ジョンソン 下院議長の再任〜トランプ政権にとっては厳しい船出〜

ジョンソン 下院議長の再任〜トランプ政権にとっては厳しい船出〜

マイク・ジョンソン(Mike Johnson)は現地時間の1月3日(金)に1回目の表決で連邦下院の議長に再任できたが、表決において一悶着なかったわけではない。ここでは、ジョンソンがどのような経緯で選定され、その経緯がなぜトランプにとっての厳しい政権運営を示唆しているかを解説していく。

議長はどのような経緯で決まったの?

事前の予測では複数の表決を経てジョンソンが議長に選定されると思われたが、ジョンソンは予想を覆して1回目の表決で再任された。

ただ、すべてがスムーズに進んだわけではない。

表決にはロール・コール方式が採用された。これは各議員の名前がアルファベット順に呼ばれ、議員がそれぞれ口頭で投票先を述べる方式である。

今回のロール・コールでは、当初、共和党所属議員の3人がジョンソン以外の議員に投票した他、6人が最初の呼びかけを意図的に無視し、2度目に名前が呼ばれた時にジョンソンへの投票を表明した。

ここで表決終了が宣言されていれば、(共和党から2人以上の造反者が出たため)ジョンソンは1回目の表決で選定されないことが確定したのだが、ジョンソンは表決終了が宣言されないようにした。

その後、ジョンソンは造反者3人のうち自分への支持の余地がある2人と協議し、結果、その2人が投票先をジョンソンに変更した後表決終了が宣言され、ジョンソンが議長に選定された。

ジョンソン選定の経緯はどのように解釈すればいいの?

正式には1回の表決でジョンソンの選定が決まったが、経緯を踏まえると、これは複数回の表決が必要だったと考えるのが適切だろう。

当初の呼びかけに対してジョンソン不支持を表明した又は呼びかけを無視した9人は、16ヶ月前の議長解任のような迷走劇を起こすことなく、ジョンソンへの不満を明示することができた。

この「9人」という数字は重要な意味を持つ。下院は議長選定と共に本国会で適用される院内規程を承認しており、当該院内規程の中では、議長解任の議案の提出に9人の賛同者が必要とされている。

共和党は1議席の過半数しか有していないので、この9人が議長解任の議案を提出し野党の民主党が全員賛成すると、ジョンソンは議長を解任されてしまう。つまりこの9人は、議長表決での行為を通して「我々はいつでもジョンソンを解任できるぞ」と揺さぶりをかけたのである。

9人はジョンソンにどのような不満を持ってるの?

民主党への妥協により共和党の政策が十分推し進められていない、というのが最大の不満であり、その代表例が年末のつなぎ予算案であった。

彼らの一部は表決後にジョンソンへの要求を連名で公表し、共和党内で十分支持されておらず民主党の支持がないと可決されない法案は提案しないよう求めた。

トランプは表決に関与したの?

トランプは事前にジョンソン支持を表明していた。

当初のロール・コールでジョンソン不支持を表明した議員が現れると、トランプは彼らに電話を掛け、ジョンソン以外に過半数を獲得できる議員はいないのでジョンソンを支持するよう働きかけた。

この結果はジョンソンにとってどのような意味を持つの?

正式には1回の表決で選定されたので、ジョンソンにとってこれ以上の結果は望めなかっただろう。

重要なことに、ジョンソンは当初造反した2人の支持を得るにあたり、なんら妥協することはなかった。これは2年前の議長表決において、20人の造反者を説得するために多数の譲歩を強いられたケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)の状況と大きく異なる。

また、新しい院内規程で議長解任議案の提出には9人の賛同者が必要になったことも大きい。マッカーシーは造反者を説得するためにこの閾値を1人にすることを認めてしまい、結局はそれが9ヶ月後の解任につながった。

トランプの政権運営への影響は?

トランプの希望どおりジョンソンが議長に就任できたからといって、トランプ政権の下の議会運営がスムーズに進むことが保証されたわけではない。

重要なのは、連邦上院の存在だ。共和党は連邦上院でも過半数を有しているが60議席には達してないため、野党民主党が審議を停滞させるフィリバスターを阻止することができない立法プロセス上、これは民主党の協力がないと法案が成立しないことを意味するが、共和党の造反待機組が一番嫌うのが超党派なので、ジョンソンが上院での可決のために民主党と連携すればするほど党内の反乱の確率が高まる。

予算案はフィリバスターを回避することができるので、共和党は上院でも民主党の協力なしに可決できる。ただ、造反待機組の多くは予算および債務上限の引き上げに支出削減が伴うことを要求している。支出削減について共和党内をまとめるのは至難の技である。

この課題がまさに年末のつなぎ予算のドタバタの背景にあり、これはトランプが大統領になっても解消されない。つなぎ予算は2025年3月14日に期限を迎え、債務上限は2025年6月頃に達する。

トランプ政権は、政府閉鎖アメリカ政府の債務不履行(デフォルト)といった2つの喫緊の火種を抱えた中での船出となる。

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