アメリカでは、連邦法上、毎年11月の第1火曜日に選挙が実施される。大型選挙があるのは「偶数の年」なので、2023年は盛り上がりに欠ける投開票日となったが、注目に値する選挙がなかったわけではない。ここでは、注目された選挙結果を解説してみる。
どの州のどの選挙が注目されたの?
ケンタッキー州(Kentucky)とミシシッピ州(Mississippi)の知事およびバージニア州(Virginia)の州議会(上院と下院)が改選を迎えただけでなく、オハイオ州(Ohio)の州憲法に中絶を人権として規定するかに関する住民投票が行われた。
で、結果はどうだったの?
端的に言うと、共和党が敗北した。
ケンタッキー州では、民主党の現職知事が5ポイント差(52.5%-47.4%)で再選。
バージニア州では、人気がある共和党の現職知事が金銭的かつ労力的に力を入れたものの、共和党は上院で議席を増やしながらも過半数まで届かず、下院では議席を失い民主党に過半数を奪われた。
また、オハイオ州では、州憲法に中絶を人権として規定する憲法改正案が大差(13ポイント、56.6%-43.4%)で通った。
共和党にとって唯一の明るい結果は、ミシシッピ州でスキャンダルまみれの現職知事が6ポイント差(51.6%-47.0%)で再選したことくらい。
どんな側面で共和党の苦戦と言えるの?
ケンタッキー州もミシシッピ州もアメリカの南部に所在し、共和党の牙城である。よって、ミシシッピ州知事選における6ポイントでの勝利は「僅差」と言え、ケンタッキー州知事選での敗北は完敗と言える。もっとも、どの選挙でも現職は強く、ケンタッキー州の副知事と州務長官(Secretary of State)の選挙では共和党候補が20ポイント以上の差で圧勝していることを踏まえると、知事選では現職の人気のインパクトが特に大きかったと言えるかもしれない。
オハイオ州では近年保守化が加速している。にもかかわらず、13ポイントもの差で住民が中絶を人権として認めるべきだとしたことは、中絶の制限・禁止を訴える共和党にとっては大きな逆風であると言える。
バージニア州は2010年代以降民主党寄りの州になってきており、2年前に共和党の現知事が当選した時は、民主党寄りの地域で共和党が勝利するためのお手本になるのではと評価されていたが、今回の結果で彼の手法にも限界があることが示されたと言われてる。
この選挙の結果はこの先の政治の行方にどのような意味を持つの?
アメリカの政界の関心は、来年の大統領選挙に移っている。バイデン大統領の支持率が40%台と低迷する中、同じく不人気のトランプ前大統領が率いる共和党にも危険信号が灯る選挙結果となり、大統領選は「民主党にも共和党にも投票したくない選挙」になってしまうことが現実味を浴びてきている。