11月の大統領選が近づき、公表される世論調査も増えてきた。ここでは、6月13日時点の世論調査を踏まえたバイデン大統領の再選の確率について解説する。
今回の大統領選で注目されている州はどこ?
おさらいとなるが、アメリカの大統領選で勝利するためには、各州とワシントン首都(Washington, D.C.)に割り当てられている「選挙人」の過半数を獲得する必要がある。
もっとも、大統領選の行方を決めるのは共和党と民主党の支持が拮抗してる「激戦州」であることから、ここでは次の地図にある7つの「激戦州」(水色)を中心に、その他6つの「注目の州」(オレンジ色)にも触れながら解説していく。(数字は当該州に割り当てられている「選挙人」の数)
これら州を激戦州と注目の州に選んだ背景については、こちらで解説している2024年大統領選の見どころを参照されたい。
【激戦州】
- ジョージア州(Georgia)
- アリゾナ州(Arizona)
- ウィスコンシン州(Wisconsin)
- ペンシルベニア州(Pennsylvania)
- ノースカロライナ州(North Carolina)
- ネバダ州(Nevada)
- ミシガン州(Michigan)
【注目の州】
直近の世論調査はどんな感じなの?
アメリカの世論調査では生データが公開され、リアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics(RCP))と呼ばれるサイトが大半の世論調査の平均の推移を追っている。
そして、6月13日時点のRCPの世論調査の平均では、どの「激戦州」でもトランプがリードしている。
- ジョージア州〜4.8%のトランプのリード(2020年は0.23%のバイデンの勝利)
- アリゾナ州〜4.2%のトランプのリード(2020年は0.31%のバイデンの勝利)
- ウィスコンシン州〜0.1%のトランプのリード(2020年は0.63%のバイデンの勝利)
- ペンシルベニア州〜2.3%のトランプのリード(2020年は1.16%のバイデンの勝利)
- ノースカロライナ州〜5.3%のトランプのリード(2020年は1.35%のトランプの勝利)
- ネバダ州〜5.3%のトランプのリード(2020年は2.39%のバイデンの勝利)
- ミシガン州〜0.3%のトランプのリード(2020年は2.78%のバイデンの勝利)
概ねどの世論調査でもトランプとバイデンの差は許容誤差の範囲内であるため、トランプが確実にリードしているとは統計的に言い切れない(言い切るべきではない)が、個々の世論調査を見ていくとバイデンがリードしている調査がほぼ無いことが注意に値する。この事実はトランプにとって結構有利と考えられる。2020年を振り返ってみると、激戦州でトランプがリードしている世論調査がほとんど見当たらなかったにもかかわらず、箱を開けてみれば選挙の結果は僅差であった。
なお、「注目の州」の世論調査のデータも参考までに記載するが、数ヶ月前の調査も含まれているため、確度が低いことに留意されたい。
- フロリダ州〜8.0%のトランプのリード(2020年は3.36%のトランプの勝利)
- テキサス州〜9.3%のトランプのリード(2020年は5.58%のトランプの勝利)
- ミネソタ州〜2.3%のバイデンのリード(2020年は7.11%のバイデンの勝利)
- ニューハンプシャー州〜5.3%のバイデンのリード(2020年は7.35%のバイデンの勝利)
- オハイオ州〜10.0%のトランプのリード(2020年は8.03%のトランプの勝利)
- アイオワ州〜11.5%のトランプのリード(2020年は8.20%のトランプの勝利)
また、バージニア州は民主党優勢の州であるため「注目の州」に含んでいないが、最近の世論調査によるとトランプとバイデンが拮抗している。
現状の世論調査を踏まえると、トランプとバイデンのどちらが勝利しそうなの?
支持率が40%と低迷しているバイデンの再選には大きな危険信号が灯っている。(通常、再選するためには最低40%後半の支持率が必要であると言われている)
世論調査によると、激戦州のうち、ネバダ州、ジョージア州、アリゾナ州でトランプがバイデンを最も広くリードしている。共和党が比較的強いこれらの州でバイデンが苦戦することは想定されるが、こちらで解説したとおり、この3つの州を落とすと、バイデンは(トランプからノースカロライナ州等を奪わない限り)ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州で全勝する必要がある。
ちなみに、ノースカロライナ州等はジョージア州より共和党寄りなので、バイデンがジョージア州で負けながらノースカロライナ州等で勝てるシナリオは想定しにくい。ましてや、本来なら楽勝しなければならないバージニア州で本当にトランプに追い上げられているのであれば、バイデンは激戦州全敗、大統領選完敗の恐れがある。
無所属候補として出馬しているロバート・ケネディ二世の影響は?
今回の大統領選では、民主党指名候補であるバイデンと共和党指名候補であるトランプに対するアメリカ国民の不満が高いことから、通常なら注目されない第三極の政党や無所属の候補に注目が集まっている。
特にロバート・ケネディ二世は、無所属候補として出馬しているにも関わらず、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥として抜群な知名度があり、世論調査によると全国的に10%前後の支持を得ている。ケネディの存在によりバイデンの再選またはトランプの当選が妨害される可能性がある。
もっとも、ケネディの名前は民主党内でブランド力がある一方で、彼のワクチン陰謀説等は共和党内のトランプの支持者が共感しそうなところが多いため、トランプとバイデンのどちらの票がケネディに流れているのか定かではない。
実際、バイデンとトランプの一騎打ちシナリオと無所属や第三極の政党の候補を含んだシナリオを同時に調査している世論調査を比較しても、ケネディが含まれることでトランプのリードが広がったり、縮んだり、変わりなかったりと、まちまちである。
そもそも無所属の候補は選挙が近づくにつれて失速する傾向にあるため、選挙が近づかないとケネディ候補の影響を計ることは難しそうだ。