今年の大統領選で激戦州になっているウィスコンシン州。ここでは、なぜ都市部が同州の中で特に注目されるかについて、2020年と2016年の大統領選のデータをベースに解説して行く。なお、なお、同じく激戦州のミシガン州の分析はこちらを参照されたい。また、ペンシルベニアは後日解説する。
まず、直近の大統領選ではどちらの党がウィスコンシン州で勝利してるの?
2020年は民主党のジョウ・バイデンが2.0万票の差で、2016年は共和党のドナルド・トランプが2.3万票の差で勝利している。それ以前は、バラク・オバマを含めた民主党候補が1988年以降7連勝していた。このため、この州は民主党寄りとみられており、2016年のトランプの勝利は驚きだった。
ウィスコンシン州ではどの地域が重要なの?
特に注目されているのは2つあり、1つ目はオバマが2008年と2012年に2回勝利し、トランプが2016年に勝利した郡(county)だ。全国的に3150ある郡の内、転換郡(”pivot counties”)とも呼ばれるこれら郡は206あり、オバマとトランプといったまったく異なるタイプの候補者が勝利していることから2016年のトランプ当選の象徴となった。
2つ目は、2020年にバイデンの勝利の鍵となり、今回はカマラ・ハリスの勝利のカギを握ると思われる都市部だ。民主党にとって大票田であるこの地域で投票率が上がったことで、バイデンはトランプからウィスコンシン州を奪い返すことができた。
転換郡はどこにあり、今回の大統領選ではどの点が注目されるの?
3つあり、2020年と2016年の選挙の結果は次の通りである。
ウィネベーゴ郡(Winnebago County)、ラシーン群(Racine County)、ケノーシャ群(Kenosha County)がウィスコンシン州における最も人口が多い”転換郡”である。いずれも、オバマが2008年と2012年に2回勝利した後、トランプが2016年と2020年共に勝利しており、このような群は全国的に181ある。
2016年と2020年を比較すると、ウィネベーゴ郡とケノーシャ群でトランプのリードが僅かながら広がっている。これはオバマが勝てていた地域で共和党・トランプ寄りが定着しつつあることを示唆しており、今回の大統領選でもこの傾向が維持されるか注目される。
都市部の群はどこにあり、今回の大統領選ではどの点が注目されるの?
2つあり、2020年と2016年の選挙の結果は次の通りである。
ウィスコンシン州における民主党の大票田は、ミルウォーキー市が所在するミルウォーキー郡(Milwaukee County)とマディソン市(Madison)が所在するデーン郡(Dane County)である。
2020年と2016年を比較すると、この2つの郡でバイデンがクリントンのリードを大きく広げていることがわかる。
クリントンのリード | バイデンのリード | リードの拡大値 | |
ミルウォーキー郡 | 16.3万 | 18.3万 | 2.0万 |
デーン郡 | 14.6万 | 18.1万 | 3.5万 |
合計 | 30.9万 | 36.4万 | 5.5万 |
2016年の大統領選ではトランプが2.3万票の差でウィスコンシン州で勝利したので、2020年のバイデンの勝因はこの2つの郡で5.5万票増やせたためであることが明確だ。
なお、バイデンは2.0万票の差で同州で勝ち、クリントンは2.3万票で負けたので、バイデンは州全体でクリントンより4.3万票増やしている。2つの郡で5.5万票増やしているということは、他の地域で1.2万票減らしていることを意味するので、この2つの郡がなければバイデンは勝てなかった。
バイデンのリードの伸びは得票率と投票率双方の向上による総合効果であることに注目されたい。バイデンはこれら2つの郡でクリントンの得票率を上回ったが、2020年の投票総数が2016年と同数であったと仮定した場合、バイデンのリードは以下になる。
クリントンのリード | バイデンのリード | リードの拡大値 | |
ミルウォーキー郡 | 16.3万 | 16.5万 | 0.2万 |
デーン郡 | 14.6万 | 15.2万 | 0.6万 |
合計 | 30.9万 | 31.7万 | 0.8万 |
つまり、得票率の向上のみでは0.8万票しか増やせず、2016年のトランプの州全体の2.3万票のリードを覆すには遠く及ばない。これらの郡で投票率が上がっていなければバイデンは負けていた。
この2つの郡は今年の選挙でもハリスの勝利の鍵となるが、前回と同様、得票率のみならず投票率も注目される。