大統領選では共和党のドナルド・トランプが勝利したが、これはトランプの個人的な勝利であり党としての勝利ではなかった。そう言い切れる理由について、同時に実施された連邦上院選の結果をベースに解説していく。
簡潔に言うと、なぜトランプの勝利は共和党の勝利ではないの?
大統領選と同時に連邦上院議員の1/3と下院議員の全員が改選を迎えたが、連邦議員の選挙で共和党はトランプのような勝利を収められなかったからだ。
今回の大統領選でトランプは7つの激戦州すべてを制するだけでなく、共和党候補として20年ぶりに全国的得票数で民主党候補を上回るほどの快勝を収めた。
通常、大統領候補がここまで快勝すると同じ政党に所属している上院選候補や下院選候補も彼の人気にあやかって勝利するが、今回は、激戦州で実施された上院選で共和党候補が競い負けるのが目立った。また、下院選では共和党が議席数微増で何とか過半数を維持した。
連邦議員の選挙で共和党がトランプほど勝利できなかったことから、今回の大統領選は共和党の勝利ではなくトランプ個人の勝利であったと言える。
激戦州で上院選の共和党候補はどれほどトランプの得票数を下回ったの?
今回の大統領選では7つの激戦州が注目されたが、そのうち5つで上院選も実施された。
次の表がそれら5つの州におけるトランプと上院選の共和党候補の得票数およびその差を示している。
ミシガン州 | ペンシルベニア州 | ウィスコンシン州 | アリゾナ州 | ネバダ州 | |
トランプ | 282万 | 354万 | 170万 | 177万 | 75万 |
共和党上院候補 | 270万 | 334万 | 164万 | 160万 | 68万 |
差 | 12万 | 20万 | 6万 | 17万 | 7万 |
すべての州でトランプが上院選候補を数万票から数十万票上回った。上院選で共和党候補が勝利できたのはペンシルベニア州のみであり、共和党候補がトランプと同数の票を得ていれば、すべての州で共和党が上院選で勝利していた。
さらに、アリゾナ州以外では、上院選における投票総数が大統領選における投票総数をだいぶ下回った。つまり、上院選で共和党候補が負けたのは、大統領選でトランプに投票しながら上院選で民主党候補に投票したSplit ticket votingが多かったからではなく、単に、大統領選でトランプに投票しながら上院選では誰にも投票しなかった投票者が一定数いたからである。
なぜ2016年の上院選の結果と比較するとトランプの人気が高まっていると言えるの?
トランプが初当選した8年前は、上記5つの州のうち4つで上院選が実施されていた。
次の表がそれら州におけるトランプと上院選の共和党候補の得票数およびその差を示している。
ペンシルベニア州 | ウィスコンシン州 | アリゾナ州 | ネバダ州 | |
トランプ | 297万 | 141万 | 125万 | 51万 |
共和党上院候補 | 295万 | 148万 | 136万 | 50万 |
差 | 2万 | -7万 | -11万 | 1万 |
2つの州ではトランプの得票数が上院候補の得票数を下回っており、残りの州ではトランプがわずかに上院候補を上回っていた。これは2016年の選挙ではトランプが上院選の共和党候補の足を引っ張っていたと言えることを示している。
言い方を変えると、8年前はトランプより共和党の方がブランド力が強かったが、8年後にはそれが逆転した。