トランプ大統領が掲げる「選挙の公正性」〜州政府との対立から読み解くアメリカの選挙制度〜

2026年7月16日(現地時間)、ドナルド・トランプ大統領は11月の中間選挙に先立ち、「選挙の公正性(election integrity)」を政権の最重要課題の一つとして位置付ける全米向けの演説を行った。しかし、アメリカでは大統領選挙や連邦議会選挙であっても実際に選挙を運営するのは州政府であることから、大統領が選挙を完全に管理することはできない。本稿では、トランプ大統領が「選挙の公正性」を前面に打ち出した背景を出発点として、まずアメリカの選挙における州政府と連邦政府の役割分担を整理する。次に、有権者登録名簿をめぐるトランプ政権と州政府の対立を説明した上で、今回の演説と中間選挙との関係、そして日本への影響を解説する。

2026年6月連邦最高裁4判決を比較〜トランプ大統領の勝敗を超えて読み解くアメリカ統治のルール〜

2026年6月29日と30日、連邦最高裁は4つの重要な事件について相次いで判決を言い渡した。

  • 大統領は出生地主義を制限することができるのか=>NO
  • 州は郵送されてきた投票用紙を選挙日以降も集計できるのか=>YES
  • 州は生物学的な男性であるトランスジェンダー選手が女子スポーツに参加することを制限できるのか=>YES
  • 大統領は連邦法上独立性が担保されている行政機関トップを自由に解任できるのか=>YES

これら判決は「トランプ大統領が勝ったか負けたか」の軸で単純に説明できるものではなく、裁判官の投票行動も一般的に言われる「保守派6人対リベラル派3人」だったわけでもない。他方、どの事件でも重要だったのは、「事件の問題を決める権限を持つのはどの機関か」というアメリカの統治の仕組み上の論点であった。本稿では、4つの判決を通して最高裁の判決をどう読めばいいのかを説明する。

政府閉鎖が招く食料支援の混乱〜SNAP給付金をめぐる州とトランプ政権の攻防〜

史上最長となっているアメリカ連邦政府の閉鎖は、食料支援制度「SNAP」の給付金をめぐり、大きな混乱を招いている。トランプ政権が政府閉鎖を理由にSNAP給付金支給の制限を試みた背景、州を通じて給付金が支払われる制度の仕組み、そして裁判所の判断が事態をさらに複雑にしている経緯を解説していく。

予算と運営が複雑なアメリカの社会保険制度と年金制度

アメリカの社会保障制度は、主に公的医療保険であるメディケア(Medicare)とメディケイド(Medicaid)、そして年金制度であるソーシャル・セキュリティ(Social Security)によって構成されている。それぞれの制度の仕組みと運営体制について解説する。