現地時間の2024年1月15日(月)(日本時間の1月16日の午前)にアイオワ州で共和党の党員集会が開催される。ここでは、党員集会で注目すべき事項、予想と今後の見通しについて解説する。なお、この記事はこちらの大統領候補指名争いに関する解説に目を通してから読むことをお勧めする。
現在、誰が指名争いに残ってるの?
1月10日にクリス・クリスティ元ニュージャージー州知事(Chris Christie)が撤退を表明したので、現在は次の4人が指名争いに残っている。
- ドナルド・トランプ前大統領(Donald J. Trump)〜大統領退任後も共和党内での影響力は衰えていないが、多数の刑事事件で被告となっていることから、世間からは「問題が多い候補」とされている
- ロン・デサンティス現フロリダ州知事(Ron Desantis)〜2年前の知事選で圧勝して以来トランプの代わりとなり得る「賢いトランプ」と期待されたものの、カリスマ性に欠けており、討論会でも存在感を示せず、失速気味
- ニッキー・ヘイリー元国連大使・サウスカロライナ州元知事(Nikki Haley)〜トランプ政権の閣僚の一員でありながらトランプへの対抗馬として出馬。討論会で外交経験や保守さをアピールすることができて、勢いづく
- ヴィベク・ラマスワミ(Vivek Ramaswamy)〜政治経験のない実業家。当初は討論会で「トランプのような振る舞い」により存在感を示せたものの、あまりに強烈すぎて、最近は有権者から忌避されている模様
8年前の指名争いでは乱立状態で予備選に突入したことから反トランプ票が割れ、トランプが3割程度の得票率で指名候補になれた。今回は、早期に候補者数が絞られてきているので、理論上は、8年前より「反トランプ票」が纏まりやすい。
現状の世論調査はどのような感じなの?
アイオワ州でも全国的にも、トランプが独走。
年が明けてからアイオワ州で実施された世論調査では、トランプが50%前後の支持を得ており、勝利することが確実視されている。2位とは30ポイントもの差がついていて、これが実際の結果になると、アイオワ党員集会では過去最大の差になる。
2位の争いが熾烈で、世論調査によると、勢いがあるヘイリーがデサンティスを抜いて2位に浮上している模様だ。
ラマスワミは一桁台の支持率で、勝負に食い込めてない。
アイオワ党員集会の開票では、何に注目すればいいの?
主に次の2点が注目されている。
- トランプの得票率と勝利の差〜トランプには圧倒的な勝利が期待されている。彼の得票率が40%台前半だったり勝利の差が20ポイント台であれば、「反トランプ票」が思われてるより多いと評価されるだろう
- どの候補が2位になるか〜この数ヶ月間、デサンティスはすべてをアイオワ州に掛けてきた。2位の座をヘイリーに奪われれば、世論調査が示唆しているヘイリーの勢いが現実のものと認識されるだろう
投票率とその影響にも注目したい。
党員集会は、地元市民館等に党員が集まり、各候補の推薦者によるスピーチを聞いた後に、党員が支持する候補に投票する制度である。単に投票所で投票するより長時間拘束されることから、熱狂的な党員しか参加せず、投票率が低くなる傾向になる。
さらに、アイオワ州はもともと多雪地域であり、今年の党員集会は史上最悪の悪天候の中で実施されると予測されていることから、今回は投票率が特に低迷する可能性がある。
投票率が低くなった時、どの候補に不利でどの候補に不利なのか、意見が分かれている
- トランプは党員集会に初めて参加する人の間で支持率が高く、投票率が低いということは初参加の人が足を運ばないため、トランプにとって不利という説
- ヘイリーは大卒や無党派層の支持率が高いものの熱意が欠けているため、投票率が低いということは熱狂的な参加者しか足を運ばないため、ヘイリーにとって不利という説
- デサンティスは、唯一アイオワ州にある99郡すべてを満遍なく回り、票を引き起こす組織も築き上げたので、投票率が低いということは、デサンティスに有利になるはずという説
投票率が低かった場合のトランプとヘイリーの得票率によっては、その先の見通しにも影響を及ぼしそうだ。
で、当日はどうなりそうなの?
トランプが50%前後で圧勝、ヘイリーが10%台後半で追い、3位になったデサンティスが撤退表明する、が最も可能性が高いシナリオだ。
ヘイリーにとって、得票率が20%台に乗ることが見えてきており、それが実現すれば、健闘したといえるだろう。
デサンティスにとっては、なんとか2位になれば”健闘した”と言えそうだが、続くニューハンプシャー州やサウスカロライナ州の世論調査で苦戦しているので、たとえ2位になっても継続する余力が残っているか微妙である。
アイオワ党員集会の後にヘイリーが一騎打ちの勝負に持ち込めたら、ヘイリーは指名候補になれるの?
アイオワ党員集会の結果によっては、デサンティスとラマスワミが撤退し、ヘイリーが共和党の大統領指名候補になり得るシナリオであるトランプ対ヘイリーの一騎打ちが早々に実現する可能性がある。
ただ、アイオワ州とニューハンプシャー州の世論調査で明らかになってきているのは、ヘイリーの支持が基本的に大卒、大学院卒、無党派層、民主党層に集中していること。(アイオワ州とニューハンプシャー州を含め多くの州では党員でなくても投票できる)
トランプ大統領以降、共和党は労働者階級の党になってきており、ヘイリーの支持層はトランプ前の共和党の支持者の思想である。ヘイリー支持者の思想がトランプ時代の共和党にどれほど残っているものか。
デサンティスとラマスワミの支持者の思想がトランプ寄りなのであれば、彼らの票はヘイリーではなくトランプに流れるかもしれない。実際、それを示唆する分析もある。そうなると、もはやヘイリーには勝ち目はない。