アメリカ政府閉鎖1か月〜終わらない対立と給与なしで働く政府職員〜

アメリカ政府閉鎖1か月〜終わらない対立と給与なしで働く政府職員〜

2025年10月1日(現地時間)に始まったアメリカ連邦政府の閉鎖は今週で1ヶ月目を迎える。ここでは、政府閉鎖の現状や閉鎖中も続く国民サービス、トランプ政権が閉鎖を利用して進める連邦職員の人員削減の背景、そして閉鎖が終了する可能性のある要因について解説していく。

政府閉鎖の現状は?

10月1日はアメリカ連邦政府の新会計年度の始まりだったが、新年度予算も暫定的なつなぎ予算(継続予算決議=Continuing Resolution、以下CR)も成立せず、多くの行政機能や公共サービスが停止した。

共和党は9月下旬に、11月21日(現地時間)まで前年度水準での支出を維持するCRを下院で通過させた。しかし連邦上院には奇妙な審議の仕組みがあり、CRを通過させるには60票の賛成が必要だ。共和党は連邦上院で100議席中53議席しか有していないため、10月21日(現地時間)時点で12回も採決が行われたが、いずれも可決に至らなかった。

今回の政府閉鎖は、27日時点で既に2018〜2019年の35日間の閉鎖に次ぐ、アメリカ史上2番目に長い政府閉鎖となっており、今後、最長となる可能性が極めて高い。

CR成立に向けた交渉はどうなっているの?

共和党が提案しているCRはいわゆる「クリーンCR」であり、既存の政策を変えずに前年度の水準を延長するつなぎ予算である。これに対して民主党は、医療補助金の復活を条件としてCRの修正を求めており、妥協する気配はない。

CRを成立させるためには立法プロセスを経る必要があるため、CRを修正する場合、連邦下院とトランプ大統領の協力が必要となる。

だが、連邦下院はクリーンCRを通過させた9月20日(現地時間)以降休会状態であり、マイク・ジョンソン下院議長は議会を招集する意思を示していない。また、トランプ大統領は10月21日、民主党がクリーンCRに賛成するまで民主党と交渉しないと発言した。

政府閉鎖中、どのような行政サービスの提供が続いているの?

政府閉鎖が発生すると、継続される行政サービスと一時停止されるサービスは予算の種類によって異なる。

まず、「義務的支出(mandatory spending)」に該当するサービスは会計年度予算とは別のプロセスで予算が組まれるため、政府閉鎖の対象とならない。年金と公的医療保険が義務的支出の大半を占め、これら制度に関連してサービスを提供している連邦政府職員は政府閉鎖中も給与が支払われる。

次に、「裁量支出(discretionary spending)」に該当するサービスを提供する職員は、「生命・財産の保護」のために必要なエッセンシャル(essential)職員とそれ以外の職員に分けられる。前者は、政府閉鎖中、給与なしに勤務を継続することが求められる。後者は、政府閉鎖中、休職(furlough)扱いとなる。

国防・軍事、空港の航空管制、国境警備などに関連する職員がエッセンシャル職員に該当するが、具体的に誰が対象となるかは、各省がアメリカ合衆国行政管理予算局(Office of Management and Budget、通称OMB)の指示・指針のもとで判断する。各省及びOMBは行政機関として大統領の傘下にあるので、トランプ大統領が「エッセンシャル職員」の対象を決められると言える。

なお、連邦上院の共和党所属議員は10月23日(現地時間)、勤務を継続しているエッセンシャル職員に対して政府再開を待たずに給与を支払うための法案を提出したが、賛成56票にとどまり可決に必要な60票を下回って否決された。たとえ可決していたとしても、休会中の連邦下院を通過する必要があったため、成立する可能性は低かった。

なぜ一部の職員は休職扱いではなく解雇されているの?

トランプ政権は今回の政府閉鎖を、連邦政府のスリム化を進める好機と捉えているためだ。

トランプ大統領は民主党を支持する職員を標的に人員削減すると発言しており、トランプ政権は10月10日(現地時間)、4000人の職員に対して正式な人員削減(Reduction in Force、通称「RIF」)の手続きを開始した。保健福祉省(Department of Health and Human Services)や財務省(Department of the Treasury)の他、イーロン・マスク(Elon Musk)主導の下で人員削減が進められていた教育省(Department of Education)も対象となっている。

政府閉鎖を世論はどう見ているの?

世論調査によると、世間はトランプ大統領、共和党の連邦議員、民主党の連邦議員それぞれに政府閉鎖に関して一定の責任があるとしている。

たとえば、AP-NORCの10月中旬の調査では、トランプ大統領および共和党の連邦議員に責任があると答えたのは58%で、民主党の連邦議員に責任があると回答したのは54%だった。また、Quinnipiacの10月下旬の調査では、45%が共和党、39%が民主党に責任があると回答しており、無党派層に限定すると、48%が共和党、32%が民主党に責任があると回答した。

過去の政府閉鎖では、クリーンCRを拒否した党が非難される傾向があったが、今回は修正を求める民主党の方が世論の支持を受けている。一方、共和党も一定の支持を得ているため、両党とも姿勢を変えるには至っていない。

この先、何が政府閉鎖を終了させるきっかけになり得るの?

11月1日(現地時間)には医療保険制度(いわゆるオバマケア)における保険料改定の通知が出される予定であり、民主党はこれが世論を動かして共和党を交渉の場に引き込むと踏んでいる。民主党が求めている医療補助金がないと、保険料が大きく上昇すると見られているためだ。

また、連邦下院で可決され、現在連邦上院の可決を待っている共和党案のクリーンCRは11月21日までのつなぎ予算でしかない。よって、11月下旬までには共和党が支配している連邦下院も新たなCRを可決する必要が出てくるため、その期限が共和党と民主党が交渉するきっかけになる可能性がある。

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