現地時間の1月3日(金)の国会の開会と共に連邦下院が第一にやらなければならないことが議長の選任。ここでは、これがすんなりにいかないと思われる理由とトランプ大統領への影響について解説していく。
議長選定の背景は?
定数435人の連邦下院議院では11月の選挙で全議員が改選を迎え、結果、共和党が220議席、民主党が215を席獲得した。選挙後、トランプが司法長官に指名(その後自ら辞退)したマット・ゲイツ(Matt Gaetz)が(再選したものの)議員への就任を辞退すると表明したことから、開会時点での共和党の議席数は219議席となる。
つまり共和党は1議席の過半数しかなく、造反者を2名以上出すと下院議長を選定できない。党が一致団結すればこれは問題とならないが、最近の共和党は、野党民主党の協力なしには円滑な議会運営ができないほど深刻な分断状態に陥っている。
共和党はいつからどれほど分断しているの?
共和党の亀裂は15年前のティーパーティー運動(Tea Party movement)に遡るが、その深刻度が表面化されたのは2年前である。
2022年の中間選挙で共和党は僅差で過半数を獲得した。2023年1月3日に始まった国会では、議長選定の表決で同党所属の議員20人が造反したため、当時の共和党下院議員団のトップだったケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)はなかなか議長に選定されなかった。結局、マッカーシーは4日に渡って造反組と交渉を重ね、多く譲歩した結果、15回目の表決でなんとか議長に選定された。
このように苦労して議長になれたマッカーシーは、9ヶ月後の2023年10月3日、党内の反乱によりあっけなく解任されてしまった。
この前代未聞の出来事に共和党は迷走。後任選びにおいては、党内重鎮が手を挙げては支持を得られずに撤退することが続き、現在の議長であるマイク・ジョンソン(Mike Johnson)に白羽の矢が立った時には3週間以上経っていた。
ジョンソンが議長として再任される見込みは?
昨年末、つなぎ予算案をめぐって下院の共和党が迷走したことで、ジョンソンへの再任に疑問符が付いた。
既にトマス・マッシー議員(Thomas Massie)はジョンソン不支持を表明している。
その他、ジョンソンへの支持を明示的に保留している議員が4人おり、潜在的な「造反待機組」が他に10人弱いる。このうち1人がジョンソン以外に投票する、または2人が欠席・棄権すれば、ジョンソンは再任されない。
議長が選任されないとどうなるの?
院内規定上、下院では議長が就任するまで何もできないことになっており、議長が決まるまで表決は繰り返される。2年前は、マッカーシーへの票が足りない状態であるにもかかかわらず表決を続けざるを得ないという滑稽な場面が4日間も続いた。
議長が選定されないとトランプの就任にも影響を及ぼしかねない。
法律上、大統領選の結果は現地時間1月6日に連邦上院と連邦下院で承認される必要がある。(4年前の1月6日に議会が襲撃されたのはこの手続きが行われていたからである)
ところが、下院議員は議長が選定されるまで就任できないため、6日までに議長の表決に決着がつかないと、下院不在となり大統領選の結果が承認できなくなってしまう。
トランプの考えは?
現地時間の2024年12月30日(月)、トランプはジョンソンへの支持を明言した。
トランプからすると、下院で議長が選任されないと自分の勝利も承認されないし、(法案成立のためには議会の承認が必要であることから)自分の政策を推し進めることもできないので、議長の選定で共和党が迷走しても困るだけなのだ。
で、結局、議長の選定はどうなるの?
1回目の表決でジョンソンが選定されない可能性は十分にあるが、2〜3日以内にはジョンソンが再任されるであろう。
理由は2つある。
1つ目は、2年前と違って、今回迷走すると自党の大統領であるトランプに迷惑がかかるからだ。
2つ目は、ジョンソンの代わりとなる人材がいないためだ。議長を選定しないわけにはいかず、たった16ヶ月前の議長解任騒動でジョンソン以外の候補者では党がまとまらないことが明らかになったため、代替案を提示できない造反組は上げた拳を下さざるを得なくなるだろう。