2024年大統領選で注目される州①〜前回、前々回の結果を踏まえたトランプの勝利の鍵/バイデン大統領の再選への道とは?〜

2024年大統領選で注目される州①〜前回、前々回の結果を踏まえたトランプの勝利の鍵/バイデン大統領の再選への道とは?〜

【こちらはジョウ・バイデン大統領撤退前の分析。民主党候補がカマラ・ハリス副大統領に交代した後の分析はこちらを参照】

2024年11月に実施される大統領選が迫ってきている。今年の大統領選はトランプにとって3回連続の戦いとなり、見どころも前回と前々回と概ね同じになるため、トランプの勝利の鍵/バイデン大統領の再選への道を2016年と2020年の大統領選を振り返りながら解説していく。

大統領選の仕組みのおさらい

アメリカの大統領選で勝利するためには、各州とワシントン首都(Washington, D.C.)に割り当てられている「選挙人」の過半数を獲得する必要がある。選挙人は合計538人いるので、270人以上獲得した候補者が次期大統領となる。

なお、両候補者とも269人の選挙人を獲得した場合、次の大統領は連邦下院が決めることになるが、その採決は各議員1票ではなく各州1票で行われることに注意が必要だ。

2016年大統領選の振り返り

前々回の2016年の大統領選では、共和党のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンを選挙人306対232で破った。

トランプが勝利した州(赤色)とクリントンが勝利した州(青色)を地図で示すと次の通りとなる。メイン州(Maine)は選挙人を連邦下院議員選挙区ごとに割り当てており、クリントンが3人とトランプが1人の選挙人を獲得したためピンク色とした。

選挙人の結果だけを見るとそこそこの差がついたように見えるが、トランプの想定外の勝利の鍵は、0.77%(約2万票)で勝ったウィスコンシン州と0.72%(約5万票)で勝ったペンシルベニア州だった。全国投票数合計1.3億票のうち、7万票が大統領選を決めたと言える。

なお、全国的に見るとトランプが約6300万票獲得しているのに対してクリントンは6600万票獲得しており、総得票数が多いクリントンが負けている。これは、クリントンが人口が多く民主党の牙城であるカリフォルニア州(California)やニューヨーク州(New York)等で圧勝することで死票を積み上げ、肝心な接戦の州で惜敗したことによる。

2020年大統領選の振り返り

前回2020年の大統領選は、民主党のジョウ・バイデンが共和党のドナルド・トランプを選挙人306対232で破り、トランプの再選を阻止した。

バイデンが勝利した州(青色)とトランプが勝利した州(赤色)を地図で示すと次の通りとなる。メイン州に加えてネブラスカ州(Nebraska)も選挙人を連邦下院議員選挙区ごとに割り当てており、ネブラスカ州ではトランプが4人とバイデンが1人、メイン州ではバイデンが3人とトランプが1人の選挙人を獲得したためピンク色とした。

2016年と同様、選挙人の結果はすべてを語っておらず、全国投票数合計1.5億票のうち、4つの州(ジョージア州、アリゾナ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州)における12万票がバイデン勝利の決め手となった。

なお、2024年の大統領選は歴史的にも珍しい前回の再対決となるが、2020年に人口調査が実施されたことに伴い、13の州で選挙人の割当が次の通り見直されている。結果、今回バイデンが前回と同じ州で勝利しても、選挙人の差は303対235に縮まる。

2024年の大統領選における「激戦州」とはどこ?

今年の大統領選の行方を決める「激戦州」は、前回の大統領選で激戦だった州になると思われるため、前回2020年の大統領選で最も差が小さかったトップ10の州を見ていこう。

  1. ジョージア州(Georgia) 0.23% (約1万票差でバイデン勝利)
  2. アリゾナ州(Arizona)0.31% (約1万票差でバイデン勝利)
  3. ウィスコンシン州(Wisconsin) 0.63% (約2万票差でバイデン勝利)
  4. ペンシルベニア州(Pennsylvania) 1.16% (約8万票差でバイデン勝利)
  5. ノースカロライナ州(North Carolina) 1.35% (約7万票差でトランプ勝利)
  6. ネバダ州(Nevada) 2.39% (約3万票差でバイデン勝利)
  7. ミシガン州(Michigan) 2.78% (約15万票差でバイデン勝利)
  8. フロリダ州(Florida) 3.36% (約37万票差でトランプ勝利)
  9. テキサス州(Texas) 5.58% (約63万票差でトランプ勝利)
  10. ミネソタ州(Minnesota) 7.11% (約23万票差でバイデン勝利)

一般的には上記1〜7が「激戦州」と見做されているため、ここでも同様の定義とする。

2024年の大統領選において、他に注目すべき州は?

上記で定義した「激戦州」に加えて、以下6つの州が注目に値する。

  1. フロリダ州〜2000年から2016年までの大統領選で毎回拮抗していた典型的な「激戦州」だが、最近は若干共和党寄りの色が強くなっている
  2. テキサス州〜いずれは民主党寄りの州になると思われているが、まだ共和党寄りである
  3. ミネソタ州〜2016年はトランプがクリントンを1.52%まで追い上げた民主党寄りの州で、ミシガン州やウィスコンシン州と共通する点が多い
  4. ニューハンプシャー州(New Hampshire)〜東北地域で唯一共和党が存在感を示せる州で、2016年は0.37%の僅差でトランプが負けたが、トランプの過激的なスタイルが合わずトランプ離れが加速している
  5. オハイオ州(Ohio)〜2016年までは「激戦州」だったが、トランプの台頭以降共和党の牙城になりつつある
  6. アイオワ州(Iowa)〜オハイオ州と同様、2016年までは「激戦州」だったが、トランプの台頭以降共和党の牙城になりつつある

「激戦州」(水色)と「注目の州」(オレンジ色)を地図で示すと、次の通りとなる。(数字は選挙人の数)

支持率が低迷しているバイデン大統領の再選への道は?

バイデン大統領の支持率は30%後半から40%前半と危険水準に陥っており、再選への道は極めて厳しくなっている。(通常、再選するためには最低40%後半の支持率が必要であると言われている)

バイデンには前回ほどの勢いがないので、前回勝利した州の一部を今回取りこぼすことはほぼ間違いないだろう。

トランプにひっくり返される可能性が最も高いのが、もともと共和党寄りであるジョージア州(選挙人16人)とアリゾナ州(同11人)だ。

さらに、最近の世論調査ではネバダ州(同6人)でトランプがリードしており、その中には誤差の範囲外であるものがある(つまり、統計学的に有意なリードである)

トランプがこれら3つの州をひっくり返すと、選挙人268人を獲得する。当選には270人必要なので、残りの激戦州のうち前回バイデンが勝利したウィスコンシン州(選挙人10人)、ミシガン州(同15人)、ペンシルベニア州(同19人)のうち一つでもトランプがひっくり返せれば、トランプの勝利となる。

よって、今回も前回と前々回と同様にウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州が最も重要な「激戦州」となりそうだ。

選挙人の数が両候補者同数になる可能性はあるの?

想定し難いが、選挙人を下院選挙区ごとに割り当てるネブラスカ州でトランプがもう1人選挙人を獲得すれば、両候補者の選挙人が同数になる可能性がある。

前回の大統領選では、ネブラスカ州の首都であるオマハ市が所在する第2選挙区をバイデンが6.50%の差(約2万票)で勝った。2016年の大統領選ではトランプがこの選挙区を2.24%の差 (約7千票) で勝利しているため、今回の選挙で奪い返す可能性は十分にある。

もしこの選挙区をトランプがひっくり返し、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州のすべてでバイデンが踏みとどまると、両候補者とも選挙人が269人となる。

この場合、上述した通り、次の大統領は連邦下院が(各議員1票ではなく)各州1票による採決で決める。大統領選と同時に実施される連邦下院選挙において民主党が過半数を獲得できても、50州のうち半数以上で共和党所属の下院議員が過半数を占めることがほぼ確実であるため、州単位での採決ではトランプが極めて有利である。

1
0

コメントを残す