2026年11月3日(現地時間)の中間選挙では、連邦議会選だけでなく、大半の州で知事選が行われ、州議会も約8割の議席が改選される。ここでは、まず州議会選の結果が連邦政治にも影響する理由と共和党が多くの州政府を支配している背景を解説する。そのうえで、共和党が長く州政府を支配してきた州で競争性が高まる知事選や、わずか数議席で多数党が変わる州議会選など、州の選挙に注目して2026年中間選挙を見ていく。なお、連邦上院の情勢はこちら、連邦下院の情勢はこちらをそれぞれ参照。
中間選挙で知事と州議員はどれほど改選されるのか
11月3日の中間選挙では、36州で知事選が行われる。現在、50州の知事の内訳は共和党26人、民主党24人であり、このうち2026年に改選される36州では、共和党と民主党がそれぞれ18人である。
州議会では、さらに大規模な選挙が行われる。全50州の州議会を構成する99議院のうち88議院で選挙があり、46州で合計6,139議席が通常選挙の対象となり、これは全米7,386議席の約83%にあたる。2026年10月4日時点の州議会の現有議席は、共和党が4,068議席、民主党が3,253議席となっている。
連邦制のアメリカでは、教育、選挙制度、州税、銃規制、人工妊娠中絶など、州が大きな権限を持つ分野が多い。そのため、州選挙もアメリカ政治を見るうえで重要である。
なぜ州議会選は連邦政治の観点でも重要なのか
州議会は、州の政策を決めるだけでなく、連邦政治にも影響を及ぼす。
たとえば、州議会はより大きな公職を目指す政治家が経験を積み、知名度や政治基盤を築く場でもある。現在、連邦議員535人のうち251人(47%)が州議会議員経験者である。
さらに、州議会が連邦政治に直接影響する代表的な仕組みが、連邦下院選挙区の区割りである。選挙区は10年に一度の国勢調査の後に引き直されるが、その区割りを決める権限は基本的に州にあり、多くの州では州議会が中心的な役割を担う。州議会で多数派を占める政党が自党に有利になるよう区割りを操作すれば、その後の連邦下院選挙でも優位を維持しやすくなる。
実際、2010年に共和党が州議会で大きく議席を増やした結果、その直後の区割りで共和党が強い影響力を持った。2011年の区割りで共和党側が173の連邦下院選挙区の線引きを主導したことで、2012年の連邦下院選では共和党が旧区割りの場合より11議席多く獲得できた。
州政府ではどれほど一党支配が広がっているのか
現在のアメリカでは、有権者が大統領選と連邦議会選で同じ政党の候補に投票する傾向が強まっており、その傾向は州レベルでも見られる。
二院制を採用する49州のうち45州(92%)では、州議会の両院を同じ政党が支配しており、内訳は共和党が27州、民主党が18州と、共和党の方が多い。ネブラスカ州(Nebraska)は一院制であるため、この統計の対象外である。アラスカ州(Alaska)では共和党が両院で過半数を獲得しているものの、超党派連合が議会を支配しているため、一党支配には数えていない。
さらに知事まで考慮すると、全50州のうち39州(78%)で一党支配となっており、内訳は共和党が23州、民主党が16州である。ネブラスカ州は知事と州議会がともに共和党側にあるため、共和党の23州に含めた。
共和党が民主党より多くの州議会の議院を支配する状態は16年間続いている。きっかけは、オバマ政権で初めて行われた2010年中間選挙で民主党が惨敗したことにある。共和党はこの選挙で全米の州議会において675議席を増やし、州議会両院を支配する州を一気に14州から26州に増やした。
知事選はどれほど大統領選と異なる結果になるのか
知事選では、有権者が候補者個人の実績や知名度、州固有の政策課題を考慮する傾向がある。そのため、大統領選や連邦議会選では一方の政党が圧倒的に優勢な州でも、知事選ではもう一方の候補が勝利することがある。
最も分かりやすい例がバーモント州(Vermont)である。2024年の大統領選では民主党のカマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領が31%の差で同州で圧勝したが、同時に行われた知事選では、共和党現職のフィル・スコット(Phil Scott)が51%の差で民主党候補を圧倒した。
他にも、民主党の牙城であるメリーランド州(Maryland)とマサチューセッツ州(Massachusetts)では、共和党のラリー・ホーガン(Larry Hogan)とチャーリー・ベイカー(Charlie Baker)が、それぞれ2014年に当選して2018年に再選している。
逆に、共和党の牙城では、ケンタッキー州(Kentucky)で民主党のアンディ・ベシア(Andy Beshear)が2019年に当選して2023年に再選しており、カンザス州(Kansas)でもローラ・ケリー(Laura Kelly)が2018年に当選して2022年に再選した。
州政府の一党支配の観点では、どの州の知事選が特に注目されるのか
テキサス州(Texas)では、共和党現職のグレッグ・アボット(Greg Abbott)が4期目を目指しているが、民主党の州下院議員ジーナ・ヒノホサ(Gina Hinojosa)との選挙戦が思いの外接戦になっている。同州では2003年以来、共和党が知事と州議会両院を支配する一党支配が続いており、2026年の州議会選でも共和党による州議会両院の支配が継続する可能性が高い。そのため、20年以上続く共和党の一党支配が維持されるかどうかは、知事選の結果にかかっている。
知事選で大きな争点として浮上しているのが、AIの普及に伴って急増するデータセンターである。テキサス州ではデータセンターの建設計画が相次ぎ、電力網への負担、電気料金、水使用などへの懸念が強まっている。アボットは2026年9月に新たなデータセンターに対する許認可を停止する措置を取ったが、従来からデータセンター投資を歓迎してきた経緯もあり、データセンター問題がアボットの再選に影を落としている。
ウィスコンシン州(Wisconsin)では、民主党のミルウォーキー郡行政長官デイビッド・クロウリー(Milwaukee Country Executive David Crowley)と共和党の連邦下院議員トム・ティファニー(Tom Tiffany)が接戦を繰り広げている。現在、同州では知事が民主党所属である一方、州議会両院は共和党が支配している。ティファニーが知事選に勝ち、共和党が州議会両院の多数を維持すれば、共和党の一党支配が成立する。他方、民主党が州下院で5議席、州上院で2議席を増やせば両院で過半数を獲得でき、そのうえでクロウリーが知事選に勝てば、民主党の一党支配が成立する。
クロウリーは民主党の予備選で一度は撤退したものの、民主社会主義の候補が勝利することを懸念した民主党主流派に促されて選挙戦に復帰したという異例の経緯を辿っている。民主党主流派の期待どおりクロウリーが予備選で勝利したことで、同州での民主党の一党支配の可能性が高まっている。
州政府の一党支配の観点では、どの州の州議会選が特に注目されるのか
ミネソタ州(Minnesota)では、州議会が完全に拮抗している。州下院134議席は民主党と共和党が67議席ずつ持ち、州上院も民主党34議席、共和党33議席と1議席差しかない。州下院選で均衡が崩れればそれだけで一方の党が単独多数となるし、州上院で共和党が1議席を増やせれば多数党が変わる。また、知事選では民主党候補が極めて優勢であるため、民主党が下院で1議席を増やして上院で現状を維持できれば、民主党の一党支配が成立する。
ペンシルベニア州(Pennsylvania)では、民主党が州下院を103対100で支配する一方、共和党が州上院を27対23で支配している。州下院では共和党が2議席を増やせれば多数党が変わり、州上院では民主党が3議席を増やせれば多数党となる。また、知事選では民主党現職が極めて優勢であるため、民主党が下院で現状を維持しながら上院で3議席を増やせれば、民主党の一党支配が成立する。
州選挙を取り巻く全国的な情勢はどのようなものなのか
トランプ大統領の支持率は30%台にまで下落しており、共和党に対する逆風が州レベルの選挙にも影響を及ぼしている。
たとえば、バーモント州では、共和党のスコットが2022年と2024年の知事選で70%を超える得票率で再選したにもかかわらず、今回は民主党候補に追い上げられている。またフロリダ州(Florida)では、共和党の現職連邦下院議員バイロン・ドナルズ(Byron Donalds)と共和党から民主党に移籍した元連邦下院議員デイビッド・ジョリー(David Jolly)の知事選が、従来より競争性が高まっている。
州議会選でも、民主党より共和党の方が多くの議院で多数派を守る立場にある。選挙分析機関のサバトズ・クリスタル・ボール(Sabato’s Crystal Ball)は9議院の支配の行方を五分五分と見ており、そのうち共和党が支配しているのは、ウィスコンシン州の両院を含む6議院である。
連邦上院選と連邦下院選で民主党が優勢に選挙戦を進める中、州選挙でも民主党に勢いが見られる。