アメリカの社会保障制度は、主に公的医療保険であるメディケア(Medicare)とメディケイド(Medicaid)、そして年金制度であるソーシャル・セキュリティ(Social Security)によって構成されている。それぞれの制度の仕組みと運営体制について解説する。
メディケアとはどのような制度で、どのように運営されているの?
メディケアは、高齢者および障害者を対象としたアメリカ連邦政府の公的医療保険制度であり、主に、入院時の食事や検査費用を補償する入院保険、外来診療や医療機器の費用を補う補完的医療保険、薬剤費を負担する処方箋薬剤給付保険から構成されている。
65歳以上で、アメリカ市民や一定の居住資格を満たす永住者が給付対象となる。65歳未満でも、一定の障害や特定の病気がある人は対象となり得る。2025年時点で、約7000万人が給付を受けており、1人あたりの年間支出は平均約1.7万ドル(約270万円)、総額1.2兆ドル(約190兆円)となっている。
メディケアの財源は、入院保険の場合は、主に雇用主と雇用者に課される給与税で賄われ、補完的医療保険と処方箋薬剤給付保険の場合は、加入者が支払う保険料とアメリカ連邦政府の一般歳出で賄われる。メディケア関連の支出は連邦政府予算の約14%を占め、「義務的支出(mandatory spending)」に分類される。会計年度予算とは別のプロセスで予算が組まれるため、政府が閉鎖しても支出は継続する。
メディケアはアメリカ連邦政府の連邦保健福祉省(Department of Health and Human Services)の公的保険制度運営センター(Centers for Medicare & Medicaid Services)が運営しており、受給者への給付は連邦政府が行う。
メディケイドとはどのような制度で、どのように運営されているの?
アメリカには国民皆保険制度がないため、個人は雇用主を通じて保険に加入するか、自ら医療保険を購入する必要がある。メディケイドは、そのような私的な医療保険に加入することが難しい低所得者を支援する公的医療保険制度である。
メディケイドは連邦政府と州政府の共同の制度である。連邦政府が定める要件のもとで州政府が運営しているため、受給資格や給付内容には全国共通の基準がある一方、受給資格の判定や給付額の決定、そして給付方法は州によって異なる部分も多い。全国では約6600万人が加入しており、2023年度には加入者1人あたり年間平均約9,000ドルが給付に支出されている。メディケアとメディケイドそれぞれの受給資格を満たせば、双方から給付金を受けることができる。
メディケイドの財源は、アメリカ連邦政府と州が共同で負担する。連邦政府は連邦法に基づく計算を用いて州が運営するメディケイド制度の支出の一部を負担し、州は差額を負担する必要がある。メディケイド関連の2024年度の支出の総額は約9600億ドル(約150兆円)で、そのうち約65%の約6200億ドル(約100兆円)を連邦政府が負担している。
メディケイド関係の支出はアメリカ連邦政府の予算の10%を占めており、「義務的支出」に分類される。会計年度予算とは別のプロセスで予算が組まれるため、政府が閉鎖しても支出は継続する。
メディケイド制度は公的保険制度運営センターが監督している。
ソーシャル・セキュリティとはどのような制度で、どのように運営されているの?
ソーシャル・セキュリティは、高齢者、遺族、障害者を対象とする年金制度である。
一定の就労実績を満たす人は62歳から高齢者年金を受給できる。また、一定の就労実績があり、身体的又は精神的な障害によって就労が困難になった人は障害年金の対象となり得る。2025年には、約7000万人が平均約2.3万ドル(約360万円)の給付を受けており、総額約1.6兆ドル(約240兆円)が給付された。
ソーシャル・セキュリティの財源は、主に雇用主と雇用者に課される給与税である。ソーシャル・セキュリティ関連の支出はアメリカ連邦政府の予算の約22%を占めており、「義務的支出」に分類される。会計年度予算とは別のプロセスで予算が組まれるため、政府が閉鎖しても支出は継続する。
ソーシャル・セキュリティはアメリカ連邦政府の社会保障局(Social Security Administration)が運営しており、受給者への給付は連邦政府が行う。