2024年大統領選の世論調査の現状⑦〜9日19日時点で混戦が続く〜

2024年大統領選の世論調査の現状⑦〜9日19日時点で混戦が続く〜

ハリスとトランプの討論会も終わり、現地時間の11月5日(火)の投票日まで50日を切った。ここでは混戦状態が続く9月19日時点の世論調査を解説する。なお、8月28日時点の世論調査の分析はこちらを参照されたい。

今回の大統領選で注目されている州はどこ?

おさらいとなるが、アメリカの大統領選で勝利するためには、各州とワシントン首都(Washington, D.C.)に割り当てられている「選挙人」の過半数を獲得する必要がある

もっとも、大統領選の行方を決めるのは共和党と民主党の支持が拮抗してる「激戦州」であることから、ここでは次の地図にある7つの「激戦州」(水色)を中心に、その他6つの「注目の州」(オレンジ色)にも触れながら解説していく。(数字は当該州に割り当てられている「選挙人」の数)

これら州を激戦州と注目の州に選んだ背景については、こちらのハリスにとっての2つの勝利への道の解説を参照されたい。

【激戦州】

  1. ジョージア州(Georgia)
  2. アリゾナ州(Arizona)
  3. ウィスコンシン州(Wisconsin)
  4. ペンシルベニア州(Pennsylvania)
  5. ノースカロライナ州(North Carolina)
  6. ネバダ州(Nevada)
  7. ミシガン州(Michigan)

【注目の州】

  1. フロリダ州(Florida)
  2. テキサス州(Texas)
  3. ミネソタ州(Minnesota)
  4. ニューハンプシャー州(New Hampshire)
  5. オハイオ州(Ohio)
  6. アイオワ州(Iowa)

直近の世論調査はどんな感じなの?

アメリカの世論調査では生データが公開され、リアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics(RCP))と呼ばれるサイトが大半の世論調査の平均の推移を追っている。

すべての「激戦州」におけるハリス対トランプの平均を8月28日時点の平均と比較しながら見てみよう。

9月19日時点8月28日時点2020年の結果
ジョージア州0.7%のトランプのリード1.0%のトランプのリード0.23%のバイデンの勝利
アリゾナ州1.3%のトランプのリード0.5%のトランプのリード0.31%のバイデンの勝利
ウィスコンシン州1.1%のハリスのリード1.0%のハリスのリード0.63%のバイデンの勝利
ペンシルベニア州0.2%のトランプのリード0.2%のトランプのリード1.16%のバイデンの勝利
ノースカロライナ州0.4%のトランプのリード0.9%のトランプのリード1.35%のトランプの勝
ネバダ州0.5%のハリスのリード1.4%のトランプのリード2.39%のバイデンの勝利
ミシガン州1.0%のハリスのリード2.4%のハリスのリード2.78%のバイデンの勝利

「注目の州」の世論調査は乏しいので、9月19時点でバイデン撤退以降に実施された調査の平均とバイデンが撤退した時点の平均と比較しながら見てみよう。

9月19日時点の
ハリス対トランプ
撤退時点の
バイデン対トランプ
2020年の結果
フロリダ州5.0%のトランプのリード6.3%のトランプのリード3.36%のトランプの勝利
テキサス州4.5%のトランプのリード9.2%のトランプのリード5.58%のトランプの勝利
ミネソタ州5.4%のハリスのリード3.0%のバイデンのリード7.11%のバイデンの勝利
ニューハンプシャー州7.7%のハリスのリード3.0%のバイデンのリード7.35%のバイデンの勝利
オハイオ州9.0%のトランプのリード10.7%のトランプのリード8.03%のトランプの勝利
アイオワ州4.0%のトランプのリード11.5%のトランプのリード8.20%のトランプの勝利

現状の世論調査はどう解釈すればいいの?

前回8月28日と比べて、ジョージア州、ウィスコンシン州、ノースカロライナ州、ネバダ州がハリス寄りに、アリゾナ州とミシガン州がトランプ寄りに変動している。ペンシルベニア州はまったく同じの数字だ。

7つの激戦州のうち5つで1%以下の差であることから、許容誤差を考慮すると、大統領選は8月28時点と変わらず混戦状態だと言えるだろう。

数点、注目点を挙げるとすると、

  1. 今のところ、ハリスが”勝利した”とみられている討論会が世論調査に影響を及ぼした気配はない
  2. 激戦州の中で最も共和党寄りであるノースカロライナ州が拮抗していることは、他の激戦州でハリスが有利であろうことを示唆している
  3. ウィスコンシン州ではそこそこのハリスのリード(1.1%)が示されているが、こちらで解説した通り、前回と前々回の大統領選では同州の世論調査は特にトランプを過小評価する傾向にあったので、どこまで信用して良いのか疑義がある
  4. ハリスは(許容誤差範囲内であるとはいえ)ペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州でリードしており、こちらで解説したとおり、この3つの州で実際に勝利できればハリスは当選する

なお、「注目の州」では、すべてにおいてハリスがバイデンより健闘している。これは激戦州で見られる動きが全国的に広がっていることを意味し、驚きはない。

1つ注目点を挙げるとすると、トランプが快勝することが予測されているアイオワ州において極めて、精度が高いDes Moines Register社の世論調査でトランプが4%しかリードしていないことは意外で、他の世論調査での同様の数字が出てくれば、トランプには危険信号が灯る。

全国的な世論調査はどうなの?

全国的な世論調査は、より多くの有権者を調査の対象にしていることから州レベルの調査より確度が高いため、こちらも見てみる。

9月19日時点の平均でハリスはトランプを全国的に2.0%リードしており、8月28日時点の1.5%から若干リードを広げている。

民主党はカリフォルニア州ニューヨーク州など人口の多い州で圧勝することから、州レベルで競われる大統領選では勝敗に貢献しない無駄な票を多く発生させる。したがって、ハリスは全国的に数%リードしていないと、州レベルの戦いで負ける可能性が高い。

実際、2020年の大統領選で勝利したジョウ・バイデンは、全国的の得票率でトランプを4.5%上回ったが複数の激戦州で接戦を制することでなんとか当選し、2016年の大統領選では、ヒラリー・クリントンがトランプを全国的な得票率で2.1%リードしたものの3つの激戦州で接戦を落として落選した。

ハリスの2.0%のリードは2016年のクリントンのリードと同等であり、落選する水準である。

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