2026年に入ってから行われた連邦下院補選、州最高裁裁判官選挙、州議会補選では、共和党が大きく苦戦している。ここでは、それぞれの選挙結果を整理した上で、それが11月の中間選挙について何を示唆しているのかを解説する。具体的には、共和党は連邦下院で過半数を失う公算が大きく、連邦上院でも過半数を失う可能性が高まっている。
連邦下院補選はどのような結果だったのか
補選は投票率が低く、投票するのは各党の熱心な支持者に偏りがちであるため、補選の結果は必ずしも「現在の世論の縮図」とは言い切れない。だが、現状を把握する際の参考にはなる。
2026年に入ってから、ジョージア州では、トランプに忠実だったものの反トランプに転じて辞任した共和党のマージョリー・テイラー・グリーン(Marjorie Taylor Greene)の後任を選ぶ補選が、ニュージャージー州では、知事選で勝利したミキー・シェリル(Mikie Sherrill)の後任を選ぶ補選が実施された。
以下の表の通り、いずれの選挙区でも、2024年の下院選や大統領選と比べて民主党に有利な方向への振れが見られた。共和党寄りの選挙区では共和党の勝利の差が大きく縮まり、民主党寄りの選挙区では民主党の勝利の差が広がっている。
| 補選日 (現地時間) | 選挙区 | 2026年の下院補選の結果 | 2024年の下院選の結果 | 同選挙区での2024年の大統領選の結果 |
| 4月7日 | ジョージア州第14区 | 共和党+12% | 共和党+29% | 共和党+37% |
| 4月16日 | ニュージャージー州第11区 | 民主党+20% | 民主党+15% | 民主党+9% |
特にジョージア州第14区は共和党の牙城であり、民主党が20%差まで縮められれば健闘と見られていたが、実際には共和党の勝利差が12%まで縮小したことが注目された。
ウィスコンシン州の州最高裁裁判官選挙はどのような結果だったのか
アメリカでは、連邦裁判所と州裁判所が併存しており、多くの州では州裁判官を公選によって選ぶ。州裁判所は選挙区割りや妊娠中絶をめぐって重要な判断を下すので、州の裁判官選挙は議員選挙と同じく重視される。
4月7日(現地時間)に実施されたウィスコンシン州の州最高裁裁判官の選挙は、同州がトランプ台頭以降共和党と民主党が拮抗する州になったことから、全国的に注目された。
結果はあっけないほどの民主党の大勝だった。前回2025年の選挙では、イーロン・マスク(Elon Musk)が共和党候補者を当選させるため300万ドル(約5億円)も投入したものの、民主党候補者が10%もの差をつけて勝利した。今回の選挙では、民主党候補者の勝利幅がさらに広がり、前回の2倍となった。
2026年と2025年の最高裁選挙および2024年の大統領選での共和党と民主党の得票率の差は以下の通りである。
| 選挙 | 結果 |
| 2026年州最高裁選挙 | 民主党(リベラル系)* +20% |
| 2025年州最高裁選挙 | 民主党(リベラル系)* +10% |
| 2024年大統領選 | 共和党+1% |
* ウィスコンシン州最高裁裁判官選は形式上は無所属候補同士の選挙であるが、実質的には、共和党が支援する保守系候補と、民主党が支援するリベラル系候補の対決である
選挙の結果、ウィスコンシン州最高裁の構成はリベラル系5人、保守系2人となった。裁判官の任期は10年なので、リベラル系候補者が2年連続勝利した影響は大きい。
州議会補選の傾向はどうなっているのか
州議会の補選は、連邦下院補選よりさらに投票率が低いため、結果を読み解くにあたって注意が必要だ。それでも、2026年に入ってから実施された補選のうち、民主党が共和党から議席を奪った3つの補選が注目された。
以下の表の通り、いずれの選挙でも、2024年の下院選・大統領選と比べて、民主党に有利な方向への振れが10%以上見られた。
| 補選日 (現地時間) | 選挙区 | 2026年の補選の結果 | 2024年の選挙の結果 | 同選挙区での2024年の大統領選の結果 |
| 3月3日 | アーカンソー州下院第70区 | 民主党+15% | 共和党+2% | 民主党+2% |
| 3月10日 | ニューハンプシャー州下院第7区 | 民主党+12% | 共和党+14% | 共和党+9% |
| 3月24日 | フロリダ州下院第87区 | 民主党+2% | 共和党+19% | 共和党+10% |
特にフロリダ州下院第87区の補選については、選挙区内にトランプの居住地(マー・ア・ラゴ)があるため、共和党が議席を失ったことが全国的に大きく報道された。
なぜ共和党は2026年に実施された選挙で苦戦していると考えられるのか
背景には、ドナルド・トランプ大統領の支持率の低迷がある。
世論調査の平均の推移を追っているリアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics)によると、4月20日時点で、トランプ大統領の支持率は41.1%、不支持率は56.6%だった。特にインフレ対策への評価が厳しく、不支持率が支持率を35%も上回っており、12月から10%悪化している。
2026年の選挙の結果は、11月の中間選挙で下院選がどのような結果になることを示唆しているのか
共和党は、現在、僅差で維持している過半数を11月の選挙で失うことがほぼ確実な情勢となっている。
そもそも、中間選挙はしばしば現職大統領への信任投票として機能する。そのため、大統領の所属政党にとっては逆風となる傾向が強く、連邦下院では議席を減らしやすい。
そのような中、2026年に入ってからの一連の選挙結果は、11月の連邦下院選で共和党が単に敗北するだけでなく、議席を大幅に減らすことを示唆している。これは2025年の連邦下院補選が示していた傾向をさらに強めるものである。
11月の中間選挙における上院選の見通しはどのようなものなのか
2年ごとに1/3しか改選を迎えない連邦上院では、連邦下院ほど民意の変化が反映されにくい。2026年に改選される連邦上院議員は共和党が強い州から選出されているため、いくら善戦しても、民主党が過半数を獲得するのは困難であると考えられていた。
ところが最近になって、その見解が変わりつつある。賭博が盛んであるアメリカでは上院選の行方に関して賭けることが可能であり、民主党が過半数を獲得する確率が1月2日時点の33%から52%まで急上昇している。
民主党は、既に優勢であると考えられている州で共和党から議席を奪っても、過半数に2議席足らない計算であった。だが、共和党の牙城であるテキサス州では、民主党が有力な候補を選んだのに対し、共和党は分裂状態に陥っている。さらに、共和党が強いオハイオ州でも、民主党の前職が共和党の現職を追い上げている。
2026年の選挙結果は日本企業にどのような影響を与えるのか
昨年11月の大統領選以降、日本企業の多くはトランプ政権を刺激しないよう、トランプ政権と共和党を優先したアメリカ対応をとってきた。だが、11月の中間選挙で共和党が連邦下院で過半数を失うことは確実で、連邦上院でも過半数を失う可能性が高まっている。そうなれば、ドナルド・トランプ大統領は2期目の折り返し以降、レームダック化が進み、政権運営は行き詰まりやすくなるとみられる。
中間選挙後にはアメリカの政策の方向性が変わる可能性があるため、日本企業は今からポスト・トランプの政策環境を視野に入れて準備を進める必要がある。対米戦略も、共和党政権への対応だけでなく、民主党が再び主導権を握る局面を見据えたものにしておくのが望ましい。