アメリカには複数のタイムゾーンがあり投票終了時間や開票の進め方が州ごとに異なる。ここでは各州の開票における注目点について時系列(日本時間)で解説して行く。大統領選の情勢が判明するのは早くて14:00になりそうである。なお、開票日(日本時間の11月6日(水))はこちらでライブブログにて開票の進捗と情勢を解説する予定である。
大統領選の注目点のおさらい
アメリカの大統領選は各州に割り当てられている選挙人の奪い合いである。詳細はこちらを参照されたいが、選挙人は538人いて、その過半数の270人を獲得した候補者が次期大統領となる。
もっとも、大半の州は共和党か民主党の牙城となっており、ドナルド・トランプまたはカマラ・ハリスの勝利が規定事実となっている。よって、実質の戦いは以下13州に限られ、特に「激戦州」に指定されている水色の7州が勝敗を決める。
(カッコ内の数字は各州に割り当てられている選挙人の数)
開票においては主にこれら13州の情勢が注目されるが、下記においては、他に注視される州にも言及している。
なお、開票が進むにつれて気にかけたいのは、郡レベルでの得票率と投票総数に加えて、開票されている票が郵便による票なのか当日の票なのか(つまり、ハリス票なのかトランプ票なのか)である。
8:00〜インディアナ州、ケンタッキー州
インディアナ州とケンタッキー州は2つのタイムゾーンに跨っているため正式な投票終了時間は9:00だが、大半の人が住んでいる地域は8:00に投票時間が終了し、投票が続いている地域があっても開票結果が報告されていく。
どちらの州も共和党の牙城なのでトランプの勝利が想定されている。ただ、インディアナ州の東北とインディアナ州の西は注目されている13州の1つであるオハイオ州に隣接しており、これら地域にはトランプの主要な支持者である白人労働者が多く住んでいる。
2016年の大統領選では、この地域で開票が進むにつれてトランプがクリントンを圧倒していることがトランプ勝利の前兆となった。今回の大統領選においても、この地域でトランプがどれほどの得票率を得られているかが注視される。
9:00〜ジョージア州、フロリダ州、バージニア州
【ジョージア州】
ジョージア州では郵便の票が投票日前に受理でき集計も当日の朝から始められるため、投票時間終了後、速やかに開票の報告が進むことが想定される。最近の法律改正に基づき、投票日前に届いた郵便の票は10:00までに報告されることが義務付けられている。これは投票総数の半数を占めることが想定され、12:30までには90%開票されているはずなので、同州では比較的早くに情勢が判明するかもしれない。
【フロリダ州】
フロリダ州は2つのタイムゾーンに跨っているため正式な投票終了時間は日本時間の10:00だが、大半の人が住んでいる東部は9:00に投票時間が終了し、投票が続いている地域があっても開票結果が報告されていく。同州では郵便の票を投票日前から受理・集計でき、法律上、投票終了時間の30分以内に郵便の票の開票結果を報告することが義務付けられている。郵便の票は投票総数の半数以上を占めることが想定されので、同州の開票はとても早い。
フロリダ州ではトランプが勝利することが想定されているが、世論調査がどれほど正確であるか判断するためにもどのくらいの差でトランプが勝利するか注視される。
【バージニア州】
バージニア州は90年代以降、共和党寄り=>激戦州=>民主党寄りと変化してきた州であり、今回もハリスが快勝することが想定されているため、注目されている州の1つではない。ただ、未だ共和党が強い地域もあり知事選などで共和党が追い上げることもあり、2016年の大統領選では同州でクリントンの当確が出るのが遅かったことが、その後のクリントンの苦戦を示唆していた。今回の大統領選においても、同州でどれほど早くハリスに当確が出るか注視される。
9:30〜ノースカロライナ州、オハイオ州
【ノースカロライナ州】
ノースカロライナ州では郵便の票が投票日前に受理でき集計も当日の朝から始められるため、投票時間終了後、徐々に開票の報告が進む。9:30から11:30の間に投票日前に届いた郵便の票の開票結果が、10:30から15:00の間に当日の票が開票されていく。郵便の票が半数以上を占めるはずなので、同州では比較的早くに情勢が判明するだろう。開票が同じく早いジョージア州を踏まえると、12:00頃にはこちらで解説したハリスの勝利の道のうちどれが残っているか見えてくるかもしれない。
【オハイオ州】
オハイオ州では郵便の票が投票日前に受理でき集計も当日の朝から始められるため、投票時間終了後、徐々に開票の報告が進む。10:15までには投票日前に届いた郵便の票の開票結果が報告されることが想定され、14:00には大半の開票が終了しているはず。同州ではトランプの勝利が想定されていることから、勝利がどれほど早く打たれるかが注視される。
10:00〜ペンシルベニア州、ミシガン州、テキサス州、ニューハンプシャー州
【ミシガン州】
ミシガン州は2つのタイムゾーンに跨っているため正式な投票終了時間は日本時間の11:00だが、大半の人が住んでいる地域は10:00に投票時間が終了し、投票が続いている地域があっても開票結果が報告されていく。最近の法律の改正により郵便の票の受理を投票日前から始められるようになったので、4年前より速やかに開票が進むことが想定され、14:00には最も開票が遅いデトロイト市内でも開票が完了するとされている。ジョージア州、ノースカロライナ州の結果を踏まえると、大統領選の情勢を決定的なものとする州になり得る。
【ペンシルベニア州】
ペンシルベニア州では郵便の票の受理が投票日の朝まで始められないことから、投票時間終了後、集計・開票が大幅に遅れることが想定される。大統領選の行方を決める可能性が極めて高い激戦州だが、同州での結果が分かるのは結構遅くなる可能性が高い。ジョージア州、ノースカロライナ州、ミシガン州で大統領選の情勢が明確にならなければ、ペンシルベニア州の結果を首を長くして待つことになりそうだ。
【テキサス州とニューハンプシャー州】
テキサス州とニューハンプシャー州は開票が遅いので、情勢を判断するには大して参考にならない。
11:00〜ウィスコンシン州、アリゾナ州、ミネソタ州、アイオワ州
【ウィスコンシン州】
ウィスコンシン州では郵便の票の受理が投票日の朝まで始められないことから、投票時間終了後、集計・開票が大幅に遅れることが想定される。15:00には大半の開票が終了しているはずだが、郵便による投票が多ければ同州での情勢が判明するのは結構遅くなるかもしれない。ペンシルベニア州より人口が少ない分開票もより早く終わるはずであるため、大統領選の決め手となるのはペンシルベニア州ではなくウィスコンシン州となる可能性がある。
【アリゾナ州】
アリゾナ州では郵便の票を投票日前から受理・集計できるので理論上は開票が早いはずなのだが、投票時間終了後、開票結果を最初に報告できるのは概ね12:00頃である。また、同州では当日の票の開票作業に時間がかかり、開票結果の報告が19:00までずれ込む可能性がある。さらに、法律上、消印が投票日であっても郵便の票は受理される。2022年の中間選挙ではこれらの票が20%も占めたが、開票されるのに2週間近くかかるため、アリゾナ州の結果が当日判明する可能性は低いかもしれない。
【アイオワ州とミネソタ州】
郵便による票の受理を投票日前から始められるため、開票は概ね14:00までに完了するはずだ。トランプが勝利するはずのアイオワ州では思いの外僅差であるとの世論調査も出ているので、同州における開票結果が注視される。
12:00〜ネバダ州
ネバダ州では郵便による票を投票日前から受理および集計できるので理論上は開票が早いはずなのだが、州の法律上、投票時間が終了してもすべての人が投票を終えるまで開票結果を報告してはならないことになっている(投票終了時間の12:00はあくまで列に並ぶ期限)。実際に開票の報告が始まるのは14:00以降になるため、同州における情勢が分かるのは結構遅くなる。