 9年間市民権を保有していること
  3. 選出される州の住民であること

上院の選挙制度はどうなってるの?

アメリカ連邦憲法・連邦法(合衆国の法律)で定められている事項と州の法律で定められている事項の区別が重要。

① アメリカ連邦憲法・連邦法により定まる事項

  • 上院選は州の住民が選ぶ直接選挙型
  • 任期は6年
  • 議席は各州に2議席ずつ配分
  • 選挙区は州単位
  • 本選の投票日は11月の第1火曜日

② 州の法律により定まる事項

  • 党の予備選の投票日
  • 投票時間(本選も含む)
  • 選挙権の要件
  • 投票の仕方(郵便による投票の期限等)
  • 選挙方法(単純小選挙区制、多数決制、優先順位付投票制等)

以上から分かるように、連邦制のアメリカでは選挙制度が州によって異なる。州の様々な選挙方法については、こちらを参照

上院はどういう位置付けだと考えればいいの?

選挙制度を踏まえると、「良識の府」 と言えるだろう。州単位の広大な選挙区で2年毎に1/3の議員しか改選を迎えないので、下院と違って民意のうねりに影響されにくく、 政党が過半数を獲得・維持するのが困難。これは日本の参議院と似ている。

なお、当初の上院は「州代表の府」であった。1913年にアメリカ連邦憲法が改正されて直接選挙になるまで、上院議員は州議会に選出されていた。

上院選の一票の格差はどれくらいなの?

68倍。これは、最も人口が多いカリフォルニア州と最も人口が少ないワイオミング州には68倍の人口の差があるから。

なお、アメリカ連邦憲法では改正手続きが規定されているが、上院の議席配分はその手続きの対象外となっているので、上院の議席配分は実質変えられない。

上院特有の権限とは?

アメリカ連邦憲法上、主に四つある

  1. 大統領が任命する内閣、使節、領事、連邦裁判官などを過半数で承認する権限
  2. 大統領が締結した条約を2/3の採決で承認する権限
  3. 下院で弾劾訴追された大統領、副大統領、連邦裁判官などを2/3の採決で有罪とし罷免する権限
  4. 大統領選と共に実施される副大統領戦で、選挙人による投票で過半数を獲得する候補がいなかった場合、上位2人から副大統領を選出する権限

内閣や条約の承認権限があるので、上院は下院より権限が強いと言える。

上院では法案はどのように審議されるの?

アメリカ連邦憲法上の議長は副大統領だが、副大統領は可否同数の時にしか表決に参加できず、議員として審議に参加することもできないので、あまり権力がない。

議事の進行は過半数を占めている政党の執行部が支配するが、院内規定により各議員の発言時間は無制限で採決も全会一致合意が原則となっているので、執行部も強い権力を有しているとは言い難い。

この奇妙な審議の仕組みについては、こちらで詳しく解説

上院議員の欠員が生じるとどうなるの?

州によって異なるが、知事が代理の上院議員を任命することが多い。いずれにせよ一定期間内に補選が実施され、上院議員代理が任命されている場合は、代理が”現職”として補選に出馬することがよくある。

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