年末に連鎖したトランプへの反旗〜支持者・共和党・司法で進む求心力低下〜

年末に連鎖したトランプへの反旗〜支持者・共和党・司法で進む求心力低下〜

2025年の11月から12月にかけて、ドナルド・トランプ大統領は政権発足直後には見られなかった種類の政治的摩擦に相次いで直面している。ここでは、支持者・共和党内・司法といった、これまで政権を支えてきたはずの領域から生じている最近相次いだ4つの出来事を整理し、日本企業への影響を解説していく。

エプスタイン・ファイル公開をめぐって、トランプ政権はどのような批判に晒されているの?

アメリカ連邦議会は11月、未成年の少女を性的に搾取していた富豪ジェフリー・エプスタインに関連する文書、いわゆる「エプスタイン・ファイル」の公開を連邦司法省に求める法律を可決させた。トランプ大統領はこの法律に断固として反対していたが、法案がほぼ全会一致で可決されることが確実になると、一転して賛成に回った。

文書を公開する期限は12月19日だったものの、司法省はその日までに一部しか公開しなかった。また、公開された多くの文書は黒塗りされていた。法律は全面的な公開を求めており、黒塗りについても被害者保護など極めて限定的な理由でしか認められていないため、司法省は法律を遵守していないと広く批判されている。

司法省は期限後も数回にわたってエプスタイン・ファイルを公開しており、今後も公開は続くとみられる。一方で、期限を守らず随時公開する姿勢や、明らかに法律では認められていない黒塗りがなされていることは、トランプ大統領としては沈静化を図りたいとみられる「エプスタイン・ファイル」問題を、かえって長期化させている。

エプスタイン・ファイルの公開はトランプ支持者が強く求めていることであり、問題が長引けば長引くほど、熱心なトランプ支持者の間で不満が蓄積し、トランプ大統領の支持基盤は弱まっていく。

インディアナ州議会は連邦下院選挙区割りをめぐって、どのようにトランプ大統領に反発したの?

夏にトランプ大統領がテキサス州に働きかけて火をつけた「連邦下院選挙区割り戦争」は、その後全国に広がった。アメリカでは州が連邦下院の選挙区を定めるため、トランプ大統領は、共和党が州議会知事職を支配している州において、共和党に有利になるよう区割りを操作する、いわゆる「ゲリーマンダー(gerrymander)」を実現しようとしたのである。

8月にテキサス州が共和党に有利な区割りの再編を行った後、ミズーリ州ノースカロライナ州が続いたが、12月11日(現地時間)、インディアナ州は共和党が多数を占める州上院で、共和党に有利になる連邦下院選挙区割り案を31対19で否決した。

州上院の構成は共和党40議席・民主党10議席であるため、通常であれば共和党が提案した法案が否決されることはない。トランプ大統領は最後まで法律を可決するようSNSなどで訴え、反対を表明した共和党州議員の一部はトランプ支持者から爆弾脅迫の予告を受けていた。にもかかわらず共和党から21人もの造反者が出たことは、トランプ大統領の求心力に翳りが出てきていることを浮き彫りにした。

連邦最高裁はどのようにトランプ大統領によるシカゴ市への州兵派遣に歯止めをかけたの?

トランプ大統領は10月、平時は知事の指揮下で州の任務に就いているテキサス州の州兵を連邦化(federalize)し、イリノイ州のシカゴ市周辺に派遣させた。「連邦化」とは大統領が州兵を連邦政府の任務に就かせると宣言することであり、連邦化された州兵は大統領の指揮下で連邦政府の陸軍の一部として活動する。

連邦第一審裁判所はこの派遣を差し止め、12月23日(現地時間)、連邦最高裁はこの差し止めを支持した

トランプ大統領は、「正規軍を以って連邦法を執行できない場合」に州兵を連邦化できると定めている連邦法に基づいて、テキサス州の州兵を連邦化していた。最高裁に対してトランプ政権は、「正規軍(regular forces)」には移民税関捜査局(Immigration and Customs Enforcement)といった行政機関も含まれると主張したが、最高裁はこの表現は連邦政府の軍隊を意味するとし、6対3でトランプ政権の主張を退けた。現在の最高裁はトランプ寄りの裁判官が6人いると考えられているが、そのうち3人がトランプに反対を突きつけたこととなる。

最高裁のこの判断は、公開の口頭弁論や詳細な意見書を伴わない「シャドウ・ドケット」にて行われていることが注目に値する。第2期トランプ政権の発足以降、この「シャドウ・ドケット」を通じて、トランプ政権に有利な判断が相次いできたことが問題視されていた。しかし、ここにきて最高裁はシャドウ・ドケットを通してトランプ政権に歯止めをかけた。

共和党内の一部の議員はなぜ医療補助金法案をめぐって造反したの?

もともと、医療補助金は9月の政府閉鎖のきっかけとなった政治的争点であった。当時の民主党所属の連邦上院議員はつなぎ予算に医療補助金が含まれることを求めて政府を閉鎖したが、それを勝ち取れないことが明確になると、民主党の上院議員の一部は11月、医療補助金法案が12月中に表決されることを条件につなぎ予算に賛成した

この医療補助金の法案が共和党にとって火種となっている。共和党が過半数を占める連邦下院では、マイク・ジョンソン議長(Speaker Mike Johnson)が法案を審議することを拒否。ところが、12月17日(現地時間)、議長を通さず本会議審議に持ち込める手続きであるディスチャージ・ピティション(discharge petition)に対して、民主党議員全員と共和党連邦下院議員4人が賛成し、法案は本会議に付されることになった。

造反した共和党議員4人は、共和党牙城の選挙区選出ではない。共和党は今年の連邦下院の補選で苦戦していることから、4人とも来年の中間選挙での再選が危ぶまれている。2026年1月1日から医療保険料が急増するため、たとえ法案が連邦上院で否決されることが確実でも、この4人は選挙に向けて有権者にアピールする必要があったとみられる。

2025年は異常な数のディスチャージ・ピティションが成立している。そもそもディスチャージ・ピティションは少数政党が強制的に法案を審議させるために用いる手段であることから、成立する見込みは低い。実際、1985年から2025年までの40年間で、ディスチャージ・ピティションが成立したのは14回に過ぎない。ところが、そのうち5件が今年起きており、その1つがエプスタイン・ファイルの公開をめぐるものであった。

共和党はぎりぎり過半数を維持しているため、ジョンソンは議長に再任した1月から厳しい議会運営を強いられることが想定されていたが、12月に入って急激に求心力を失っている。ジョンソンはトランプ大統領と常に足並みを揃えているので、ジョンソンへの反発はトランプへの反発と同じ意味を持つと考えられる。

これら動向の日本企業への影響は?

日本企業にとって重要なのは、どれもが単なる民主党による対抗ではなく、共和党内部、州議会、連邦司法などがそれぞれ独立した判断を行い、トランプ大統領による政権運営が思惑通りに進んでいない事例であることだ。別の言い方をすれば、来年の中間選挙を待たずして、トランプ大統領によるアメリカ政府に対する支配が目に見えて弱まっている。

特に司法の動きは重要だ。現在、最高裁は国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくトランプ関税について合憲性を審査しており、夏の口頭弁論では、トランプ政権の主張に対して否定的な意見を述べる判事が多かった。州兵の派遣に関する判断は、トランプ寄りの最高裁と言えどもトランプに対抗することに躊躇しないことが改めて確認されたと言える。

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