二大政党制であるアメリカでは、共和党と民主党の違いを対極的に理解しやすい。ここでは、アメリカの西部での共和党と民主党の違いを解説して行く。なお、東北の解説はこちら、南部の解説はこちら、中西部の解説はこちらを参照されたい。また、政治的思想に基づく両党の違いの解説はこちらを、投票者の属性に基づく違いの解説はこちらを参照。
「西部」はどの州により構成されるの?
アメリカの国勢調査局が採用している区分を引用し、「西部(West)」は以下の州から構成されるものとする。各州の人口のイメージがつきやすくなるよう、下院の議席数を括弧内で記載している。
- モンタナ州(Montana)(2)
- ワイオミング州(Wyoming)(1)
- アイダホ州(Idaho)(2)
- コロラド州(Colorado)(8)
- ユタ州(Utah)(4)
- ニューメキシコ州(New Mexico)(3)
- アリゾナ州(Arizona)(9)
- ネバダ州(Nevada)(4)
- ワシントン州(Washington)(10)
- オレゴン州(Oregon)(6)
- カリフォルニア州(California)(52)
- アラスカ州(Alaska)(1)
- ハワイ州(Hawaii)(2)
上記1~8は合わせて「マウンテン(Mountain)」、9~13は合わせて「パシフィック(Pacific)」とも表現される。
西部では共和党・民主党のどちらが強いの?
農村部が多く人口が少ない州を除いて、概ねすべてが民主党寄りか民主党の牙城の州である。
民主党の牙城の州では共和党はまったく競争力がなく、東北と異なり、共和党候補は知事にさえ選出されにくい。
西部での一般的な投票者の属性は?
西部の州では、大半の投票者が農村部に住んでいるか都市部その郊外に住んでいるかの両極端であり、前者の州は共和党の牙城、後者の州は民主党の牙城か民主党寄りの州となる。
人種的には、特にメキシコとの国境が近いカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州でヒスパニック系の投票者が一定数いる。彼等は民主党に投票する傾向があることから、人種の構成も西部を民主党寄りにしている。
西部の詳細は次のとおり区分して解説する。
共和党の牙城である州はどこで、どういう性質なの?
- アラスカ州(Alaska)
- アイダホ州(Idaho)
- モンタナ州(Montana)
- ユタ州(Utah)
- ワイオミング州(Wyoming)
ユタ州を除いて、これら州に共通しているのは都市がないということである。農村部では共和党が強いことから、各州は共和党の牙城となる。
ユタ州にはソルトレイクシティ市が所在し人口もその街と郊外に集中しているが、この州の大半の住民は極めて保守的なモルモン教の信者であるため、通常は都市部が強い民主党もユタ州では存在感が薄い。
民主党の牙城である州はどこで、どういう性質なの?
- カリフォルニア州(California)
- ハワイ州(Hawaii)
- オレゴン州(Oregon)
- ワシントン州(Washington)
カリフォルニア州には大都市であるロスアンゼルス市が所在し、ハワイ州、オレゴン州、ワシントン州にもホノルル市、ポートランド市、シアトル市といった都市が所在する。各州の人口はそれらの街や郊外に集中しているため、これら4つの州は都市部が強い民主党の牙城となる。
特にオレゴン州とワシントン州では共和党は長年歯が立たず、最後に共和党の候補が知事選で当選できたのは1980年代である。
民主党寄りの州とはどこで、どういう性質なの?
- アリゾナ州(Arizona)
- コロラド州(Colorado)
- ニューメキシコ州(New Mexico)
- ネバダ州(Nevada)
これら4つの州の人口は都市とその郊外に集中しているだけでなく(アリゾナ州はフェニックス市、コロラド州はデンバー市、ニューメキシコ州はアルバカーキ市、ネバダ州はラスベガス市)、ヒスパニック系の投票者が一定数いる。よって、都市部とヒスパニック系の投票者が支持基盤である民主党が優勢になっているが、民主党の牙城とならないのは、思想的に保守の傾向があるからである。
実際、アリゾナ州は、1964年の大統領選で共和党の指名候補になったバリー・ゴールドウォーターおよび2008年の大統領選で共和党の指名候補になったジョン・マケインの地元であり、従来、この州は共和党優勢の州だった。それが近年のヒスパニック系の人口の増加により、民主党が逆転しつつある。
4つの州を保守=>リベラルの順で並べると、アリゾナ州=>ネバダ州=>コロラド州=>ニューメキシコ州の順番となるので、共和党はアリゾナ州で負けると4つの州で全敗し、民主党はニューメキシコ州で負けると4つの州で全敗する可能性が高い。