開票が進むにつれて大統領選の情勢を判断するコツがある。ここでは、選挙の当日、得票率と投票総数のどの点に注目すればいいのかについて解説していく。
どこの得票率に注目すればいいの?
アメリカでは日本の”区”に近い郡(county)レベルで開票結果がされる。郡ごとに前回の大統領選と比較し、共和党・民主党候補の得票率がどう変わっているかを追うことで情勢を判断するのが通常だ。
特に注目したいのが都市郊外におけるカマラ・ハリスの得票率だ。従来、都市郊外は若干共和党寄りだったが、ドナルド・トランプの台頭以降、共和党離れが加速している。4年前の大統領選では、フィラデルフィア市の郊外で得票率を高めたことがジョウ・バイデン大統領の勝利に大きく貢献した。今回、都市郊外でのハリスの得票率が4年前のバイデンを目に見えて上回っていれば、ハリスの勝利の可能性が高まる。
両党の牙城(共和党にとって農村部、民主党にとって都市部)では、得票率に大きな変動は起こらないだろう。ただ、激戦州では数万票で勝敗が決まる。トランプは民主党の大票田である大都市部で惨敗するのが確実だが、(前回ペンシルベニア州のフィラデルフィア郡でそうだったように)4年前の得票率を僅か上げるだけでハリス相手にバイデンのリードに1万票弱食い込むことができ、勝利の可能性が高まる。
また、バラク・オバマが2008年と2012年に2回勝利し、トランプが2016年に勝利したいわゆる転換郡(”pivot counties”)も重要だ。これら郡では、オバマとトランプといったまったく異なるタイプの候補者が勝者になっていることから、今回どちらの候補がどれほどの差で勝利するかが注目される。特に気になるのは、ウィスコンシン州のウィネベーゴ郡(Winnebago County)とケノーシャ群(Kenosha County)、ミシガン州のサギノー郡(Saginaw County)とマコーム郡(Maccomb County)、ペンシルベニア州のノーサンプトン郡(Northampton County)、エリー郡(Erie County)、ルザーン郡(Luzerne County)だ。
投票総数はどのように追えばいいの?
以前解説したとおり、4年前のバイデン大統領の勝利の鍵は、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州それぞれにおいて民主党の牙城で投票総数が大幅に増加したことだった。
開票速報では、開票が進むにつれて”概算した投票総数のうち開票された票の比率(% of estimated vote)”が公表される。この開票率をベースに投票総数が計算できるので、特に人口が多い都市部や都市郊外における投票総数を早期に計算したい。これら地域ではハリスがリードすると思われ、たとえ得票率に大きな変化がなくても、投票総数が増えているだけでハリスはバイデンのリードを数万票拡大することができる。