カマラ・ハリスが民主党の大統領候補指名を受け、副大統領候補も決まり、前例のない短期決戦の大統領選が本格的に動き始めた。ここでは8月15日時点でハリスの勢いが続いている世論調査を解説する。なお、8月5日時点の世論調査の分析はこちらを参照されたい。
今回の大統領選で注目されている州はどこ?
おさらいとなるが、アメリカの大統領選で勝利するためには、各州とワシントン首都(Washington, D.C.)に割り当てられている「選挙人」の過半数を獲得する必要がある。
もっとも、大統領選の行方を決めるのは共和党と民主党の支持が拮抗してる「激戦州」であることから、ここでは次の地図にある7つの「激戦州」(水色)を中心に、その他6つの「注目の州」(オレンジ色)にも触れながら解説していく。(数字は当該州に割り当てられている「選挙人」の数)
これら州を激戦州と注目の州に選んだ背景については、こちらのハリスにとっての2つの勝利への道の解説を参照されたい。
【激戦州】
- ジョージア州(Georgia)
- アリゾナ州(Arizona)
- ウィスコンシン州(Wisconsin)
- ペンシルベニア州(Pennsylvania)
- ノースカロライナ州(North Carolina)
- ネバダ州(Nevada)
- ミシガン州(Michigan)
【注目の州】
直近の世論調査はどんな感じなの?
アメリカの世論調査では生データが公開され、リアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics(RCP))と呼ばれるサイトが大半の世論調査の平均の推移を追っている。
すべての「激戦州」におけるハリス対トランプの平均(バイデンが撤退した7月21日以降に実施された調査のみを考慮)を前回の数字と撤退時点のバイデンの数字と比較しながら見てみよう。
なお、「注目の州」の世論調査は乏しいので、今回は解説を割愛する。
8月15日時点のハリス対トランプ | 8月5日時点のハリス対トランプ | 撤退時点の バイデン対トランプ | 2020年の結果 | |
ジョージア州 | 0.6%のトランプのリード | 0.8%のトランプのリード | 4.0%のトランプのリード | 0.23%のバイデンの勝利 |
アリゾナ州 | 0.8%のトランプのリード | 1.7%のトランプのリード | 5.8%のトランプのリード | 0.31%のバイデンの勝利 |
ウィスコンシン州 | 1.2%のハリスのリード | 0.3%のハリスのリード | 3.3%のトランプのリード | 0.63%のバイデンの勝利 |
ペンシルベニア州 | 0.2%のトランプのリード | 1.8%のトランプのリード | 4.5%のトランプのリード | 1.16%のバイデンの勝利 |
ノースカロライナ州 | 2.0%のトランプのリード | 2.0%のトランプのリード | 5.7%のトランプのリード | 1.35%のトランプの勝 |
ネバダ州 | 1.3%のトランプのリード | 2.0%のハリスのリード | 5.6%のトランプのリード | 2.39%のバイデンの勝利 |
ミシガン州 | 3.2%のハリスのリード | 3.3%のハリスのリード | 2.1%のトランプのリード | 2.78%のバイデンの勝利 |
現状の世論調査はどう解釈すればいいの?
ハリスがトランプを追い上げているのは一目瞭然だ。特にミシガン州は注目に値し、前回の分析ではBloomberg/MrnConsult社が公表したハリスの11%のリードについて疑義があったが、他の世論調査でもハリスが2%、3%、4%リードしており、同州では実際にハリスがリードを奪った可能性が高い。
また、(許容誤差範囲内であるとはいえ)7つすべての州において少なくとも1つの世論調査がハリスのリードを示している。前回の4つの州から3つ増えているので、ハリスが全国的に勢いを広げているのは間違いないだろう。
なお、前回と同様、ハリスはミシガン州とウィスコンシン州の世論調査の平均でリードしているが、こちらで解説したとおり、この2つの州で勝利するだけでは当選できない。
大統領選はまだ接戦と言えるだろう。
全国的な世論調査はどうなの?
全国的な世論調査はより多くの有権者を調査の対象にしていることから州レベルの調査より確度が高いので、こちらも見てみる。
8月15日時点の平均でハリスはトランプを全国的に0.9%リードしており、8月5日時点の0.8%のトランプのリードをひっくり返した。(バイデンは撤退した時点でトランプに3.1%リードされていた)
なお、民主党はカリフォルニア州やニューヨーク州など人口の多い州で圧勝することから、州レベルで競われる大統領選では勝敗に貢献しない無駄な票を多く発生させる。したがって、ハリスは全国的に数%リードしていないと、州レベルの戦いで確実に負ける。
実際、2020年の大統領選で勝利したバイデンは、全国的の得票率でトランプを4.5%上回ったが、複数の激戦州で1%前後の接戦を制することでなんとか当選している。