2024年大統領選の世論調査の現状⑥〜8日28日時点で混戦を示す?〜

2024年大統領選の世論調査の現状⑥〜8日28日時点で混戦を示す?〜

民主党の党大会も終わり、現地時間の11月4日(火)の投票日まで70日を切った。ここでは8月28日時点で混戦状態になっている世論調査を解説する。なお、8月15日時点の世論調査の分析はこちらを参照されたい。

今回の大統領選で注目されている州はどこ?

おさらいとなるが、アメリカの大統領選で勝利するためには、各州とワシントン首都(Washington, D.C.)に割り当てられている「選挙人」の過半数を獲得する必要がある

もっとも、大統領選の行方を決めるのは共和党と民主党の支持が拮抗してる「激戦州」であることから、ここでは次の地図にある7つの「激戦州」(水色)を中心に、その他6つの「注目の州」(オレンジ色)にも触れながら解説していく。(数字は当該州に割り当てられている「選挙人」の数)

これら州を激戦州と注目の州に選んだ背景については、こちらのハリスにとっての2つの勝利への道の解説を参照されたい。

【激戦州】

  1. ジョージア州(Georgia)
  2. アリゾナ州(Arizona)
  3. ウィスコンシン州(Wisconsin)
  4. ペンシルベニア州(Pennsylvania)
  5. ノースカロライナ州(North Carolina)
  6. ネバダ州(Nevada)
  7. ミシガン州(Michigan)

【注目の州】

  1. フロリダ州(Florida)
  2. テキサス州(Texas)
  3. ミネソタ州(Minnesota)
  4. ニューハンプシャー州(New Hampshire)
  5. オハイオ州(Ohio)
  6. アイオワ州(Iowa)

直近の世論調査はどんな感じなの?

アメリカの世論調査では生データが公開され、リアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics(RCP))と呼ばれるサイトが大半の世論調査の平均の推移を追っている。

すべての「激戦州」におけるハリス対トランプの平均(バイデンが撤退した7月21日以降に実施された調査のみを考慮)を8月15日時点の平均と比較しながら見てみよう。

8月28日時点の
ハリス対トランプ
8月15日時点の
ハリス対トランプ
2020年の結果
ジョージア州1.0%のトランプのリード0.6%のトランプのリード0.23%のバイデンの勝利
アリゾナ州0.5%のトランプのリード0.8%のトランプのリード0.31%のバイデンの勝利
ウィスコンシン州1.0%のハリスのリード1.2%のハリスのリード0.63%のバイデンの勝利
ペンシルベニア州0.2%のトランプのリード0.2%のトランプのリード1.16%のバイデンの勝利
ノースカロライナ州0.9%のトランプのリード2.0%のトランプのリード1.35%のトランプの勝
ネバダ州1.4%のトランプのリード1.3%のトランプのリード2.39%のバイデンの勝利
ミシガン州2.4%のハリスのリード3.2%のハリスのリード2.78%のバイデンの勝利

「注目の州」の世論調査は乏しいので、8月28時点でバイデン撤退以降に実施された調査の平均とバイデンが撤退した時点の平均と比較しながら見てみよう。

8月28日時点の
ハリス対トランプ
撤退時点の
バイデン対トランプ
2020年の結果
フロリダ州5.0%のトランプのリード6.3%のトランプのリード3.36%のトランプの勝利
テキサス州該当するデータなし9.2%のトランプのリード5.58%のトランプの勝利
ミネソタ州8.0%のハリスのリード3.0%のバイデンのリード7.11%のバイデンの勝利
ニューハンプシャー州5.0%のハリスのリード3.0%のバイデンのリード7.35%のバイデンの勝利
オハイオ州8.5%のトランプのリード10.7%のトランプのリード8.03%のトランプの勝利
アイオワ州該当するデータなし11.5%のトランプのリード8.20%のトランプの勝利

現状の世論調査はどう解釈すればいいの?

前回8月15日と比べて、ジョージア州、ウィスコンシン州、ネバダ州、ミシガン州でトランプ寄りに、そしてアリゾナ州とノースカロライナ州でハリス寄りになっている。ペンシルベニア州はまったく同じの数字だ。

いずれも僅かな変化なので、許容誤差を考慮すると8月15日から統計的に有意な動きはないと見るのが適切だ。よって、これまで見られたハリスの勢いが高止まりし、大統領選は混戦状態になったと言えるだろう。

注目に値する州をあえて1つ挙げるとすると、激戦州の中で最も共和党寄りであるノースカロライナ州が拮抗していることは、他の激戦州ではハリスが有利であろうことを示唆している。

なお、「注目の州」では、すべてにおいてハリスがバイデンより健闘している。これは激戦州で見られる動きが全国的に広がっていることを意味し、驚きはない。

また、ハリスは許容誤差範囲内であるとはいえミシガン州とウィスコンシン州でリードしているが、こちらで解説したとおり、激戦州のうちこの2つで勝利するだけでは当選できない。

全国的な世論調査はどうなの?

全国的な世論調査は、より多くの有権者を調査の対象にしていることから州レベルの調査より確度が高いため、こちらも見てみる。

8月28日時点の平均でハリスはトランプを全国的に1.5%リードしている。8月15日時点の0.9%よりリードが若干広がっているように見えるが、許容誤差を考慮すると統計的に有意な動きではないと言えるだろう。

なお、民主党はカリフォルニア州ニューヨーク州など人口の多い州で圧勝することから、州レベルで競われる大統領選では勝敗に貢献しない無駄な票を多く発生させる。したがって、ハリスは全国的に数%リードしていないと、州レベルの戦いで確実に負ける。

実際、2020年の大統領選で勝利したジョウ・バイデンは、全国的の得票率でトランプを4.5%上回ったが複数の激戦州で接戦を制することでなんとか当選し、2016年の大統領選では、ヒラリー・クリントンがトランプを全国的な得票率で2.1%リードしたものの3つの激戦州で接戦を落として落選した。

ハリスの1.5%のリードは2016年のクリントンのリードを下回っており、落選する水準である。

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