2026年連邦上院選の情勢③〜民主党の奪取が視野に入った共和党基盤の3議席〜

2026年連邦上院選の情勢③〜民主党の奪取が視野に入った共和党基盤の3議席〜

2026年11月3日(現地時間)の中間選挙まで1カ月半を切った。民主党が連邦上院で多数派を獲得するには共和党から少なくとも4議席を奪う必要がある。本稿では、共和党の基盤が強いものの民主党による議席奪取が視野に入った3議席(アラスカ州(Alaska)、オハイオ州(Ohio)、アイオワ州(Iowa))の情勢をみていく。

民主党が多数派を得る道のりはどのようなものなのか

年初には極めて困難とみられていた民主党の多数派奪還だが、トランプ大統領の支持率は40%前後と低迷しているため、現実的な可能性として視野に入ってきている。

第1回では、2026年連邦上院選で民主党が多数派を得る可能性が高まった背景に加えて、民主党の現有議席(ミシガン州(Michigan)、ニューハンプシャー州(New Hampshire)、ジョージア州(Georgia))の情勢を見た第2回では、民主党が議席奪取を狙う中心的な議席(テキサス州(Texas)、メイン州(Maine)、ノースカロライナ州(North Carolina)の情勢を見た

今回は、共和党の基盤がより強いものの民主党が奪える可能性が高まっているアラスカ州、オハイオ州、アイオワ州を見ていく。どの州も2024年大統領選で共和党のドナルド・トランプが10%以上の差で勝利した州である。近年のアメリカでは大統領選と連邦上院選の結果が一致する傾向が強くなっているため、民主党がこの3州で勝利を収めるのは極めてハードルが高い。

前回と同様、今回も候補者や州の事情、世論調査、選挙分析機関の評価を基に整理していく。世論調査は許容誤差などがあることを踏まえ、1つの調査に依拠するのではなく、リアルクリアポーリング(RealClearPolling)の平均を参照する。また、情勢分析はクック・ポリティカル・リポート(Cook Political Report)インサイド・エレクションズ(Inside Elections)サバトズ・クリスタル・ボール(Sabato’s Crystal Ball)を共通の基準とする。

最有力候補の出馬によって民主党の勝利の可能性が出てきたアラスカ州

アラスカ州では、共和党現職のダン・サリバン(Dan Sullivan)に、民主党の前連邦下院議員メアリー・ペルトラ(Mary Peltola)が挑戦する。サリバンは2014年に初当選し、2020年に再選された2期目の現職である。ペルトラは2022年から2025年までアラスカ州選出の連邦下院議員を務めた。

2024年大統領選では、トランプが13%の差でアラスカ州を制した。2020年と2016年もトランプが二桁台の差で勝利しているため、共和党が連勝している。

2022年の連邦上院選では、共和党の現職が民主党の候補者を圧倒しており、2020年はサリバン自身が13%の差で勝っている。

だが、世論調査は接戦を示している。リアルクリアポーリングの9月22日時点の平均は、ペルトラ50.0%、サリバン48.3%で、ペルトラが1.7%上回っている。もっとも、アラスカ州の世論調査の数字は他州以上に幅を持って見る必要があることに注意が必要である。同州は人口が少ないうえ広大であるため、通常の調査では一部の地域や有権者を十分に捉えることが難しい。直近の2つの調査では、ペルトラが6%先行しているものとサリバンが3%先行しているものがあり、結果が分かれた。また、選挙分析機関のうち、クック・ポリティカル・リポートとサバトズ・クリスタル・ボールはこの選挙を接戦(Toss Up)、インサイド・エレクションズは共和党寄りとしている(Tilt Republican)。

民主党にとって大きかったのは、アラスカ州で最も競争力のある候補であるペルトラが出馬したことである。アラスカ州の連邦下院選挙区は州全体で1区しかないため、連邦下院選も連邦上院選と同じく州全体の有権者を相手にする。ペルトラは2022年の補欠選挙で、元知事で2008年大統領選の共和党副大統領候補だったサラ・ペイリン(Sarah Palin)を破って当選し、同年11月の通常選挙でも再びペイリンを破った。2024年には共和党の候補者に敗れたものの、最終的な差は約2%だった。同じ2024年に大統領選ではトランプがバイデン相手に13%の差をつけたことを考えると、ペルトラは民主党支持層を大きく上回る票を集められる候補であることが分かる。

サリバンは2期務める現職で、前回選挙も二桁差で勝っており、大きな弱点を抱えているわけではない。それでも選挙が接戦になっていること自体が、共和党にとって2026年の政治環境が厳しくなっていることを示している。

なお、アラスカ州の連邦上院選では独特な選挙の仕組みが採用されている。まず、党派を問わない予備選が実施され、上位4人が本選に進む。そして本選挙では優先順位付投票制が使われ、有権者は候補者に順位を付ける。第1順位票で過半数を取る候補がいなければ、最下位の候補を落とし、その票を次順位の候補へ移して過半数に達するまで集計を続けるという仕組みである。

2026年8月に行われた予備選ではペルトラが49.5%を獲得して1位になり、サリバンが41.4%と続いた。予備選で3位に入ったのは、現職のダン・サリバンと名前が類似しているダニエル・J・サリバン(Daniel J. Sullivan)で、2.5%獲得している。仮に予備選の得票割合が本選挙の第1順位票でもそのまま再現されるとすれば、ペルトラは過半数まであと0.5ポイントしかないので、ダニエル・J・サリバンを支持する有権者の2割強がペルトラを第2順位に選ぶだけでも、ペルトラが過半数に達して当選する計算となる。

前職の出馬が民主党に勝利の可能性をもたらすオハイオ州

オハイオ州では、共和党現職のジョン・ハステッド(Jon Husted)に、民主党の前連邦上院議員シャロッド・ブラウン(Sherrod Brown)が挑戦する。今回の選挙は、JDバンス(JD Vance)が副大統領に就任して連邦上院議員を辞職したことに伴う特別選挙である。ハステッドは2025年1月に後任として任命され、今回はバンスの残りの任期をめぐって初めて連邦上院選を戦う。一方のブラウンは、2007年から2025年まで3期にわたって連邦上院議員を務め、2024年に再選を目指して敗れたばかりである。

2024年大統領選では、トランプが11%の差でオハイオ州を制した。2020年と2016年もトランプが一桁台の差で勝利しているが、従来は民主党と共和党が拮抗していたため、トランプ台頭によって共和党が強くなった代表的な州である。

2024年大統領選と同時に行われた連邦上院選では、共和党の候補者がブラウンを4%差で破っている。2022年の連邦上院選では、当時新人だったバンスが6%の差で民主党候補を破った。

今回の選挙は接戦である。リアルクリアポーリングの9月22日時点の平均は、ブラウン48.3%、ハステッド43.5%で、ブラウンが4.8%上回っている。また、選挙分析機関も3つともがこの選挙を接戦としている。

トランプの台頭による共和党化が進む州で、ブラウンは製造業や労働組合を重視する経済政策を長年政治的なブランドとしてきたため、州内の労働者層に独自の支持基盤を持つ。2024年連邦上院選でブラウンは敗れたものの、大統領選での民主党候補だったカマラ・ハリス(Kamala Harris)の敗北幅より約8%小さかった。一定数の有権者が、大統領選では共和党のトランプ、連邦上院選では民主党のブラウンに投票するという、近年では珍しくなったスプリット・チケット投票(split-ticket voting)を行ったことがわかる。

ハステッドは州務長官(Ohio Secretary of State)の選挙で2回当選しており、州全体の選挙を勝ち抜いてきた経験がある。また、副知事でもあったため、十分な知名度を有している。ブラウンほどの経験はないが、候補者としての資質は決して悪くない。

民主党候補として勝てる特徴を有するブラウンが出馬したことが、アラスカ州と同じく、オハイオ州でも民主党が議席を奪う可能性を生んだ。オハイオ州におけるトランプ大統領の不支持率は60%と極めて高い。トランプ大統領への厳しい評価を追い風に、ブラウンが2024年連邦上院選の時より共和党支持者や無党派層からの票を少しだけでも伸ばせるかが勝利の鍵となる。

トランプ政権への厳しい評価が想定外の勝利の可能性をもたらしているアイオワ州

アイオワ州では、共和党現職の引退により空席となる議席をめぐって、共和党の現職連邦下院議員アシュリー・ヒンソン(Ashley Hinson)と民主党の州下院議員ジョシュ・トゥレック(Josh Turek)が争っている。ヒンソンは2021年から連邦下院議員を務め、今回が初めての州全体選挙となる。トゥレックは2023年から州下院議員を務めており、こちらも州全体選挙は初めてである。

2024年大統領選では、トランプが13%差でアイオワ州を制した。2020年と2016年もトランプが一桁台の差で勝利しているが、オハイオ州と同様に、従来は民主党と共和党が拮抗していたため、トランプ台頭によって共和党が強くなった州である。

2022年の連邦上院選では共和党の現職が民主党の候補者を13%の差で破っており、2020年には共和党の現職が民主党の候補者を7%の差で破っている。

今回の選挙は接戦である。リアルクリアポーリングの9月22日時点の平均は、トゥレック44.7%、ヒンソン44.3%で、トゥレックが0.4%上回っている。また、選挙分析機関の評価は分かれ、クック・ポリティカル・リポートはこの選挙を接戦、インサイド・エレクションズは共和党寄り、サバトズ・クリスタル・ボールは共和党やや優勢(Leans Republican)としている。

アイオワ州の連邦上院選が接戦になる背景には、州固有の事情とトランプ大統領の不人気がある。同州では農業が重要な産業であり、燃料価格や肥料など農業コストの上昇が共和党への逆風を強めている。関税政策についても、農業では輸出品への報復関税を受けるリスクがあるため関税政策に対する警戒が従来から強く、実際、トランプ関税は評価されていない。これらがトランプ不人気につながっており、最近の世論調査によると、同州におけるトランプ大統領の不支持率は52%(支持率44%)である

この政治環境の中、民主党は競争力を持つ候補者を立てている。民主党予備選では、より中道的なトゥレックが6割以上の票を獲得して左派の州上院議員ザック・ウォルズ(Zach Wahls)を圧倒した。トゥレックが選出されている州下院選挙区は共和党寄りで、2024年の大統領選ではトランプが約8%差でハリスを上回る中、自身は5%差で再選された。

共和党のヒンソンも弱い候補ではない。地元テレビ局の記者・ニュースキャスターを経て州下院議員となり、2020年に連邦下院議員に初当選した後、2022年、2024年に再選されている。共和党が強い現在のアイオワ州で、選挙経験と知名度を持つ候補である。

アイオワ州の連邦上院選が接戦になっていることは想定外であり、共和党が全国的に直面している厳しい状況を象徴している。トゥレックが勝利するには、同州におけるトランプへの支持低下をどこまで自らへの票につなげられるかが鍵となる。

民主党にとってのこの3州の重要性とは

民主党にとっては、第1回で見たミシガン州(Michigan)ニューハンプシャー州(New Hampshire)ジョージア州(Georgia)の現有議席を守ったうえで、第2回で見たテキサス州(Texas)メイン州(Maine)ノースカロライナ州(North Carolina)のすべてで共和党から議席を奪っても、さらに今回見ていったアラスカ州、オハイオ州、アイオワ州で少なくとももう1議席奪わなければ、多数派を奪還できない。

アラスカ州、オハイオ州、アイオワ州に共通するのは、2024年大統領選でトランプが二桁差で勝ち、共和党側にも十分な実績を持つ候補がいることである。一方で、民主党側でもアラスカ州とオハイオ州で最有力候補者が出馬したことで、勝利できる条件が揃った。トゥレックの知名度がペルトラやブラウンほど高くないアイオワ州まで民主党が制するような政治環境であれば、アラスカ州やオハイオ州でも民主党が勝利している可能性が高い。

現有議席を失う可能性に備えるうえでも、また、民主党議員の多数と異なる投票行動を取ることがあるペンシルベニア州のジョン・フェッターマン(John Fetterman)の存在を考えても、民主党にとって51議席を超えて議席を積み増す意味は大きい。

次の第4回では、2026年の連邦上院選の戦場がカンザス州(Kansas)やネブラスカ州(Nebraska)といった共和党の牙城にまで広がっていることを見ていく。

0
0

コメントを残す