ちょうど2ヶ月後に迫った大統領選〜現状と今後で注目すべき点は?〜

ちょうど2ヶ月後に迫った大統領選〜現状と今後で注目すべき点は?〜

9月に入り、残るイベントは討論会のみとなった大統領選。現地時間11月5日(火)の投票日までちょうど2ヶ月となった時点での現状はどのような感じなのか、そして今後何に注目すればいいのかについて解説する。あわせて「短期決戦となった2024年大統領選の分析(上)〜トランプが勝利する理由〜」と「短期決戦となった2024年大統領選の分析(下)〜ハリスが勝利する理由〜」も参照されたい。

今現在、誰が勝ちそうなの?

世論調査ではカマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領が拮抗しており、どちらが勝利するかまったく読めない状態である。ジョウ・バイデン大統領は撤退するまですべての激戦州でトランプにリードされていたが、民主党の候補がハリスに代わった7月21日以降、ハリスはトランプとの差を縮めた。

ハリスに勢いがあることから下馬評としてはハリスの方が有利とされているが、あくまでバイデンに忌避感を感じていた従来の民主党支持者がハリスに戻ってきただけに過ぎず、彼女が勝利するという確たるデータは乏しい。

現在の対決の構図はどんな感じなの?

バイデンがハリスに代わった直後からあまり変わっておらず、相変わらずハリスは雰囲気で勢いを維持しようとし、トランプはハリスをどう攻めれば良いのか判断しかねている感じだ。

ただ、ハリスとトランプの間で明瞭に論調の違いが見えてきた。トランプは相変わらず現状の権力層に対して怒り溢れており、これまでの民主党はそんなトランプに対する怒りと恐怖が原動力となっていた。だが、ハリスが候補になってからの民主党はより前向きで明るい「喜び(joy)」をテーマに打ち出すようになっており、これは2008年にバラク・オバマ候補のテーマだった「希望(hope)」を思い出させる。

もし投票者がトランプが現れてからのこの8年間の負の感情に飽き飽きしているのであれば、この対比はハリスに有利に働くかもしれない。

で、雰囲気ばかりのハリスに中身はあるの?

大統領選への出馬表明をしてから4週間、投票日まで9週間なのに、ハリスは未だホームページで政策を掲載していない。ハリスに好意的なマスコミでさえ中身の薄さを指摘している。

彼女の数少ない政策に関する発言は不評であった。現地時間の8月16日(金)、ハリスは経済政策の一環として食費の価格つり上げを禁止する政策を発表したが、これは右だけでなく左からも愚策と叩かれた。

また、ハリスは出馬表明から一度も即興なやりとりが求められるインタビューをしていないことが批判の的になっていたが、現地時間の8月29日(木)、やっと副大統領候補のティム・ワルツと共にケーブルテレビニュースチャンネルCNNによる30分のインタビューに応じた。

投票日前に他のインタビューにも応じるのか、定かではない。

トランプ側はどうなの?

トランプ陣営によるハリスへの攻め方として有効なのは、バイデン政権の経済政策と不法移民対策の不備を強調し、それらを現政権の一員であるハリス副大統領に紐づけることだと思われるが、トランプはメッセージを統一できてない。

たとえば、トランプは現地時間の8月15日(木)、ハリスの空気に飲まれてるマスコミの関心を引くために経済政策に関する記者会見を実施したが、冒頭の政策の話は事前に準備した資料の棒読みで、その後の記者との質疑応答ではハリスを愚か者と呼ぶなど個人攻撃を展開するだけだった

トランプ本人が迷走する中、トランプ陣営はテレビやSNSで効果的なCMを流せていて、意外にも副大統領候補のJ・D・バンスがハリスとワルツに対して効果的に攻められている様子だ。

トランプ本人とトランプ陣営の規律に乖離が見られるようになってきており、今後はバンスがトランプの代弁者の役割を担うかもしれない。

候補者同士の討論会はないの?

今後、投票日まで残ってる唯一の大きなイベントが大統領候補と副大統領候補の討論会である。

大統領の討論会は少なくとも1回、現地時間の9月10日(火)に民間放送局であるABCの主催で予定されている。この討論会が前回の候補者撤退というようなインパクトを残すことはあり得ないが、まだほとんど明かされてないハリスの政策やトランプがどのようにハリスを攻めていくかが注目されるだろう。

なお、トランプはもう2回討論会を開催することを提案しているが、ハリスはこれに応じていない。

副大統領の討論会は現地時間の10月1日(火)に民間放送局であるCBSの主催で予定されている。副大統領討論会が大統領選に影響を及ぼした例はないが、特に民主党候補のワルツは未知数なので、一定の投票者の関心を引くかもしれない。

今後は何に注目すればいいの?

主に3つある。

1つ目は、世論調査の行方だ。この先、ハリスが勢いを維持するのか、それともハリスの勢いに翳りが見えてくるのかで、ハリスの戦略が大きく変わりそうだ。空気・雰囲気だけでは当選できないとハリスが判断したら、しっかりした政策を発表し、多くのインタビューや記者会見に応じることになるだろう。それはボロが出る機会も増えることを意味する。

2つ目は、トランプ本人が今後しっかりした選挙活動を展開できるかだ。トランプは既得権に対して変化をもたらすと約束して当選したが、今となってはハリスの方が新鮮度があり、トランプは今のやり方を軌道修正しないと、マスコミに煽られてるハリスに埋没しかねない。

3つ目は、サプライズがあるかだ。大統領選の投票日が11月の最初の火曜日にあることから、終盤になって起こる想定外の出来事は「10月のサプライズ ”October Surprise”)と呼ばれる。サプライズは、(過去の逮捕歴の発覚など)大統領候補に関することもあれば、(戦争の勃発など)大統領選とはなんら関係のないこともあり得る。ちなみに、トランプは現地時間の9月18日に「口止め支払い事件」で判決を受けることが予定されているが、これはすでに織り込み済みなので、サプライズとはならない。

投票はいつ始まるの?

全国統一の投票日は11月4日(火)。

だが、概ねどの州でも期日前投票することができ、それが始まるタイミングは州によって異なる。一番早いのは偶然にも最大の激戦州と言えるペンシルベニアで、9月16日から始まる。そこから、(激戦州だけをみると)アリゾナ州の10月9日、ジョージア州の10月15日と続く。

また、どの州でも郵便で投票をすることができ、投票用紙が送付されるタイミングは州によって異なる。一番早いのは(激戦州だけをみると)ノースカロライナ州の9月6日で、そこからペンシルベニア州の9月16日、ウィスコンシン州の9月20日と続く。

つまり、有権者が投票を始めるまで、もうあとわずかなのである。

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