バイデン大統領にとって大きな惨憺たる討論会から2週間。討論会後に実施された世論調査も増えてきたので、ここでは7月13日時点の世論調査が誰の勝利を示しているかを解説する。なお、6月13日時点の世論調査の分析はこちらを参照されたい。
今回の大統領選で注目されている州はどこ?
おさらいとなるが、アメリカの大統領選で勝利するためには、各州とワシントン首都(Washington, D.C.)に割り当てられている「選挙人」の過半数を獲得する必要がある。
もっとも、大統領選の行方を決めるのは共和党と民主党の支持が拮抗してる「激戦州」であることから、ここでは次の地図にある7つの「激戦州」(水色)を中心に、その他6つの「注目の州」(オレンジ色)にも触れながら解説していく。(数字は当該州に割り当てられている「選挙人」の数)
これら州を激戦州と注目の州に選んだ背景については、こちらで解説している2024年大統領選の見どころを参照されたい。
【激戦州】
- ジョージア州(Georgia)
- アリゾナ州(Arizona)
- ウィスコンシン州(Wisconsin)
- ペンシルベニア州(Pennsylvania)
- ノースカロライナ州(North Carolina)
- ネバダ州(Nevada)
- ミシガン州(Michigan)
【注目の州】
直近の世論調査はどんな感じなの?
アメリカの世論調査では生データが公開され、リアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics(RCP))と呼ばれるサイトが大半の世論調査の平均の推移を追っている。
そして、7月13日時点のRCPの世論調査の平均では、どの「激戦州」でもトランプがリードしている。
- ジョージア州〜4.0%のトランプのリード(2020年は0.23%のバイデンの勝利)
- アリゾナ州〜5.4%のトランプのリード(2020年は0.31%のバイデンの勝利)
- ウィスコンシン州〜2.6%のトランプのリード(2020年は0.63%のバイデンの勝利)
- ペンシルベニア州〜5.3%のトランプのリード(2020年は1.16%のバイデンの勝利)
- ノースカロライナ州〜5.8%のトランプのリード(2020年は1.35%のトランプの勝利)
- ネバダ州〜5.2%のトランプのリード(2020年は2.39%のバイデンの勝利)
- ミシガン州〜0.6%のトランプのリード(2020年は2.78%のバイデンの勝利)
なお、「注目の州」の世論調査のデータも参考までに記載するが、数ヶ月前の調査も含まれているため、確度が低いことに留意されたい。
- フロリダ州〜7.6%のトランプのリード(2020年は3.36%のトランプの勝利)
- テキサス州〜9.2%のトランプのリード(2020年は5.58%のトランプの勝利)
- ミネソタ州〜3.0%のバイデンのリード(2020年は7.11%のバイデンの勝利)
- ニューハンプシャー州〜3.0%のバイデンのリード(2020年は7.35%のバイデンの勝利)
- オハイオ州〜10.7%のトランプのリード(2020年は8.03%のトランプの勝利)
- アイオワ州〜11.5%のトランプのリード(2020年は8.20%のトランプの勝利)
現状の世論調査を踏まえると、トランプとバイデンのどちらが勝利しそうなの?
こちらで解説したとおり、バイデンは前回負けたノースカロライナ州で今回も負け、前回勝利したネバダ州、ジョージア州、アリゾナ州で今回負けることになっても、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州で踏みとどまれば再選できる。
概ねどの世論調査でもトランプとバイデンの差は許容誤差の範囲内であるため確実にトランプがリードしているとは言い切れない(言い切るべきではない)のだが、バイデンにとって勝利が必須であるウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州でさえ彼はリードできていない。
注目の州であるニューハンプシャー州でも討論会後に実施された唯一の世論調査でトランプがリードしていることを踏まえると、現時点ではトランプが有利であると言えるだろう。
また、大統領支持率の観点でも、通常再選するためには最低40%後半の支持率が必要であると考えられているが、バイデンの支持率の平均は40%未満に落ち込んでいる。
6月13日から世論調査はどう変わったの?
6月27日の討論会でバイデンが惨めな姿をアメリカ全国に晒して以来、討論会後の世論がどう変わるかが注目されてきたが、確実的な変化は起こっていない。
前回解説を行った6月13日と比較すると、アリゾナ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州、ノースカロライナ州、ミシガン州でトランプのリードが1.2%、2.5%、3.0%、0.5%、0.3%広がっており、ジョージア州とネバダ州でトランプのリードが0.8%と0.1%縮まった。
どれも誤差の範囲内であるため統計的に有意な変動とは言えないが、ウィスコンシン州とペンシルベニア州では討論会後に最低4つの世論調査が実施されており、リードが2〜3ポイント拡大していることが注目に値する。
討論会後トランプがリードを広げたとは言い切れないかもしれないが、バイデンが差を縮めてないとは言えるだろう。
ちなみに、党本部や候補が実施し公開されない世論調査では、公表されている世論調査よりバイデンにとって不利な結果になっていると、多くのテレビが報道している。
バイデンをハリスに差し替える交代論が現実味を帯びてきているけど、トランプ対ハリスシナリオの世論調査はどうなの?
トランプ対バイデンとトランプ対ハリスで決定的な違いはない。
あいにく激戦州で討論会後に実施されたトランプ対ハリスの世論調査は乏しく、唯一ウィスコンシン州での世論調査では、トランプ対バイデンが46%-44%でトランプ対ハリスが48%-47%だった。
全国で実施されている世論調査ならより多くのデータがあるが、全国世論調査の平均も似たように決定的ではなく、トランプ対バイデンなら47.4%-44.5%だが、トランプ対ハリスなら48.0%-45.9%である。
ハリスがバイデンより支持されていると言い切れないことが、まだバイデンが撤退に追い込まれていない大きな理由であろう。