2026年4月20日(現地時間)、連邦労働長官ロリ・チャベス=デレマー(United States Secretary of Labor Lori Chavez-DeRemer)が、ドナルド・トランプ大統領によって事実上更迭された。ここでは、その背景とトランプ政権が中間選挙を見据えた「内閣改造」のフェーズに入ったことの意味を解説する。
簡潔にまとめると、何が起こったのか
ホワイトハウスのコミュニケーション・ディレクターであるスティーブン・チャン(Steven Cheung)は4月20日、チャベス=デレマーが連邦労働長官の職を辞任したと自身のSNSで発表した。後任として、キース・ソンダーリング副長官(Deputy Secretary Keith Sonderling)が連邦労働長官代行に任命されている。
チャベス=デレマーの辞任は、クリスティ・ノーム連邦国土安全保障長官(United States Secretary of Homeland Security Kristi Noem)とパム・ボンディ連邦司法長官(United States Attorney General Pam Bondi)に続く、第2期トランプ政権における3人目の閣僚更迭である。チャベス=デレマーをめぐっては多数の不祥事が報道されており、更迭の観測が広がっていた。
チャベス=デレマーの更迭についてトランプ大統領が自ら発信しなかったことは、低迷していたチャベス=デレマーのトランプ政権内での地位の弱さを示している。
チャベス=デレマーはどのような人物なのか
チャベス=デレマーは元連邦下院議員。2022年に民主党の牙城であるオレゴン州における比較的中道的な選挙区で、接戦を制して初当選したことで注目された。2024年に再選できなかったため、任期は1期にとどまった。
チャベス=デレマーの任命の背景には、トランプ大統領との個人的関係よりも、アメリカの有力な産業別労働組合であるチームスターズ(International Brotherhood of Teamsters)の会長の影響が大きかったと考えられている。トランプは共和党所属でありながら労働者向けの政策を打ち出しているため、チームスターズから一定の評価を受けていた。同組合の会長は、チャベス=デレマーを労働組合に配慮してきた数少ない共和党議員と位置づけ、労働長官としてトランプに推したとみられている。
このような理由から、チャベス=デレマーの政策姿勢は共和党内で比較的穏健であり、トランプ政権内での基盤は決して強いものではなかった。
チャベス=デレマーをめぐって、どのような不祥事が報道されていたのか
チャベス=デレマーをめぐっては、複数の不祥事が挙げられていた。
最も重大なのは、出張の捏造疑惑である。具体的には、公式日程として申請された出張の実態が、家族や友人と過ごす私的旅行であったとされており、この点について監察総監(Inspector General)が調査を行っていた。加えて、勤務中の飲酒や警護担当職員との不倫関係も問題視されていた。
不祥事は本人にとどまらず、夫は複数の労働省職員に対する性的暴行の疑惑が提起され、労働省施設への立ち入りを禁止されていた。父親についても、若い女性職員に対して不適切なメッセージを送っていたと報道されていた。
今後更迭される可能性がある閣僚は誰なのか
第2期トランプ政権は、発足初期には第1期政権と比較して閣僚人事の安定性が高いと評価されていたが、ここ2か月間でノーム、ボンディ、チャベス=デレマーの3人が更迭されたことにより、状況は明確に変化している。
まず、ハワード・ラトニック商務長官(Commerce Secretary Howard Lutnick)は、エプスタインの私有島を訪問した事実と以前の発言が矛盾している点が問題視されており、最も更迭の可能性が高いとみられている。
また、トゥルシー・ギャバード国家情報長官(Director of National Intelligence Tulsi Gabbard)は国家情報長官としての能力評価に加え、イラン戦争をめぐる政権方針との距離が指摘されており、「路線不一致」による交代の可能性がある。
さらに、アメリカ連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation、FBI)の長官カシュ・パテル(Kash Patel)は過度の飲酒や不在が報道されており、職務遂行能力を理由に交代させられる可能性が高まっている。
一方、ピート・ヘグセス国防長官(Secretary of Defense Pete Hegseth)はイラン戦争をめぐって結果責任と職務遂行能力が問われているが、イランとの軍事衝突が続いている局面では、短期的に更迭されにくいと考えられる。
日本や日本企業への影響はどのようなものなのか
日本企業としては、今回の更迭をもって第2期トランプ政権が発足から約1年を経て「事実上の内閣改造」局面に入ったと受け止めるべきである。今後、共和党が苦戦すると見られている11月の中間選挙を見据え、支持率のテコ入れや政権の印象刷新を目的とした人事が連鎖的に行われる可能性が高い。
このような人事の不安定化は、政策決定の短期化を招く。結果として、日本にとっての対米交渉や在米日系企業の事業環境は、従来以上に見通しが立ちにくくなると考えられる。