2025年4月から5月にかけて2024年大統領選に関する本が3冊立て続けに出版され、ジョウ・バイデン前大統領の健康がこれまで知られていたより遥かに衰えていたことが判明した。ここでは、3冊の本が明らかにした事実の一部を紹介し、なぜ今になってこれら事実が判明したのかやバイデンが大統領としての職務を果たせていたのかなどについて解説していく。
どのような本が出版されたの?
出版されたのは次の3冊で、どれも著者は評判の良い記者であることから、内容は信頼できると考えられる。
- 「闘い:ホワイトハウス奪取をめぐっての想像を絶する闘いの内幕(Fight: Inside the Wildest Battle for the White House)」〜著者ジョナサン・アレン(Jonathan Allen)とエイミー・パーネス(Amie Parnes)
- 「未知の世界:史上最も想像を絶した選挙戦においてトランプがどのようにバイデンとハリスを破り逆境に打ち勝ったか(Uncharted: How Trump Beat Biden, Harris, and the Odds in the Wildest Campaign in History)」〜著者クリス・ウィップル(Chris Whipple)
- 「原罪:バイデン大統領の衰退、その隠蔽、そして再選出馬という悲惨な選択(Original Sins: President Biden’s Decline, Its Cover-Up, and His Disastrous Choice to Run Again)」〜著者ジェイク・タッパー(Jake Tapper)とアレックス・トンプソン(Alex Thompson)
「闘い」と「未知の世界」は2024年大統領選に関する本なのでトランプ側にも焦点を当てているが、「原罪」は主にバイデン大統領に焦点を当てている。
バイデンの体力的な衰退について、どのようなことが書かれているの?
バイデンの体力の衰えについて、以前知られていなかった次のような事実が明らかになっている。
- バイデンは外交で海外を訪問した際に必ずメイクをつけるようにしていて、その習慣によって打ち合わせがキャンセルされることがあった。(「闘い」より)
- バイデンが打ち合わせを行ったりイベントに参加する執務時間は10時〜16時に絞られており、バイデンは夕食を16:30に食べることがあった。(「原罪」より)
- 2024年6月の討論会に先立って行われたリハーサルは早々と打ち切られ、疲労したバイデンは昼寝しに行ってしまった。(「未知の世界」より)
- バイデンが撤退する前の大統領選中、バイデンのスタッフはバイデンが車椅子がないと移動できなくなる可能性について協議し、バイデンが転んでしまうリスクを軽減するため、階段に必ず手すりがあるようにしたり、スニーカーを履くことをバイデンに勧めた。(「原罪」より)
- 2024年6月、ニュージャージー州知事の自宅で開催されたイベントでは、バイデンが歩くべき道を示す蓄光テープが貼られていた。(「闘い」より)
バイデンの認知的問題について、どのようなことが書かれているの?
バイデンの認知的問題については特に「原罪」が多く語っているが、3冊とも以前知られていなかった事実を明かしている。たとえば、
- 2022年、バイデンはホワイトハウスのイベントで交通事故で死亡してしまったジャッキー・ワロルスキー元連邦会員議員(Jackie Walorski)に対して「ジャッキー、来ているか。どこだ」と壇上で声掛けしてしまい、後日その償いとしてワロルスキーの家族をホワイトハウスに招待したものの、バイデンは家族をクローゼットに案内するなど彷徨っていた。(「闘い」より)
- 2022年12月、バイデンは国家安全保障問題担当大統領補佐官だったジェイク・サリバン(Jake Sullivan)を「スティーブ(Steve)」と間違って呼び、ホワイトハウス広報部長だったケイト・ベディングフィールド(Katherine Bedingfield)を「プレス(Press)」と呼んだ。(「原罪」より)
- 2023年4月、バイデンのアイルランドへの訪問に同行したマイク・クウィグリー連邦下院議員(Mike Quigley)は、バイデンを見ながらパーキンソン病で亡くなった父のことを思い出した。(「原罪」より)
- 2023年6月、バイデンはホワイトハウスのイベントで、2020年大統領選の予備選で競合相手だったエリック・スウォルウェル連邦下院議員(Eric Swalwell)を認識できなかった。(「闘い」より)
- 2024年6月の討論会に先立って行われたリハーサルの際、バイデンはもっぱら外国の首脳が彼をどれほど評価しているかしか語らず、2期目にどのような政策を実現するかについて話すことができなかった。(「未知の世界」より)
これらの出来事の多くは、2023年4月にバイデンが正式に再選出馬を表明する前に起きていることが注目に値する。
なぜ今になってこれら事実が判明しているの?
バイデンが現役だった頃にこれら事実が判明しなかったのは、バイデンのスタッフがバイデンを隔離し状況が知れ渡らないようにしていたり、バイデンの状況を目撃した人たちが大統領選への影響を懸念して公言しなかったからだと言える。
たとえば、「未知の世界」の著者であるウィップルは、別の本を書くためにバイデンに取材を申し入れた際に書面で質問を送るよう指示され、対面で取材できなかった。
また、「原罪」の著者であるタッパーとトンプソンは、バイデン政権の閣僚であってもバイデンへのアクセスが制限されていたとし、200人以上の主に民主党支持者に対して取材を行ったが、ほとんどが選挙後、それも匿名でしか取材に応じなかったと言う。
これは「隠蔽」だったの?
3冊ともバイデンの健康に関する事実が意図的に公にされなかったという点については同じ意見だが、「隠蔽」とまで言えるかについては意見が分かれている。
「闘い」の著者アレンとパーネスはバイデンの側近がバイデンの本当の状態を理解できない妄想状態に陥っていたとしており、「未知の世界」の著者ウィップルはバイデンの側近がバイデンが再選しても任期を全うできると信じ切っていたので、事実が隠蔽されていたのではなく誤認されていたのだとしている。
「原罪」のタッパーとトンプソンはこれは隠蔽だったと主張しており、その理由として、隠蔽でなければなぜ側近が把握していたバイデンの状況をアメリカ国民が初めて知るのが2024年6月の討論会だったのかと問うている。
バイデンは大統領としての責務を果たせていたの?
どの本もバイデンが機能不能状態に陥っていたとまでは主張していない。
たとえば、「未知の世界」の著者ウィップルは、バイデンが撤退表明をした朝でも問題なくイスラエル〜ガザ戦争における人質の交換に関して電話会議していたと語っている。
「原罪」のタッパーとトンプソンも「いい時のバイデン」があったと認めるが、2024年に入った頃には閣僚の一部は朝2時に国際的な危機が起こるとバイデンは対応できないのではと懸念していたと言う。
2期目を全うできなかったことが明確なのに、なぜバイデンは再選出馬したの?
「闘い」や「原罪」は、再選出馬に関してバイデンの家族や側近の間で議論がなく、その理由は、どの大統領も2期目の機会が与えられるのが当たり前で、カマラ・ハリス副大統領に対する信頼がなかったからだとしている。
また、共和党の指名候補者が「危険な」ドナルド・トランプであることも既にトランプを破ったことがあるバイデンの判断を後押し、トランプを下すためならバイデンの状況を公にしないことも正当化されていたと言う。