ニュージャージー州・バージニア州知事選とニューヨーク市長選の結果〜トランプ政権に対する不満の現れと来年の連邦下院選での共和党敗北の兆候〜

ニュージャージー州・バージニア州知事選とニューヨーク市長選の結果〜トランプ政権に対する不満の現れと来年の連邦下院選での共和党敗北の兆候〜

2025年11月5日(現地時間)、ニュージャージー州知事選、バージニア州知事選、ニューヨーク市長選の3つの選挙およびカリフォルニア州の住民投票の結果が出た。ここでは、これらの結果がいずれも民主党の勝利となった背景を整理し、ドナルド・トランプ大統領への不満が高まっていること、そして来年の連邦下院選で共和党が敗北する可能性が高まっている点を解説していく。なお、選挙1ヶ月前の情勢についてはこちらを参照。

簡潔にまとめると、どのような選挙結果だったの?

共和党はニュージャージー州とバージニア州の知事選で完敗した。1989年以降、これらの知事選で同じ政党が勝利したことは7回あるが、そのうち6回で同党が翌年の中間選挙でも連邦下院の過半数を獲得している。唯一の例外は、2001年に民主党が両州で勝利したが、翌年の連邦下院選では過半数を奪えなかったケースである。

この歴史的傾向からみて、来年は共和党が下院での過半数を失い、トランプ政権2期目の運営が厳しくなる可能性が極めて高くなった。

ニューヨーク市長選では、社会主義派であることを明言する民主党公認のゾフラン・マムダニ(Zohran Mamdani)が、民主党系無所属の前州知事アンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)を9ポイントの差で破った。世論調査ではもっと差が広がることが想定されていたので、民主党内でも左派候補の支持の広がりに限界があることが示唆された。

ニュージャージー州知事選の結果から何が見えてくるの?

この選挙では、2期務めた民主党の現職が任期制限で再出馬できなかったため、新人同士の戦いとなった。

開票率95%時点で、民主党のミキー・シェリル(Mikie Sherrill)現連邦下院議員が得票率56.2%、共和党のジャック・チャタレリ(Jack Ciattarelli)元州下院議員が得票率43.2%と、13ポイントの差がついた。世論調査の平均の推移を追っているリアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics)によると、投票日直前の時点で両者の差は3.3ポイントだったので、最終結果は予想以上の大差となった。

ニュージャージー州は民主党の牙城だが、チャタレリは4年前の知事選で現職相手に2ポイントまで迫っており、2024年大統領選ではトランプがカマラ・ハリス副大統領に5ポイントまで迫っていた。出口調査によると同州でのトランプの不支持率は55%(支持率42%)に上り、トランプ政権に対して不満を持つ有権者が従来の投票行動に戻ったとみられる。

たとえば、従来民主党を支持するヒスパニック系有権者が多いパサイク郡(Passaic County)。2024年大統領選ではトランプが予想に反してハリスを僅差で上回ったものの、今回の知事選ではシェリルが15ポイントの差でチャタレリを上回った。

バージニア州知事選の結果から何が見えてくるの?

この選挙では、1期務めた共和党現職が任期制限により再出馬できず、新人同士の戦いとなった。

開票率96%時点で、民主党のアビゲイル・スパンバーガー(Abigail Spanberger)前連邦下院議員が得票率57.5%、共和党のウィンソム・アール=シアーズ(Winsome Earle-Sears)現副知事が得票率42.3%と、15ポイントの差がついた。リアル・クリア・ポリティクスによると、投票日直前の時点で両者の差は10.2ポイントだったので、最終結果は概ね想定通りである。

近年のバージニア州は民主党寄りだが、共和党が存在感を示せる州でもある。4年前の知事選では共和党の新人が民主党の元知事を2ポイント差で破っており、2024年の大統領選ではトランプがハリスを5ポイント差まで追い上げた。

アール=シアーズは資金集めに苦戦し、支持が広がらなかったという個人的要因もあった。しかし、知事選と同時に行われた司法長官(Attorney General)の選挙では、過去の暴力発言が問題視された民主党の新人候補が共和党の現職を6ポイントもの差で破っている。このことから、敗因はアール=シアーズ個人にのみあったわけではないと言える。

出口調査によると同州でのトランプの不支持率は58%(支持率39%)で、もっと民主党寄りのニュージャージ州より高い。バージニア州は首都であるワシントンD.C.に隣接しており、多くの連邦政府職員が居住している。連邦政府の閉鎖により連邦政府職員が無給での勤務を強いられており、これがトランプ政権への評価と知事選の結果に影響を及ぼしたと思われる。

ニューヨーク市長選の結果から何が見えてくるの?

この選挙では、1期務めたスキャンダルまみれの民主党の現職が再出馬を断念し、実質的には、民主党の予備選を勝ち抜いたマムダニと同予備選で敗北したクオモ前ニューヨーク州知事の一騎打ちとなった。

開票率91%時点で、マムダニが得票率50.4%、クオモが得票率41.6%と、9ポイントの差がついた。リアル・クリア・ポリティクスによると、投票日直前の時点で両者の差は14.3ポイントだったので、想定されていたより若干差が縮まった。

2024年大統領選で敗北して以降、民主党は中道派と左派の間で党の方向性を巡った対立が深まっていた。マムダニは公営バスの無料化、家賃上昇の凍結、利益を出さない市営スーパーマーケットの設置など、社会主義的な政策を全面的に打ち出していたことから、左寄りのニューヨーク市でどこまで支持が広がるかが注目されていた。

クオモはセクハラ問題でニューヨーク州知事を辞任しており、個人としての人気は極めて低い。にもかかわらずマムダニの勝利は一桁台の差にとどまり、一方でより中道的な候補者がニュージャージー州とバージニア州で圧勝したことから、民主党内の路線対立は決着しなかった。この構図は、2028年の大統領選予備選まで持ち越される可能性が高い。

これら3つの選挙以外に注目すべき投票結果はあるの?

こちらで解説したとおり、共和党はトランプ大統領の主導の下で同党が支配している州において連邦下院選挙区の区割りを見直し、2026年の中間選挙で共和党が獲得できる議席を増やそうとしている。これに対して、民主党は同党が支配している州で区割りを見直して、民主党が獲得できる議席を増やそうとしている。

この民主党の反撃を主導しているのが民主党牙城のカリフォルニア州だが、同州は区割りの権限を独立した委員会に委ねているため、共和党が支配している州と異なり、州議会知事の権限のみでは区割りを見直すことができない。そこで、ギャビン・ニューサム知事(Gavin Newsom)は区割り権限を一時的に州議会へ戻す案を住民投票にかけることにし、結果、開票率71%の時点で、賛成63.8%、反対36.2%と大差で可決された。これによって、2026年の連邦下院選で民主党が勝利する確率がさらに高まった。

ニューサム知事は2028年大統領選への出馬が予測されている。全国に広がりつつある「区割り戦争」で民主党の反撃に大きく貢献したことは、予備選において党支持者から高く評価される可能性がある。

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