現地時間の2024年1月15日(月)(日本時間の1月16日の午前)にアイオワ州で共和党の党員集会が開催されたので、ここで開票結果を解説する。事前の予想については、この記事を参照。
投票結果は?
候補 | 得票率 | 得票数 |
ドナルド・トランプ | 51.0% | 56,260 |
ロン・デサンティス | 21.2% | 23,420 |
ニッキー・ヘイリー | 19.1% | 21,085 |
ヴィベク・ラマスワミ | 7.7% | 8,449 |
この結果を踏まえ、ラマスワミは自身の撤退とトランプの推薦を表明した。
この結果はどう解釈すればいいの?
トランプにとって、これ以上の結果は望めなかっただろう。
まず、トランプ本人の得票率が過半数を超え、勝利の差(30ポイント)もアイオワ州党員集会では過去最大。トランプは、自分が共和党のリーダーであることを誰しもが認めざるを得ない投票結果で示すことができた。
また、失速気味だったデサンティスが2位に踏み止まり、直ちに撤退する可能性が低くなった。勢いがあると言われていたヘイリーにとっては、期待していた勝利のシナリオであるトランプとの一騎打ちの実現が遠のいた。
結果から見える各候補の強みや弱みは?
1票差で落とした1郡を除いて、トランプはアイオワ州にある99郡すべてで勝利を収めた。また、入口調査(党員集会では、有権者が一斉に出てくる「出口」ではなく「入口」で調査を取る)では、地域、年齢、教育にかかわらず、幅広い支持を得ている。また、支持の厚さも明確だ。想定されたとおり悪天候になったが、寒波の中で長時間拘束される党員集会にわざわざ足を運んだのはトランプ支持者であった。
他方で、ヘイリーの支持層は極めて弱いことが示された。事前の世論調査から、ヘイリー支持者は中道的又は左寄りであることが出ていた。保守的なアイオワ州で中道的・リベラルな票は首都デモイン(Des Moines)や都市シーダー・ラピッズ(Cedar Rapids)やそれらの郊外、そして大学所在地であるジョンソン郡(Johnson County)等に限られるが、都市部でもトランプが勝利を収めており、都市郊外ではデサンティスに2位の座を奪われている。また、入口調査によると、無党派層の票でさえトランプに取られている。
保守派であることを売りにしていたデサンティスは地方でヘイリーに差をつけて、(トランプには及ばないものの)保守派から一定の支持を得ることに成功している。
次のニューハンプシャー州予備選の見通しは?
保守派が多いアイオワ州と異なり、ニューハンプシャー州はより中道的である。また、党員集会ではなく予備選なので、そこまで熱狂的ではない支持者も投票に行く。よって、ニューハンプシャーではアイオワでのヘイリーとデサンティスの順位が逆転することはほぼ確実だ。
世論調査では、トランプがニューハンプシャーでもリードしている。最近追い上げていたヘイリーにとって、アイオワで2位になれなかったことは大きな痛手だ。アイオワの党員集会で健闘した候補がニューハンプシャーで弾みをつけられることがあるが、2位が期待されていた中での3位では、トランプを追い越せる可能性は低いだろう。
ニューハンプシャーで競争に食い込めてないデサンティスは、ニューハンプシャー州を諦め、より保守的でヘイリーが知事を務めていたサウスカロライナ州に目を向けている。
最終的に誰が指名候補になりそうなの?
アイオワでトランプが独走し、2位の争いの混迷が続くことが明確になったので、トランプ優勢は確実となった。
ヘイリーがニューハンプシャー州で勝利できればトランプの勢いを弱めることができるかもしれないが、アイオワの結果を踏まえるとその可能性は低まり、その後のサウスカロライナ州でもデサンティスが一定の存在感を指名そうな雰囲気である。
そもそも、アイオワで確認されたヘイリー支持層である中道派・リベラル層、無党派層、トランプ批判者等の票が共和党の予備選でどれほどあるのか疑わしい。(アイオワ州の共和党は特に保守的であるという前提で、入口調査によると、アイオワ州党員集会での無党派層の票は16%、中道派・リベラル派の票は11%しかなかった)。たとえ勝利シナリオであるトランプとの一騎打ちに持ち込めても惨敗しそうである。