2026年連邦上院選の情勢②〜民主党が奪取を狙う中心的な3議席〜

2026年連邦上院選の情勢②〜民主党が奪取を狙う中心的な3議席〜

2026年11月3日(現地時間)の中間選挙まで1カ月半を切った。民主党が連邦上院で多数派を獲得するには共和党から少なくとも4議席を奪う必要がある。本稿では、民主党が議席奪取を狙う中心的な3議席(テキサス州(Texas)、メイン州(Maine)、ノースカロライナ州(North Carolina)の情勢をみていく。

民主党が多数派を得る道のりはどのようなものなのか

年初には極めて困難とみられていた民主党の多数派奪還だが、トランプ大統領の支持率は40%前後と低迷しているため、現実的な可能性として視野に入ってきている。

第1回では、2026年連邦上院選で民主党が多数派を得る可能性が高まった背景に加えて、民主党の現有議席(ミシガン州(Michigan)、ニューハンプシャー州(New Hampshire)、ジョージア州(Georgia))の情勢を見た

今回は視点を共和党の現有議席に移し、民主党が狙う中心的な3州であるテキサス州、メイン州、ノースカロライナ州を見ていく。このうち、テキサス州とノースカロライナ州は2024年大統領選で共和党のドナルド・トランプが勝利した州である。近年のアメリカでは大統領選と連邦上院選の結果が一致する傾向が強くなっているため、民主党がこの2州で勝利を収めるのは決して簡単ではない。

前回と同様、今回も候補者や州の事情、世論調査、選挙分析機関の評価を基に整理していく。世論調査は許容誤差などがあることを踏まえ、1つの調査に依拠するのではなく、リアルクリアポーリング(RealClearPolling)の平均を参照する。また、情勢分析はクック・ポリティカル・リポート(Cook Political Report)インサイド・エレクションズ(Inside Elections)サバトズ・クリスタル・ボール(Sabato’s Crystal Ball)を共通の基準とする。

スキャンダルまみれの共和党候補者が格好の機会を与えているテキサス州

テキサス州では、共和党の州司法長官(Texas Attorney General)ケン・パクストン(Ken Paxton)と、民主党の州下院議員ジェームズ・タラリコ(James Talarico)が争っている。4期務めた現職のジョン・コーニン(John Cornyn)は共和党予備選でパクストンに惨敗した。パクストンは2015年から州司法長官を務め、これまで州全体の選挙で3回勝っている。タラリコは2018年から州下院議員を務めており、今回が初めての州全体選挙となる。

2024年大統領選ではトランプが14%の差でテキサスを制した。2020年と2016年もトランプが一桁台の差で勝利しているため、共和党が連勝している。

2024年大統領選と同時に行われた連邦上院選では、共和党の現職が民主党の連邦下院議員を約9%差で破った。テキサス州では、連邦上院選に限らず州全体の選挙で民主党が1994年以来一度も勝てておらず、今回取り上げる3州の中でも共和党の基盤の強さが最もはっきりしている州である。

ところが、世論調査は30年ぶりの民主党勝利の可能性を示している。リアルクリアポーリングの9月21日時点の平均は、タラリコ47.6%、パクストン45.0%で、タラリコが2.6%上回っている。8月以降の調査ではタラリコが先行する結果が大半で、特定の1つの調査が平均を大きく押し上げている状況ではない。クック・ポリティカル・リポートとサバトズ・クリスタル・ボールはこの選挙を接戦(Toss Up)、インサイド・エレクションズは共和党やや優勢(Leans Republican)としている。

世論調査の数字がどれほど異例かは、2018年の連邦上院選と比べると分かりやすい。当時、民主党のベト・オルーク(Beto O’Rourke)連邦下院議員は共和党の現職に2.6%差まで迫ったが、選挙直前のリアルクリアポーリングの平均では共和党現職が6.8%上回っており、オルークが先行している結果は1つもなかった。今回、タラリコが平均だけでなく多数の世論調査でリードしていること自体、タラリコの勝利が現実的であることを示している。

基盤が強いはずのテキサス州で共和党が大きく苦戦している背景には、パクストン本人の候補者としての資質の問題が大きい。パクストンは州司法長官の選挙で多数勝利している実績を持つ一方で、長年にわたって法的・倫理的な問題を抱えてきた。2015年に証券詐欺の容疑で起訴され、2020年には贈収賄の疑いでアメリカ連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation、FBI)に捜査された。2023年にテキサス州下院によって弾劾されたものの、州上院で有罪に必要な票数に届かず職にとどまった。

タラリコは、このパクストンの弱点を突く戦略をとっている。全国的に民主党は共和党候補者を不人気なトランプ大統領に紐づける戦略をとっているが、テキサス州では、トランプよりパクストン本人を取り上げる広告の方が多い。さらにタラリコは、神学校で神学を学び牧師を目指しているという、テキサス州で民主党候補として戦うために有利に働く経歴を有している。約3分の2がキリスト教徒で、宗教を生活上「非常に重要」と考える人が多いテキサス州で、宗教的な言葉を自身の信仰や経歴に根ざして語れることは、一般的な民主党候補とは異なる特徴である。

この選挙は全国的に注目されており、それがタラリコの選挙資金の調達に大きく貢献している。2026年第2四半期にタラリコは3,000万ドル(約47億円)を超える資金を調達した。一方のパクストンは、過去の選挙でも資金調達に苦労しており、同時期の調達額は約900万ドル(約14億円)にとどまった。6月末時点の手元資金も、タラリコの約2,150万ドル(約34億円)に対し、パクストンは約176万ドル(約2.8億円)で、10倍を超える差がついていた。この差を補うように共和党系の外部政治団体が広告支援を大幅に増やしており、9月1~18日だけでもパクストンを支援する広告に6,200万ドル(約98億円)を超える資金が投じられている

パクストンの弱点とタラリコの候補者としての特徴が重なったことで、共和党が四半世紀以上連勝してきたテキサス州が2026年連邦上院選の行方を左右する主要な戦場となっている。

共和党候補の個人票が焦点となるメイン州

メイン州では、共和党現職のスーザン・コリンズ(Susan Collins)に、民主党のトロイ・ジャクソン(Troy Jackson)が挑戦する。コリンズは1997年から連邦上院議員を務め、今回で6期目を目指す。民主党では6月の予備選でグラハム・プラトナー(Graham Platner)が勝利したが、その後レイプ疑惑が浮上したことで撤退し、元州上院議長のジャクソンが後継候補に選ばれた。

メイン州は州内の政治的な地域差が大きい。ポートランドを含む南部を中心とする連邦下院第1選挙区では民主党が強く、北部の広い農村地域を含む連邦下院第2選挙区では共和党が強い。2024年大統領選では、第1選挙区で民主党のカマラ・ハリス(Kamala Harris)が22%差でトランプを圧倒したものの、第2選挙区ではトランプが9%差でリードした。州全体ではハリスが7%差で勝利している。

この政治的な構造の中で、コリンズは長年、共和党支持層を超えて票を獲得してきた。2020年大統領選では民主党のジョウ・バイデン(Joe Biden)が約9%差で勝つ一方、同時に行われた連邦上院選ではコリンズが約9%差で勝利した。2つの選挙では、民主・共和の得票差に18%もの開きが生じたことになる。

世論調査は、今回も接戦になることを示している。リアルクリアポーリングの9月21日時点の平均は、ジャクソン47.2%、コリンズ45.4%で、ジャクソンが1.8%上回っている。また、選挙分析機関も3つともがこの選挙を接戦としている。

2026年の選挙は2020年と似た構造である。州全体では民主党が強く、全国的にもトランプへの逆風がある中で、コリンズは今回もトランプ政権と距離を置く戦略を取っている。メイン州と経済的な結び付きが強いカナダとの関税問題では、政権の関税政策を繰り返し批判している。2020年にコリンズが大統領選とは大きく異なる結果を出せた背景には、長年上院議員を務める中で築いてきた個人的な人気があった。

もっとも、今回の民主党候補には2020年と違う特徴がある。ジャクソンは州北部出身の林業労働者で、長く州議会で活動していた。コリンズも同じ地域の出身であり、北部メインを自らの政治的な基盤としている。2024年にトランプが勝った連邦下院第2選挙区にルーツを持つジャクソンが、民主党が強い南部の票を維持しながら北部でコリンズの優位をどこまで削れるかが、今回の選挙を見るうえで重要なポイントになる。

一方で、ジャクソンは7月下旬になって急きょ連邦上院候補となったため、本選候補として州全体で選挙運動を行える期間は約3カ月しかない。ジャクソンは連邦上院選と同時に行われる州知事選の民主党予備選にも出馬したが、3位に終わっている。全州規模で選挙運動をした経験はあるが、予備選を勝ち抜いたわけではなく、高い知名度があるとは言えない。

6月に行われた世論調査では、メイン州の有権者の54%が連邦上院で民主党が多数派を獲得することを望んでいた。前回の2020年の連邦上院選でも同じような構造で、選挙戦終盤の世論調査で民主党候補が4〜6%リードしており、コリンズが先行していた調査は1つもなかった。今回も、世論調査が把握していない可能性がある「コリンズ個人票」をコリンズがどこまで集められるかが大きなポイントになる。

前知事出馬によって民主党が奪う可能性が高いノースカロライナ州

ノースカロライナ州では、共和党現職の引退により空席となる議席をめぐって、民主党の前州知事ロイ・クーパー(Roy Cooper)と共和党のマイケル・ワットリー(Michael Whatley)が争っている。クーパーは2001年から2017年まで州司法長官(North Carolina Attorney General)、2017年から2025年まで州知事を務めた。ワットリーは2024年から2025年まで共和党全国委員会(Republican National Committee)の委員長を務めたが、今回が初めての公職選挙となる。

2024年大統領選では、トランプが約3%の差でノースカロライナ州を制した。2020年も2016年もトランプが僅差で勝利しているが、クーパーが州知事選で2度勝利しているように、民主党候補が州全体の選挙で勝つことも多い。

世論調査は、民主党が共和党からこの議席を奪う可能性が高いことを示している。リアルクリアポーリングの9月21日時点の平均は、クーパー49.3%、ワットリー41.0%で、クーパーが8.3ポイント上回っている。3つの選挙分析機関も、全てが民主党やや優勢(Leans Democratic)か民主党寄り(Tilts Democratic)と評価している。

現在の情勢には候補者の競争力の差が大きく表れている。クーパーは、2016年にトランプが大統領選で同州を制する中、共和党の現職知事を破って州知事に当選し、4年後も大統領選でトランプが同州を制する中、州知事に再選された。一方のワットリーは共和党組織の運営経験は豊富だが、公職選挙における候補者としての経験不足が否めない。

ノースカロライナ州は民主党が共和党から奪える可能性が最も高い議席である。

民主党にとってのこの3州の重要性とは

テキサス州、メイン州、ノースカロライナ州では民主党が勝てる条件が揃っているので、もし1つでも落とすことがあれば、連邦上院多数派奪還への道は相当遠のく。

たとえこの3州すべてを民主党が奪えても純増は3議席で、上院の多数派奪還にはもう1議席が必要である。しかも、第1回で見た現有議席を失えば必要な奪取数はさらに増え、ミシガン州を失えば5議席、ニューハンプシャー州も失えば6議席を共和党から奪う必要が出てくる。さらには、民主党所属であるペンシルベニア州連邦上院議員のジョン・フェッターマン(John Fetterman)が民主党と異なる投票をしかねないことを考慮すると、民主党としては51議席ぎりぎりではなく、できるだけ議席を積み上げたいところである。

民主党にとって問題となるのが、4議席目あるいはその先の5議席目、6議席目をどこで取るかである。次の第3回では、共和党の基盤がより強いものの、民主党が奪える可能性が高まっているアラスカ州(Alaska)オハイオ州(Ohio)アイオワ州(Iowa)の3州を見ていく。

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