トランプへの忠誠か、検察官としての義務か〜側近の検事が突きつけられた選択〜
ドナルド・トランプ大統領から名指しで「腰砕けになった」と公然と批判され、進退まで取り沙汰されている検事がいる。長年にわたってトランプをテレビで擁護し、第2期トランプ政権で連邦検事長官(U.S. Attorney)に抜擢されたジャニーン・ピロ(Jeanine Pirro)である。きっかけは、リンカーン記念堂(Lincoln Memorial)のリフレクティング・プール(Reflecting Pool)を傷つけたとして元オリンピック選手が起訴された事件で、ピロが訴追を取り下げたことだった。今回の騒動は、政治任用職である連邦検事長官が、トランプ大統領から期待される忠誠と検察官が法廷で負う職業上・倫理上の義務の狭間に置かれたとき、誰に対して忠実でなければならないのかというアメリカの司法制度上の問題を浮き彫りにしている。本稿では、この事件の経緯とピロの判断をたどりながら、連邦検事長官と大統領との関係、検察官が法廷で負う職業上・倫理上の義務、そして日本企業にとっての本事件の意味について解説する。