アメリカでは、同時に行われる選挙で投票者が異なる政党の候補に投票する現象をSplit Ticket Votingと呼ぶ。ここでは、Split Ticket Votingがどのように大統領選における指標になり得るかを解説する。
Split Ticket Votingとはどういう現象なの?
大統領選がある年は連邦下院議員が全員、連邦上院議員の1/3、そして多くの知事が改選を迎える。
投票者がこれら複数の選挙で同じ政党の候補に投票しないことをSplit Ticket Votingと呼び、すべての選挙で同じ政党の候補に投票することをStraight ticket votingと呼ぶ。
Split Ticket Votingはどれほど起こるの?
大統領選と知事選の間では珍しくないが、大統領選と連邦議員の選挙ではとても珍しくなってきている。
最近の傾向は直近の大統領選があった年の連邦上院選の結果を見ると一目瞭然だ。州で勝利した大統領候補と上院選候補の政党が異なった州の数は次の通りである。
大統領選の年 | 大統領選の勝者と上院選の勝者の政党が異なった州の数 |
2020年 | 1 |
2016年 | 0 |
2012年 | 6 |
2008年 | 7 |
2004年 | 7 |
2000年 | 10 |
2016年にトランプが台頭してからアメリカの二極化が加速し、Split Ticket Votingが極端に減っていることがわかる。
Split Ticket Votingが減ってきている分、大統領選において僅差で決まる激戦州では、数少ないSplit Ticket Votingを行う投票者が大統領選の行方を決める可能性が高まる。
Split Ticket Votingの観点で大統領選はどう見ればいいの?
拮抗している上院選がある州では、Split Ticket Votingの有無が大統領候補の強さの指標となり得る。
具体的には、開票が進むにつれてトランプの得票率が上院選の共和党候補の得票率を下回っていれば、トランプに対して忌避感を持つ共和党支持者の一部の票がハリスに流れていることが示唆される。
Split Ticket Votingの観点では、どの州の上院選に注目すればいいの?
今年の大統領選における7つの「激戦州」のうち、5つで拮抗している上院選がある。アリゾナ州とミシガン州では新人同士の戦い、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ネバダ州では民主党の現職に共和党の新人が挑む。
現職は選挙に強いことから、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ネバダ州では共和党の候補が厳しい戦いを強いられることが想定される。これら州でトランプの得票率が上院選候補の得票率を下回るようなことがあれば、同州においてトランプがだいぶ苦戦していることを意味する。
アリゾナ州は、過激的なトランプ派で前回の知事選において僅差で負けた共和党候補が現職連邦下院議員である民主党候補と競う。上院選の候補とトランプは同じ思想的なので、この州でトランプの得票率が上院選候補を下回っていると、同州におけるトランプの勝利に危険信号が灯る。
ミシガン州は、共和党の元連邦下院議員と民主党の現職連邦下院議員の対決。共和党の候補は特に知名度が高いわけではないので、ここでもトランプの得票率が上院選候補を下回ると、同州におけるトランプ勝利の可能性は低くなる。